森 その4 あなたが犯人ねっ!

 萌美ちゃんの案内で、美雪たちは親玉の小屋にたどりついた。


ベルシュタイン「あそこにサルの王様がいるのね?」


萌美「うん!」


美雪「ちょちょっと、合体してたらどうするの?」


ベルシュタイン「知りませんわ! 巨大化(?)でもなんでもしてればいいでしょ! おらっ!!」(小屋のドアを蹴り破る)


門平「うわっ!? なんだよっ!?」(ベッドの中にいて毛布で裸を隠す)


ベルシュタイン「えっ? きゃっ! ごっごめんなさい!」(ほほを赤く染めて目をそらす)


美雪「おいおい。さっきのいきおいはどーした? なんで急に乙女になった?」


 恥ずかしがるベルシュタインを通りすぎて、中に入る美雪。


美雪「助けにきてやったぞ。親玉はどこよ?」


門平「あっああ、敵がきたからって……お前らのことか?」


美雪「何素直にベッドで待ってんのよ? 逃げるわよ」


萌美「ねー、何この布?」


美雪「うわっ!? 何これ!? 下着? 真ん中に穴があいてるじゃん! えっろ!」


門平「やだー、見ないで!」(両手で顔を隠す)


ベルシュタイン「まっまあ、親玉がいないのなら、別にいいですわ。早く服に着替えて!」


 恥ずかしがるベルシュタインが家の外で言う。


 なんのためにドア蹴り破ったんだか。


 美雪は後頭部がかゆいからかく。



 服に着替えた門平の案内で、美雪たちは村の洞窟にたどりついた。


 サルたちはいない。


 門平は暗い穴を指さし、


門平「この洞窟を通って外に出るんだ」


 門平が美雪たちを案内する。


美雪「くわしいのね」


門平「王……というか、あいつが教えてくれたんだよ」


美雪「へー」


ベルシュタイン「萌美ちゃん! 明かりを!」


萌美「ラジャー」


 萌美が洞窟内を明かりの魔法で照らす。


 手に持ってる紫のステッキがまぶしい。


 あれで何人をあやめてきたのか。



美雪「えっ? 何これ?」



 洞窟内は頭のつぶれた死体だらけだった。


 サルの王によって目を潰された罪人たちだ。


 一歩間違えば、美雪たちもこうなっていた。


ベルシュタイン「何か重いもので潰されたような跡……どういうことですの?」


 手に武器を持ってかまえていたベルシュタインが首をかしげる。



 洞窟の外に出る。


 敵のサルたちも頭をつぶされていた。


 死体が村中に転がっている。


美雪「あっ、あいつがいたわ!」


 美雪が指さす方向に、2人の人物が見える。


サルの王「ままままってくれ! とにかく弁護士を通して話、ぶっ!?」


 地面に倒れていた王の頭が、岩みたいなもので潰された。


 立っていたのは女性。


 うつろな目でこちらに振り向く。


ベルシュタイン「あなたは……」


女「この人の妻です」


ベルシュタイン「奥さんいたの!?」


女「いつからかこの人、かわいい男の子ばかり連れ込んで、私から離れていったので……女王の座を与えられても、私、我慢できなくて」


 死んだ王を見下ろす女。


 鼻を、かんでいる。


 花粉症なのか。


美雪「どろっどろだな、おいっ!」


門平「というか、この人がすべてのサルを殺したのか!?」


女「岩があればなんとかなるので」(別名『岩使い』)


ベルシュタイン「岩でなんとかなるもんなの!?」


 女は両腕を差し出し、


女「私が犯人です。警察に連れて行ってください。もう疲れました。人生に」(最後の岩を王の股間に落とす)


サルの王「アウチッ!!」(死す)


ベルシュタイン「……あっ、よくぞ白状してくれましたわっ!」(何かを思いつく)


 ベルシュタインはさっと、ナイフを後ろに隠し、


ベルシュタイン「この人がすべての犯行を重ねた犯人だなんてっ! なんという悲劇でしょう! でもよく白状してくれましたわ! この山の殺人がすべて『あなた』だってね!」


美雪「あっ、萌美ちゃんが破壊した人も、この人のせいにするつもりだぁ、へぶっ!?」(ベルシュタインから喉に手刀をくらう)


ベルシュタイン「言い訳はやめて! もう聞きたくないわ! さっそく警察に電話して、ヘリで迎えにきてもらいましょう!」


 警察に電話するベルシュタイン。


美雪「けほっ、けほっ、ちっきしょー。いつかやって……ん?」


門平「……王」(死んだ王の手を持って涙)


美雪「あっ! さてはオメー、もう王にやられちまったんだな!?」


萌美「にゃー!!」(猫のマネ)


門平「しくしく」(号泣)


女「…………」(元嫁、門平を冷たい目で見下ろしている)


美雪「おい! 言えよ! ケツの穴を広げられた感触をよ! どうだったんだよ!」(門平の両肩をゆさぶる)


萌美「みゃー!!」(猫のマネ)


ベルシュタイン「うるっさい! 警察がきたから、家に帰って、ピザ食べるわよ!」(おなかが鳴る)


美雪「やったー!」


萌美「わーい!」


 泣いている門平を尻目に、美雪と萌美は飛び上がって喜んでいた。


 門平は今日、また一歩、大人になった。



 その後、サルの王の妻は裁判にかけられ、死体の数を上げられたが、人数が合わなかったようだ。


 なんと自分が殺した数を、『王とのラブラブ日記』に書いていたのだ。



 謎の死体は誰が殺したのかわからず――クライモリの中に埋められていた。



(完)

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だらだらとした奇妙なチャットノベル 因幡雄介 @inode

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