第31話 『がんばれ!⑥』

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★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


これまで鉄工所がお世話になっていた税理士さんに弁護士さんを紹介してもらって、

鉄工所を清算することにした。


怖いオジサン、オニイサンにも弁護士さんがちゃんと対応してくれた。

そして、今日は葵ちゃんとすべての結果報告を聞きにいった。

すべての借金を清算して、従業員のおじいちゃん2人の退職金も含めて

1億5千万円かかったらしい。

二人と幸せになるんだったら安いもんだ。


感じのいい弁護士さんだったけれど、丁寧すぎて時間が遅くなってしまった。


駅からマンションへ黙ったまま歩いていると、葵ちゃんが手を繋いできた。

まあ、暗いしな。

葵ちゃんの手は少し小さくて、スベスベしていて温かかった。


恋人繋ぎになると胸が幸せで満たされてきた。


マンションの玄関の手前で、葵ちゃんが立ち止まって、

潤む瞳で俺を見つめていた。超ドキドキする~!

「ど、ど、ど、どうかした?」

「ホントにありがとね。大好きだよ。」


葵ちゃんに優しく抱きしめられてキスされた。初めてのキスだ!

「・・・どう、私のファーストキスは?」

「最高です。すごくフワフワする。」

葵ちゃんは初めての妖艶な笑顔を見せた。


甘い雰囲気に吸い寄せられ何度も何度もキスしてしまった。

最後にはメチャクチャディープなやつを。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ただいま。」

「お帰り、遅かったね。」

出迎えてくれた妃鞠の目を見ることができない。

鼻をみることにしよう。最高にいい形だね。


「幸介、唇が赤いよ?」

「嘘だ!鏡でちゃ・・・」

「ふ~ん、鏡でちゃんと確認したのね!」

「ゴメンなさい!」


妃鞠!

なんて恐ろしい子!


泣きそうになった妃鞠は自分の部屋に閉じこもってしまった!


ノックしても応えはなかったけど、神妙に部屋に入ってみたら、

妃鞠は涙をこぼしていた。


「お姉ちゃんを選んだの?ずっと前からなの?私のことどう思っているの?」

「妃鞠のことがずっと好きだ。これからも大好きだ。

だけど、葵ちゃんのことも大好きで、今日、初めてキスしちゃったんだ。ごめん。」

「バカ!」

妃鞠が抱きついてきた!

そして、俺の胸をポカポカ殴ってきた。

痛くないのに、めちゃくちゃ痛い!


「大好きだ。優しくて、楽しくて、キレイで可愛い妃鞠が大好きだ。」

精いっぱい告白すると、妃鞠が瞳をウルウルさせながら、俺と視線を合わせた。


吸い寄せられるようにキスしてしまった!

何度も何度もキスしてしまった!

やっぱり最後にはメチャクチャディープなやつを。


妃鞠も妖艶な笑顔を見せてくれた。

「もっとしちゃう?ゴム使っちゃう?」

「・・・したい。したい。したいけど。」

「うんうん、それはまたね。」


もう一度キスして部屋を出て行った。


俺の自制心、すげえ!


でも、二人ともキスしてしまった!

これからどうなるんだ?


★★★★★★★★★★★


これで10日以上連続して、「がんばれ!」ってお告げが出ている。

毎朝、こっそりお稲荷さまにお参りに出かけるのだが、

葵ちゃんと妃鞠に、私も連れていってとねだられ、断ることが難しくなってきた。

どうしよう。


それにしても、2ヶ月ほどあった波瀾万丈な生活はもう卒業っていうことだろうか?


葵ちゃんと妃鞠、どちらにも私を選んでって言われて、

どちらとも放そうとしない最低な俺。


だけど、それを解っているのに、三人仲良く生活している。

まだ、俺の奪い合いは続いているけど、

葵ちゃんと妃鞠は喧嘩なんてせず、仲良しのままだった。


土曜日、初めての正真正銘のデートをすることになって、

くじ引きの結果、相手は葵ちゃんとなった。

映画を見に行くことになって、葵ちゃんは「恋愛映画」が大好物なのだが、

好みの恋愛映画が無くて、結局「家族愛」の映画を見た。


俺が涙をボロボロこぼしているのを見て、胸がキュンキュンしたそうだ。

恥ずかしい・・・


「こうくん、服がクリスマスと一緒の組み合わせだよね?

上から下まで、色々と買っちゃおうよ。」


「まさか、葵ちゃんとデートするとは思ってなかったからな~。

俺ってセンスないみたいだから、選んでくれる?」

「最高にカッコいい男の子に仕上げてあげるよ!」

葵ちゃんが悩みに悩んで選んでもらった上下一式を持って、

狭い試着室に入った。


葵ちゃんがスルリと入ってきた!なんで?


そして、抱きついてキスしてきた!

「ドキドキするね・・・」

にんまり笑うとキスの雨を降らせてきた!


「もう駄目よ。」

俺の方が夢中になって、ちゅっちゅしていると、優しくたしなめられた。

試着室を出たら、なんとなく店員さんの視線が痛かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


日曜日は妃鞠とデートだ。

「幸介、市営プールに行きたいの!」


「えっと、スライダーとかあったっけ?」

「うんうん、子ども用滑り台があるわね。可愛い象さんの滑り台よ。」

「流れるプールは・・・」

「うんうん、代わりにジャグジーがあるよ!」

「・・・」


妃鞠は水泳部で、夏場以外はいつも泳ぎ足りないらしい。

だけど、市営プールに女の子だけで一度行ったら、ナンパされるわ、

オジサンたちの視線が痛いわでもう二度と行くもんかってなったそうだ。


更衣室から恥ずかしそうに妃鞠が出てきた!

競泳用水着を着たマーメイドゥゥゥゥ~!うお~!


テンションが爆上がりして、近寄って、まくし立ててしまった!

「・・・キレイだ、キレイすぎる!ヤバい、ヤバすぎる!

これ、ヘンな虫がよってくるぞ、なんか甘い匂いがするし!」

バチン!

「痛い!」

思いっきり、胸を手で叩かれてしまった!


「匂いはないよ!」

本気で怒られてしまった!ゴメン。


市営プールは、25mが8コースの普通の温水プールだった。


妃鞠は自由形の選手で、一見、スクロールは早くなく、力強さもなさそうなのだが、

俺より圧倒的に早かった。当たり前か!


50m泳いだだけでへばってしまった俺は、

休憩がてら妃鞠の腕の使い方なんかを観察してから

妃鞠に泳法を教えてもらった。


だけど、ついイチャイチャしてしまうぅ~!どうだ!

やっぱり、周りの視線が痛かった。


教えてもらったら、かなり改善され、100m泳げるようになったよ!


1時間近く泳いで、疲れ切ってジャグジーで並んで休憩していると、

妃鞠はニッコリと笑った。

「うんうん、だいぶ泳げるようになったね。

昼ご飯食べてから、もう少しガンバろうね!」

怖いことを言われた!


「えっと、1時間だけじゃないの?」

もう疲れ切っているんだよ、俺!


「時間制限ないんだから、午前1時間、午後1時間泳ごうよ。

試合は予選、準決勝、決勝とあるんだよ。

・・・ご褒美あげるから、ね?」

ご褒美!

最後の言葉は耳元で囁かれた。妃鞠がニンマリと笑っている!


昼からも必死で泳いだ。

心の中で「ご褒美!ご褒美!」と呟きながら・・・


1時間近く経って、キタコレ!アイコンタクトだ!

妃鞠の最高にキレイな後ろ姿を見ながら少し遅れて、

超ドキドキしながら二人して障害者用トイレに入った。


頬を染めた妃鞠が近寄ってきて、俺の肩や、胸を優しく撫でまわした。

「うんうん、堅いね。ちゃんと鍛えているもんね。・・・カッコいいよ。」

なんか、妃鞠の息が熱くて、甘いよ!


我慢できず、がばっと抱きしめてキスした。

抱きしめると競泳水着のさらさらとその下の柔らかい体がダイレクトに感じられ、

メチャクチャ興奮して、妃鞠の体中、なで回してしまった!


「きゃ!」

突然、妃鞠に逃げられてしまった!

「えっ、ゴメン、やり過ぎた?」


妃鞠は俺の下半身を凝視したあと、アワアワしてトイレから逃げ出した!

体の一部が呪われている!オーマイガー!


・・・呪いが解けてから、更衣室へ向かった。


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