海 その1 怪物が支配する世界で

 真田は口を押さえて、学校の教室の机の影に隠れていた。


真田(何もしゃべらなきゃ、あいつはこない!)


 教室の窓が割られる。


真田「きゃあっ!」


美雪「真田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! 私の小袋醤油取ったでしょうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」


真田「はっ!」(目が覚める)


リアナ「しー」


 真田の口に、リアナの手がおかれる。



――――



 聴覚の鋭い怪物が世界中を跋扈していて、人類は絶滅の危機に瀕していた。

 奴らに見つからないようにするには、音を立てないこと。

 何もない線路を、リアナと真田、猫美が歩いていた。



真田(――煙?)



 看板がある



『立ち入り禁止。ここはワシの家じゃ!』



 前にあるのは廃工場。


真田「えっ? ぎゃっ!」(柔らかいものを踏む)


真田「いやあああああああああああああっ! きゃたなああああああああああいっ! ふぐうっ?」


リアナ「しー!」(怪物がこないように、真田の口をふさぐ)


リアナ「怪物がきちゃう。黙って!」(それでも真田が叫んでいる)


真田「そんなもんよりも水っ! 水持ってきてよっ!」


リアナ「いけないわっ!」(真田の首を羽交い締め)


真田「おぐうっ?」


真田「ひっ、ひんじゃう……だまりゅから……」(天国のおばあちゃんが見えてる)


リアナ「静かに! 何もしゃべらないでっ! みんな死んじゃうでしょ!」(ちょっと笑い)


真田「あんたが……うるさい……」


女神「こらぁ! 何しとんじゃい!」(リアナ驚いて、真田の首を折る)


女神「ああっ! わしのゼリーがあああああっ!」



 廃工場内。



女神「水も食料もここにはないぞいっ! けぇれ! けぇれ!」


リアナ「しばらくここにいさせて。子供がいるのよ」(猫美を指さす)


女神「お前の子か?」


リアナ「ううん。道で拾ったの」


女神「その赤髪の子は」(真田、復活)


リアナ「途中で猫美ちゃんの食料にしようと思って、連れてきたの。私たちには何もないの。せめて怪物がここからいなくなるまでいさせて!」


女神「全員赤の他人やないかーい! ぜってーやじゃ! 出てけっ!」


リアナ「……なら、暴力で訴えるしか」(10kgはあるであろう鉄パイプをすっと持ち上げる)


女神「……わかった。しばらくの間だけじゃぞ」(おびえ)



 朝、真田は廃工場から出る。



真田「まさか、私を食料にしようとしていたなんてね……」(逃亡を決定)


猫美「にゃ」(四つん這いになって座っている)


真田「何よ? ……あんたもくる?」


猫美「にゃ」(すくっと、二本足で立つ)


猫美「にゃ、にゃ、にゃ、にゃ」(廃工場の窓を開けると、中に侵入する)



真田「ふん。しょせん猫ね」


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