第12話 班に新らしいメンバーが加入した
班から外れている人達数人と話をして、戦闘ポジションや魔力属性などを確かめながらスカウト活動に赴いた結果、私は無事に二人の人材を、新メンバーとして班に迎え入れる事に成功した。
一人はなんと、ミルカが女性だけの班を作った際に、男だという理由だけで、元の班から弾かれたそうで、なんだかミルカの元班メンバーとして、微妙に申し訳なさと気の毒さを感じさせられた。
いや、ミルカはもううちの班のメンバーではなくなったのだし、私達とは無関係になったのだけど。
……それにしても、大盾持ちの上に水属性使いで回復魔法も使えるという有能な存在を性別だけを理由に追い出すなんて、勿体ないなと思う。
そんな彼は、うちの班にとって必要な要素を二つも兼ね備えた存在だったので、是非ともうちに加入して欲しいとスカウトするに至った。
「エバンス・キャリングという。よろしく頼む」
そう挨拶した彼は、大柄な体型の人族で、身長は190センチくらいはありそうだ。そして全身が分厚い筋肉に覆われており、鉄壁と言いたくなるような姿で、まさしく壁役に相応しい見た目の持ち主だ。
顔が厳つい上に寡黙なので、初対面ではちょっとだけ怖そうな印象を受けたが、スカウトの際に話をしてみたら、寡黙なだけで性格は実直で朴訥なようだった。
年齢は18歳だという。私の一つ下だな。理想の泉の影響で、外見は15、6くらいに見えるけど。それはともかく、筋肉モリモリな体で大きな盾を構える姿は、とても頼りがいがありそうだ。タンクとして申し分ない。
そして、エバンスの他にももう一人、うちは新メンバーを迎えた。
「オラはポロム・マギスターっつーもんだ。歳は8歳だで。魔法はなんも使えないだども、気配を探るのは得意だでな。おみゃーら、よろしくたのむだ」
訛りのある口調でそう挨拶した彼は、猫の獣人族である。見た目は、茶色の毛並みの二足歩行の巨大な猫だ。……とは言っても、普通の猫は四つ足なので、こんな人間と同じような二足歩行ができる体型はしていないと思う。多分、四つ足の場合は人間とは骨格からして違うんじゃないかな。
この世界の獣人とは、獣の姿によく似た見た目で、耳やしっぽがついているだけでなく、体毛も肉球やらもそのまま獣のまま、二足歩行の体型部分と言葉を喋るところが人に寄せた形で進化しているらしい。
そして猫だけだなく、色んな種類の獣人族がいる。犬とか狼とかライオンとか、その種類は多岐に渡る。
また、この世界には獣人族の他にも、鳥人族とか魚人族とかも存在しているそうだ。
実はこの学校にも、鳥の頭に人間体型の鳥人族は、何人か在籍している。
彼らは脚が鉤爪で腕部分が翼になっているのに、身体の構造が人間体型寄りなのだ。そして彼らも獣人族と同じく、カラスとか鳩とか鷲とか、様々な種類に別れている。
ちなみに魚人族の方も、魚の頭に人の体型の、様々な魚の種類に別れた多彩な種族らしいのだか、こちらは陸地のこの学校には一人も在籍していない。海辺の地域でなら、それなりに姿を見られるらしい。
……まあ、鳥人族や魚人族はともかくとして、今は猫の獣人族である、ポロムの話に戻ろう。
彼は身長が140センチくらいで、先程も紹介したように、茶色の毛並みの二足歩行の猫の姿をしている。「長靴をはいた猫」で有名なケット・シー的な見た目だ。だが別に、獣人族は妖精ではないらしい。
ポロムは自身の職能で斥候を希望しているというので、うちの班に来てもらった。彼とエバンスの加入のおかげで、うちの班に欲しかった職能持ちが埋まった。有難い。
更に聞けば、獣人族というのは、生まれながらに「気配察知」と「身体強化」の二つの「種族特性」と呼ばれる特殊スキルを持っているそうだ。その特性によって、索敵を得意とするという。まさに斥候に打ってつけの種族なのだそうだ。
その「種族特性」というのは種族によって違うそうで、例えばエルフは魔法が得意で魔力保有量が多いとか、巨人族は「頑強」と「自己回復」の種族特性スキルを持つとか、色々らしい。要するに種族そのものの特性・特徴を、あえてスキルとして言い表したようなものだそうだ。
ちなみに人族には、特に種族特性スキルはないらしい。残念だ。
とは言っても、私は種族別に言えば、正確には「異世界人」になるので、もしもこの世界の人族に種族特性があったとしても、私はそれを取得できないのだから、初めから私にとって関係ない物なのかも。
……ああ。そういえば私は、学校の図書館で冒険者について勉強を始める前は、斥候とは地球のゲームによく出てくる「シーフ」みたいなものの事を言うのかと思っていた。
宝箱の鍵開けとか、罠の解除をする人の事なのかとな。
だけど実は、こちらの世界で言う斥候とは、索敵とかをして、敵を釣ってきたりする役割の人の事を言うらしい。
と言うのも、この世界には野生のモンスターはあちこちにいるものの、宝箱とか罠を仕掛けるような奇特な者はほぼほぼ存在しないので、そういう特殊な役割は、特に必要とされないらしく。
そんな特殊な役割よりは、敵を発見したり敵をおびき寄せたりする役割の方を重視しているようなのだ。
なのでポロムも、手が猫の手の肉球で、器用に鍵開けとか罠解除とかが出来なくても、斥候職としては、なんら問題がないのだ。
まあそんな訳で、うちの班に新たなメンバーが加入した。
彼らが無事にうちの班に馴染んで、仲間としてやっていけるかはまだわからないが、私も班長として、彼らが班に馴染んでいけるようにフォローを頑張ろうと思う。
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