第24話 『君にぃ~幸あぁ~れィ~!』

☆、応援コメント、フォロー、ありがとうございます。

「注目の作品」の一番上に載ってた!嬉しい!


・・・クズを成敗するなら、牙突よりいいのがありましたね~


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


元旦の朝、母親のつくってくれた雑煮とおせちをたべて、

待ち合わせ時間まで駅伝をぼんやり見ていた。


時間が近づいて来たので、さりげなく立ち上がり、精一杯のおしゃれをして、

葵ちゃんのマフラーと妃鞠の手袋を装備してお出かけだ。


「こーすけ、おしゃれにキメてんじゃん!」

玄関で莉子が待ち構えていて、俺を見てニヤリと笑った。

ダッフルコートとミニのキュロットスカートを着ていて、悔しいことに可愛らしい。


「妃鞠ちゃんたちと初詣に行くんでしょ。」

「い、いやいやいやいや、男と初詣だよ。」

「そう!じゃあ、可愛い妹を連れて自慢しなよ。」

莉子のヤツ、何もかも分かっているんだぞっていう目で見ていやがる!


くそっ、迂回して遅れる訳にはいかない。観念して妃鞠の家に直行した。


近づくと鉄工所で鋼材を切る音が聞こえた。

マジか!元旦の朝だぞ!

覗いてみるとおじさんが一人で作業していた。


「明けましておめでとうございます!」

おじさんが声に気づいてこちらを向いた。

顔色が悪く、目の下のクマが凄い!大丈夫なのか?


「おおっ、幸介くん。明けましておめでとう。

二人と初詣かい?俺の分も併せて頼むよ。」

「分かりました!でも、元旦も仕事なんですか?」

「ああ、4日の朝に納品すればぼろ儲けなんだ。あと少しなんだよ。」

「無理しないでくださいね。」


「ああ、ありがとう。」

おじさんは俺の後ろに隠れていた莉子に目を向けた。

「おっ、もしかして莉子ちゃんかい?別嬪さんになったね~

俺のお嫁さんにならない?」


「どうぞ、どうぞ!」

すぐに答えた俺の尻に莉子の蹴りが炸裂した!

「痛い!」

キレイに足の伸びたいいキックだった。

おまえもキックボクシング習っているのか?


「このバカ!」

「相変わらず仲いいねえ~」

おじさんは疲れた顔をほころばせた。


「幸介、来たの?」

玄関の方から妃鞠の声が聞こえたので、そちらへ向かった。


オレンジ系の花柄の振袖を着た妃鞠がいた!

髪をアップにまとめて、小さな花がたくさんついた簪を刺していた。

「「「明けましておめでとうございます。」」」


「きゃー、妃鞠ちゃん!ステキ!可愛い!キレイ!帯は、帯も見せて!」

莉子がはしゃぎながら、妃鞠を前から、横から、後ろから見て、

さらに写真を撮りまくって喜んでいた。


「ど、どうかな?幸介・・・」

妃鞠は少し照れながら、振り袖を広げてゆっくりと、くるっと回ってくれた。


息も詰まるほど凝視してしまった。

「ああ、女神さまがいる!凄くキレイ・・・です。妃鞠・・・さん。

その美しい振袖が、ただでさえ美しい貴女をさらに美しく魅せて・・・います。

前からも、横からも、後ろからさえも・・・美しすぎます。」


幼なじみに使うには相応しくない言葉だが、魅せられてこんなのになってしまった!


「キモイんだよ!妃鞠ちゃんがドン引きしてるだろ!もっとちゃんと褒めろ!」

またも莉子の蹴りが俺の尻に炸裂していた。

「痛い!痛すぎる!手加減くらいしろ!」


俺の激賞に頬を染めて下を向いていた妃鞠がクスクス笑いだした。


「なに騒いでいるの?」

葵ちゃんが玄関から出てきた!

ピンク系の振袖をアピールしながら微笑んでいる!

「「「明けましておめでとうございます。」」」


「きゃー、葵ちゃん!ステキ!可愛い!キレイ!帯は、帯も見せて!」

「きゃー、葵ちゃん!ステキ!可愛い!キレイ!帯は、帯も見せて!」

先にはしゃいだ莉子を真似してみた。


「真似するんじゃねえ、キモいんだよ!」

またも莉子の蹴りが俺の尻に炸裂した。

「痛い!」


「さあ、行こ!」

莉子が、大笑いしている妃鞠と先に歩き出した。


葵ちゃんが俺の手を優しくつかんだ。

「あ、幸介くん、マフラーが裏返っているよ。」

葵ちゃんがマフラーをちょっと直してくれた。

は、恥ずかしい!けど、めちゃくちゃ嬉しい!


「あ、ありがと。

葵ちゃん、振袖が良く似合っていて、ホントに可愛いよ。

いつも可愛いけど、今日はやっぱり特別輝いているね。」

照れながら、最高に褒めてみた。


みるみる葵ちゃんが真っ赤になった。

「・・・ありがと。いつも褒めてくれないから、ビックリだよ。」

「い、いつも、か、可愛いって思ってる・・・と、時々褒めるようにするよ。」


「ううん、会うたびに褒めて・・・」

ズキューーーーーーーン!!

「う、うん、たくさん褒めるよ。じゃあ行こうか・・・」

うお~、葵ちゃん可愛すぎる!これってもう俺のこと好きってことだよね?


もっとよく葵ちゃんを見たいのに、葵ちゃんがこっちを見てくれない!


鳥居をくぐると屋台が並んでいた。


参道は神社へ向かう人、初詣が終わって屋台を冷やかす人でごった返していた。

「あ、カステラ買ってくる!」

莉子が一目散に走って行った。


ずっと莉子と話していた妃鞠が話しかけてきた。

「すっごく視線を感じるんだけど、おかしな恰好になっていない?」

「大丈夫だよ。妃鞠が美しすぎて、注目を浴びてるだけだ。」

「そんなことないよ!もう、いつも褒めたりしないくせに・・・」

「そんなことあるよ!だったら、今度からは会うたびに褒めることにするよ。」

「別にいいよ!」

とかいいながら、嬉しそうだ。妃鞠も会うたびに褒めるぞ!


鐘楼をくぐったが、拝殿まで人、人、人だった。


「ねえ幸介、その手袋、ちゃんと暖かい?ちょっと貸して。」

「すごく暖かいよ、はい。」

渡した手袋を妃鞠は一度はめて、すぐに外した。


「じゃあ、手は冷たくないのね?」

さりげなく俺の手袋をしていない指をつまんできた。し、幸せ~

こ、これは妃鞠も俺のこと好きなんじゃない?


「今年も二人と仲良くできますように!」

最低なことを神様に全力で祈った。


おみくじ結果

幸介:大吉 恋愛「叶う」

葵  :吉 恋愛「叶う」

妃鞠:吉 恋愛「叶う」

莉子:吉 学業「叶う」


おみくじどおりになるといいな! 


「ねえ、葵ちゃん、妃鞠ちゃん、お揃いのお守り、買おうよ!」

「莉子ちゃんは学業成就でしょう?妃鞠はいいけど私は・・・」

莉子の提案に葵ちゃんは苦笑いしながら、

三人であーでもない、こーでもないと言いながら可愛いお守りを探し始めた。


「ねえ!この水風船みたいなお守り、可愛いよ!

ねえねえ、葵ちゃん、妃鞠ちゃん、お揃いで買おうよ~!」

「うんうん。可愛いね~。」

「いいんじゃない!開運お守りだから、私も大丈夫。」

「やった!私、黄色がいい!」

「うんうん。私はピンクね。」

「じゃあ、私はオレンジね。残った水色は幸介くんね!」

「ありがとう、葵ちゃん。」

「え~、こーすけも一緒なの~?」

莉子!てめえ、勝手についてきたくせに!

「まあまあ、せっかく4種類あるんだから!」

「うんうん!たくさんあった方が仲良し!ってカンジがするよね!」


少し揉めたけど、結局、色違いで同じ水風船開運お守りを買って、

みんな、ご機嫌となった。


その後は、露店を冷かしながら、東雲家に戻り、

お昼ご飯に葵ちゃんと妃鞠が作ったお節料理を頂くことになった。


葵ちゃんが仕事を続けていたおじさんの手をぐいぐい引っ張ってきた。

おじさんは不満そうだったけど、

作戦どおり、莉子にお酌されるとご機嫌で飲んで、

暫くすると、横になって大きないびきをかいていた。

妃鞠はおじさんにそっと毛布をかけていた。


それから、隣の部屋に移って、

夕方まで、4人でトランプ大会して、ホントに楽しい1日だったよ。


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