第21話 『物凄いバック攻めで逝かせるな!③』
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今回のキャラ
千家優姫。梁多健太は幼なじみで恋人。剣道部。冷静沈着でシニカル。怖い。
梁多と仲がいい幸介にムカついている。
でも、梁多と付き合うきっかけを作ってくれたので、感謝はしている。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「幸介!」
妃鞠の震える声で目が覚めた。
泣いている妃鞠の向こうに青空が見える。どういうこと?
「幸介!大丈夫?」
「妃鞠、なんで泣いているの?」
「どこか痛くない?」
唇を震わせながら妃鞠が凄く心配してくれている。なんでかな?
ヘンな態勢で寝ているみたいなので、とりあえず起き上がろうとした。
「何で?あ、痛い!か、体中が痛いよ・・・」
「対馬君と激しくぶつかって、倒れてこぶで頭を打ったの・・・」
「なにそれ?」
葵ちゃんも心配そうな顔を見せた。
「えっ、覚えていないの!
・・・いまレスキュー呼んだから、じっとしていてね・・・」
「ああ、スキー場なんだ・・・」
少し思い出して呟くと妃鞠が号泣してしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
救急車で運ばれ、病院で検査したけれど、どこにも異常はなかった。
その途中で、今日あった出来事、全部思い出せた。
よし!俺は妃鞠を守ったぞ!って満足した。
宿に帰るとちょうど夕食が始まっていた。
「お帰り~」
「大丈夫なの?」
これまで、よそよそしかったクラスメイトたちから心配してたよって言われて
凄く嬉しかった。
自由時間になると、2年3組のみんなが俺たちの部屋に集まった。
12畳の部屋に40人近くだよ!
なになになに?なんなのよ~!
俺、妃鞠、梁多、千家が上座に座り、
下座には対馬宗次郞、舛水三典、富士谷勇気、
浅枝鈴也、船見悠平、馬川たかみが正座していて、
横には桐生や南館、その他の奴らが殺気立った感じで座っていた。
なんですか、コレ!
いつもよりさらに厳しい表情の千家がコホンと咳ばらいしてから話し出した。
「まず、錦埜、病院に行って、結果どうだったんだ?」
「軽い脳しんとうだって。すぐにぶつかったことも思い出したよ。
まだちょっと頭は痛いけど。
体も骨折とかはないけど、激しくぶつかったから打ち身が酷いね。」
「バカみたいに、帽子の上にヘルメットってのが良かったのね。」
「おい、バカみたいって。」
俺のツッコミを無視して千家が話を進めた!
「錦埜が病院に行った後、俺は悪くないって言う対馬に対して、
桐生くんがキレてね。
それを見た富士谷が裏切って全部ゲロッってその後は暴露大会。
で、そんなこと知らなかったみんなが怒って、
アンタに謝れって話になったってワケ。
要は、対馬と舛水が富士谷に命令して、卯月くんの財布をアンタの机にいれた。
富士谷がアンタの靴を女子の部室の上に投げ捨てた。
対馬と船見、富士谷がアンタにバスケットボールをぶつけまくった。
対馬が富士谷に命令して、自転車をパンクさせた。
舛水、浅枝、馬川がわざわざ教室を汚してからアンタに掃除を押しつけた。
コレは3度もね。
アンタの机を水浸しにしたのは対馬と舛水が富士谷に命令した。
アンタの机に仏花を手向けたのも対馬が富士谷に命令した。
ああ、万引き事件の前の、馬川の嘘告は対馬の依頼ね。
これくらいかな。」
「改めて言われるとヒデエ目に遭ってんな、俺。
でも、その仏花のヤツは知らないけど・・・」
「朝早く、健ちゃんが片付けておいたからね。感謝しなよ。」
「梁多、ありがとう。
あとバスケットボールの件だけど、船見だけはすぐに謝ってくれたから・・・」
「じゃあ、船見、アンタはそっちへ。」
船見が重圧から解放された感じで、被告席から傍聴席へ移動した。
「残り5人。お前ら、どうすんだ?」
5人に対して、千家が冷たすぎる声を出した。
「俺は関係ない!俺はコレをしたら面白いんじゃねって言っただけだ!」
「そうだ、俺たちは冗談を言っただけなのに、富士谷が真に受けただけだ!」
対馬と舛水が、往生際が悪く、罪から免れようとしてきた。
「どうせアメか鞭を用意していたんだろ?
お前らが言わなけりゃ、富士谷はやっていなかった!」
「「・・・」」
「人を殺さなくても、唆しただけで罪になるんだ。殺人教唆って奴だ。」
千家が断定すると、対馬と舛水は黙り込んだ。
「で、あんなに一杯、やらかしておいて、まだ、自分は悪くないってか?」
いつも冷たい感じの千家の言葉が怒りの熱に満ちていた。
「「「「「ごめんなさい。」」」」」
5人が声を揃えて、俺に向かって頭を下げた。
でも、対馬と舛水は不満たっぷりっていう感じかな。
一方、富士谷は怯えまくっていた。
自供したけど、結局、つるし上げられているからな。
「で、どうする?」
千家が5人を冷たく見据えながら俺に催促した。
なんか急展開すぎる・・・
「・・・期間は短かったけど、結構酷かったと思っている。
それに、俺は心が狭いから、謝られても忘れないし、許すことなんて無理。
しばらくは。」
俺の言葉を聞いて、5人は身じろぎした。
「さっきの話は全部、校長に話すよ、財布泥棒のとき相談にいったからね。」
「そ、そ、そ」
「黙れ!」
声をあげようとした富士谷は、千家が冷たく一喝すると押し黙った。
対馬と舛水も顔が青ざめていた。ふん!
「・・・イジメなんてバカなことをした罰はちゃんと受けろ。
あと、お前らのことは嫌いだし、
犯罪者の子どもを嫌うのはまあ解るから、
お互い、近づかないってことでよろしく。」
「・・・まあ、そんなところかな。じゃあ、お開きにしようか。」
千家がサバサバした声をだすと、みんなが納得した表情でぞろぞろと出て行った。
千家、あなた、何者なの?
最後まで残っていた妃鞠が俺の腕を掴んで、部屋から連れ出した。
妃鞠が泣くのを必死で我慢しているみたいなのでドキドキがいつもの倍だ。
二人っきりになると、妃鞠はいつもの距離の半分の近さで話し出した。
その瞳から今にも涙がこぼれ落ちそう・・・
「・・・ホントに大丈夫なの?」
「うん、ホントに大丈夫だ。全部ちゃんと思い出したし。
頭の痛みもドンドン、マシになってる。
妃鞠、心配してくれてありがとう。」
「どうして!どうして、私を庇ってくれたの?」
「ああ、ついね。体がそう動いちゃった。」
「バカ!死んじゃったかと・・・」
妃鞠は俺の服をぎゅっと握って、頭を俺の胸にくっつけて泣き出した。
「ゴメンな。次は2人とも避けるようにするからさ。もう泣かないで・・・」
妃鞠の艶やかな髪の毛を優しくなでた。
セクハラだと叱られないだろうか?
だけど、泣きやんで欲しい、そして笑顔を見せて欲しい・・・
「ホントにもうあんなことしないで・・・」
「うん、わかったよ。もうしないから、ね。」
大失敗だ!せっかくお稲荷さまのお告げがあったのに!
妃鞠を悲しませてしまった!
くそっ、対馬にストックで牙突を喰らわせればよかったよ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
東雲葵
就寝時間の20分前に、幸介くんが私たちの部屋に約束通り顔を見せてくれた。
注意深く見てみたけど、幸介くんの顔色や様子は普段と変りないと思って安心した。
「ホントに大丈夫なの?」
「検査したら脳みそキレイなもんだって。痛みもどんどんマシになっているよ。」
「よかった・・・」
ホッとした私を横目に見ながら、
瞳を輝かせた財前先生が幸介くんにぐいっと近寄った。
「昨日は葵先生を、今日は妃鞠ちゃんを助けるなんて!
凄いね、こうすけくん。もうカッコ良くて、輝いてみえるわ。
どう、私と付き合ってみない?もう、すっごく甘やかしてあげるけど。
もう、手取り足取り、ぜ~んぶ教えてあげるけど。」
冗談めかしているけど、目は本気だ!女豹だ!
「ダメです!それは私が!」
あっ、つい叫んじゃった!
「やっぱりね!」
ひっかけだった?
財前先生が私たちを交互に見ながらニマニマしている!
は、恥ずかしい~
こ、幸介くんはどうなのかな?
6歳も年上だけど、私のことをどう思っているの?
ちらっと横目で見たら、幸介くんは真っ赤になって目がキョロキョロしていた。
私と幸介くんが恥ずかしくて何も話せないのをみて、
財前先生は面白そうにしていた。
いい人なんだけど、時々私をからかって喜んでいる・・・
「そういえば、嫌がらせの件でみんなと話し合ったんでしょう?」
「ええっと、財布の件は、対馬と舛水が命令して富士谷がやったみたい。」
財前先生の問いかけに、幸介くんは慎重に答えた。
「そう、それはまた校長先生に報告しようね。
他にも色々あったんでしょ?相談してくれればよかったのに・・・」
「ありがとうございます。でもたいしたことなかったんで・・・」
幸介くんはニッコリと笑った。
色んな嫌がらせを受けていたんだ・・・全然気づかなかったよ。
私の観察力が鈍いのか、それとも幸介くんが強いのかな・・・
「幸介くん、もし具合が悪くなったら、すぐに教えてね。じゃあ、お休みなさい。」
・・・幸介くんはやっぱり妃鞠のことが好きなのかな?
さっきの感じではまんざらでもなさそうだったから、
もしかして私のことが好きなのかな?
以前、妃鞠に幸介くんをどう思っているのって訊いたら、
好きじゃないって言ってたけど、今日の様子はそんな感じじゃなかったよね?
体を張って守られちゃったんだもんね。
妃鞠と幸介くんを取り合うなんていやだな・・・
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