第27話 『大事なものを守れ!②』
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ここは現代日本とよく似た、幸介くんにとって、お気楽、ご都合主義の世界です。
それでは、よろしくお願いします。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
東雲家の玄関のガラス戸が割れていた!
「葵ちゃん、動画撮って!」
玄関を開け、リビングへ飛び込んだ。
倒れている妃鞠に黒い覆面をかぶったヤツがのしかかっていた!
「妃鞠から離れろ!」
怒りのあまり腹の底からの大きな声が勝手にでると
黒覆面はビクッとして、こっちを見た。
俺と葵ちゃんだけなのを見て、黒覆面はニヤリと笑うと、
置いてあった警棒を持つと俺に向かってきて、
「おらあ!」とわめき声をあげながら警棒を大きく振り上げた!
「シッ!」
渾身のローキックが黒覆面の左足に炸裂すると、
「ぎゃっ!」
黒覆面は警棒を堕として、左足を押さえて跪いた。
ノーガードの左のこめかみを思いっきり蹴ってやると、
黒覆面は吹っ飛んでぶっ倒れた。
「妃鞠!」
妃鞠の傍らに跪き、抱き起した。
妃鞠は涙をこぼしながらブルブル震えていて、
服は少し破かれて、その髪は乱れ、殴られたのか、口元から血が流れていた!
「殺してやる!」
「幸介!」
カッとなって立ち上がろうとした俺に、
妃鞠が抱きついてきて、大声で泣き出した。
「もう大丈夫だから。俺が妃鞠をずっと守るから・・・」
頭をなで続けると、妃鞠は泣きながら何度も頷いた・・・
「ごめん、ちょっと警察呼ぶから。妃鞠、ちょっと放してくれるかな?」
断腸の思いで妃鞠を引き離した。
俺は立ち上がると、気を失ったままの黒覆面に近づいた。
「ああ、黒覆面を外すから、葵ちゃん、はっきりと写してね。」
そして、気絶したままの奴の頭から黒覆面を外した。
「対馬!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
110番から5分と経たないうちにパトカーが2台、警察官が4人やってきた。
ちょうど目が覚めた対馬は警察官を見ると俺を指差して叫んだ!
「コイツらだ!コイツらを捕まえろ!俺をハメたんだ!
俺はハメられたんだ!俺は悪くない!俺は悪くない!」
「これを見てください。」
葵ちゃんが警察官に動画を見せた。
妃鞠にのしかかっている黒覆面の姿がちゃんと映っていた。
「違う!俺は被害者だ!コイツに蹴られたんだ!」
「カッコ悪いぜ、対馬。」
「黙れ!この雑魚が!陰キャが!誰に向かって口利いてんだ!
俺を誰だと思っている!」
キタ~!カッコ悪いセリフ、トップ10のうちの2つ!
「誰に向かって口利いてんだ!」って、お前はただの高校生だろ?
「俺を誰だと思っている!」って、お前はただの犯罪者だろ?
「覆面かぶって女を襲った卑怯者。
こうくんに喧嘩で軽く負けた、だっさださな奴!」
あっ、心の中で面白がっていたら、葵ちゃんが怒りのセリフを叩きつけた~!
「うっ!」
予想外の所からの攻撃に大人しくなった対馬は、警察官に拘束された。
連れていかれようとする対馬と目があったので、ニヤニヤ笑いながら
「ざ~こ!ざ~こ!」
って口パクしてやった。
「てんめえ~!」
顔色が真っ赤にした対馬は再び暴れ始めたけど、
「はい、公務執行妨害追加~!」
警察官にあっという間に腕をねじり上げられ、悲鳴を上げていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・
俺たち3人も警察に連れて行かれ、妃鞠とも、葵ちゃんとも別々に事情聴取された。
俺の担当は40歳くらいの調子のいいオジサンだった。
まずは動画を一緒に見た。
「ううん、錦埜君、「妃鞠から離れろ!」ってカッコいいねえ!
「俺が妃鞠をずっと守るから!」くぅ~、俺もこんな可愛い子に言ってみたいよ!」
オジサンが机をバンバンと叩きいて、俺を羨ましがっていた。
ああ、言ってやったさ!言ってみたいけどなかなか言うチャンスがない、
憧れの10のセリフの1つだな!
動画を見ると超絶恥ずかしいけどな!なんか、痛い子がいるぅ~!
「で、この子、彼女なの?」
がびーん!
「い、いや、片思いしているだけです・・・」
俺の答えをオジサンがニヤニヤしているぅぅぅぅ~!
「片思いなの?いや、こんだけ強くて、カッコいいんだから、
すぐに告白しちゃいなよ!」
「大丈夫ですかね?」
「いや、知らんけど!」
くそっ、ニヤニヤするな!
俺は動画があったこともあり、事情聴取は妃鞠より先に終わった。
俺より先に終わっていた葵ちゃんの隣に座ると、
心細そうな葵ちゃんは手を繋いできた。
「幸介くん、妃鞠を助けてくれてありがとう・・・」
「うん、間に合って本当によかった・・・」
1時間ほどさらに待って、ようやく妃鞠の事情聴取が終わった。
妃鞠の髪は乱れ、ひどく弱々しく、疲れ切っていた。
こんな妃鞠、初めて見るよ。
「こうすけ、お姉ちゃん、ありがと・・・」
顔をゆがませた妃鞠は、葵ちゃんと俺に抱き着いてきた!
妃鞠をこんなにしやがって!
対馬に対する殺意がまた湧いてきた。
もう、なんにもしないけど。
「今日は、俺の家に泊まろうか。」
「「うん。ありがとう。」」
タクシーに警察まで来てもらって、その後部座席に3人で座った。
俺は真ん中だ。
駅に行ってと頼むと、葵ちゃんと妃鞠がハモった。
「「なんで駅前?」」
「うん、冬休みから一人暮らしを始めたんだ。詳しいことは家で、ね。」
「「一人暮らし!」」
葵ちゃんは窓の外を見ているが、また俺の手を握ってきた。
妃鞠も手を握ってきて、さらに俺の肩に顔をくっつけ、
その左手は俺の胸にそっと置かれた。
「・・・もうダメだと思ったよ。本当にありがとう。」
よかった・・・
俺は葵ちゃんも、妃鞠も、守りきったんだ!
ヤバかったけど!
でも、なんて幸せなんだ!
でも俺はこれから、どうすればいいんだ?
お稲荷さま、どうすればいいんですか?
この高嶺の花2輪を同時に愛でるなんて!
女の子と付き合ったことのない俺≪どうてい≫には無理です!
でも、明日の朝までお告げは頂けないんですね、ああ・・・
マンションの近くで降りて、コンビニで弁当、飲み物、スイーツ、
明日の朝食の材料を余分目に買った。
マンションに着くと、妃鞠たちが思ったより大きくて立派だったらしく、
2人とも呆然と上を見上げた。
エレベーターで3階まで上がって、我が家のドアを開けた。
テンションの上がった2人はさっそく家の中を隅々まで調べていた。
「スゴ!1人暮らしでこれって・・・」
「幸介、なんで・・・」
「ま、まずは弁当を食べよ。話はそれからで・・・」
座卓に弁当とレトルトのみそ汁、お茶を並べた。
突然、妃鞠が土下座した!
「幸介・・・くん。助けてくれてありがとう。もう、怖くて、
泣くしかできなくて・・・
本当にありがとう。」
「う、うん、あの、頭を上げて、ね。まずは食べよう。」
弁当もコンビニスイーツも食べ終わると葵ちゃんがすぐ話し出した。
「あの、借金を払ってくれるって言ってたけど、そんなのいいからね。」
「ごめんなさい!」
葵ちゃんの言葉が終わると、俺は大きな声とともに頭を下げた。
「なんで幸介くんが謝るの?」
「俺さ、宝くじが当たったんだ、3億。」
「「3億!!」」
「そう、家族に召し上げられたけど、残り2億あるから。」
「「2億!!」」
「うん、それを、どうやって使うか、ずっと考えていたんだ。
だけど、2人がそんなに困っているって知らなかって・・・
ちゃんと伝えていたら、葵ちゃんも、妃鞠も、こんな目に遭わなかったのに・・・
ホントにごめんなさい。」
「借金は幸介くんには関係ないよ。」
もう一度葵ちゃんがきっぱりと言うと、うんうんと妃鞠は頷いた。
「関係あるよ!2人が困っているじゃないか!
借金取りにつきまとわれているじゃないか!
おじさんだって、借金がなかったら倒れたりしなかったよ!
助けたいんだ!だから俺が借金を返す!絶対に!」
俺の断固とした決意に、葵ちゃんも妃鞠も半泣きになってしまった。
「な、なんでそこまで・・・」
「大切な人を守るためにはしょうがないだろ。」
「「た、大切な人・・・」」
2人がハモって、そわそわし始めた。
「大切な人ってどういう意味?」
葵ちゃんがにじり寄ってきて耳元で囁いた。
「・・・俺が妃鞠をずっと守るってどういう意味?」
妃鞠がにじり寄ってきて耳元で囁いた。
葵ちゃんと妃鞠の視線が交錯して火花が散っている!アチッ!
「「ねえ。」」
「ふ、2人とも超大切な人!」
「「むう!」」
2人とも頬を膨らませた。可愛いけど怖い!可愛い!
「今日は疲れたからもう寝ようよ?2人は別々の部屋でいいかな?」
「・・・2人で少し話したいから、今晩は一緒に寝る!」
葵ちゃんが真剣な表情で答えた。こ、怖い!
お稲荷さま、本当にありがとうございました。
大切な2人をなんとか守ることが出来ました。
すべて貴方のお陰です。
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