第17話 『電車でGO!』
フォロー、☆、応援コメントありがとうございます!
13話、修繕積立金削除しました。ご指摘ありがとうございます。
それではGO!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『電車でGO!』
頭の中で鐘の音とともに車掌っぽい口調でアナウンスがあった!
「ふ~。お稲荷さまって世の中のことに詳しいんですね。」
「寂れているが、それでも色んな人がお参りしているゾイ。」
「なるほど。行ってきます。」
昨日、期末試験が無事終わった。
中間試験の時よりかなり効率よく頑張ったので、成績は上がると思う。
いや、上がらないと妃鞠に叱られる!
うん?叱られるのも悪くないか?
実は、試験の三日前、体育の授業から帰ってくると、俺の机の中が水浸しに、
カバンの中は湖になっていた。全ての教科書、ノートが水浸しだった。
その少し前に臨時全校集会が開かれて、校長先生がイジメや嫌がらせは
厳しく対処するって警告してくれたのにこの有様だった。
流石に呆然としていたら、これを見た妃鞠と千家は辺りをキッと見回した。
そして、教科書、ノートを乾かすのを手伝ってくれた。
乾いたノートの一部が滲んで分からなくなっていたのを見ると、
妃鞠はノートのコピーをくれて、もう一度、ファミレスで勉強を教えてくれた。
隣に座って、結構、密着して教えてくれた。
妃鞠が髪をかき上げると、なんだかイイ匂いがして・・・
ご褒美だ!イジメ万歳!
「妃鞠、ホントにありがとう。」
「うんうん、成績上がらないとダメだからね!」
お礼を言ったら、照れ隠しにそんなこと言われた。メチャクチャ可愛い!
イジメ、大歓迎!
残念ながら、それ以降は嫌味を言われるくらいしかなかった・・・
期末試験の打ち上げとして、クラスで18時からクリスマス・イルミネーションを
見に行くことになった。
主催者が対馬と舛水という俺の天敵だが、かなり多い人数で、
梁多、千家も行くし、何より妃鞠から行こうって誘われたので行くことにした。
他のみんなはクラブが終わってから学校で集まって行くのだが、
帰宅部の俺は、一度、家に帰ってお告げどおり電車でGO!することにした。
このクリスマス・イルミネーションはかなりの規模なのに無料で、
駅から近いもんだから、もの凄く来場者が多かった。
電車の中で、梁多に今、どこにいるかラインを送ってもらったのだが、
クリスマス・イルミネーションへの来場者が多すぎて、
駅から出るのに時間がかかってしまい、集合場所に10分以上遅刻してしまった。
当然、そこに妃鞠たちクラスメイトはいなかった。しょぼ~ん・・・
この人ごみに突入して、10分の遅れを取り戻すことはムリだとすぐに諦めて、
さてどうするかと辺りを見回すと小さな男の子が一人で泣いていた。
「ぼく、誰と来たの?」
「まま。」
「名前は?何歳?」
「ひろと、5さい。」
「そうか、ひろと、5歳か。よく言えたね。えらいな。
俺もママを探すからね。」
ひろとは一応泣き止んで、肯いた。
「ひろと君のおかあさん、ひろと君のおかあさん、いませんか~」
何度か叫んでいたら、声を掛けられた。
「こう、錦埜くんじゃない、どうしたの?」
葵ちゃんと財前先生、西平先生が生徒指導の見回りに来たのだ。
「クラスのみんなとこのイルミネーションを見に来たんだけど、
遅刻しちゃって。そしたらこの子が・・・」
葵ちゃんと財前先生が微笑んでうんうんと肯いた。
「東雲先生、財前先生、見回り中です、もう行きましょう!」
・・・流石、西平だ。泣いている子どもより楽しいイベントが大事らしい。
素晴らしい高校教師だ。
「そんな訳にはいかないでしょう。私たちもお母さんを探しましょう。」
「ありがとうございます。じゃあ、俺は駅の方に探しに行きます。」
駅の近くで叫んでいたが、しばらくすると葵ちゃんからラインが届いた。
『お母さんが見つかって、ひろとクンを引き渡したよ、
これから3人で見回りに行くけど、ゴメンね。』
よかった。
さて、どうするか?
お稲荷さまのお告げでこれだけはないよな・・・
葵ちゃんとは出会ったから、やっぱり妃鞠をイルミネーションの出口で
待ち伏せるか。よし、隣の駅に電車でGO!だ。
隣の駅周辺はターミナル駅らしく、やはりイルミネーションを堪能して帰る人、
今から飲みに行く人たちで、ごった返していた。
少し高いところから、妃鞠やクラスメイトを探す。
うん?これってもしかしてストーカーというヤツでは・・・いや、俺は断じて違う!
いた!妃鞠だ!
ニヤけた対馬が右腕を、ニヤけた舛水が左腕を無理やり組んでいて、
それを妃鞠はかなり嫌がっている!
早く助けなければ!
だけど、向かってくる人が多く、中々前に進めない。
少し向こうにいる妃鞠たちに、デカくてヤンチャな恰好をした二人組の男が
声を掛けると、対馬と舛水が悔しそうな顔をして、逃げ出した!
こんどはデカくてヤンチャな恰好をした男・・・ああ、面倒、
ヤンキー2人が無理やり妃鞠の肩を抱いた!
鼻の下を伸ばしまくったヤンキー2人が怖がっている妃鞠に
しきりと話しかけている!
くそっ、狼が虎に変わっただけじゃないか!
「妃鞠ィ!」
絶叫すると、妃鞠が気づいて大きな声を出した。
「幸介!」
怯えて震えていた妃鞠が叫んで、ヤンキー2人がビックリしていた。
怖いけど、ヤンキー2人に大きな声で話かけた。
「その子は俺の彼女なんです。手を放してもらえませんか?」
「幸介、遅いよ。」
「悪かった。」
妃鞠も大きな声で答えてくれると、大勢の周りの人たちがこちらを
チラチラみていた。
「ちっ、俺たちはヘンな奴から守ってやったんだからな!」
ヤンキー2人は辺りをキョロキョロ見回して、捨て台詞を吐いて、
次の獲物を探しにいってくれた。
「ありがとうございました。」
確かに対馬と舛水を追い払ってくれたので、お礼を言っておいた。
「遅くなってゴメンね、帰ろうか?」
「うんうん。許してあげるよ。」
彼氏のフリなんだから、さりげなく手を出すと、安心した笑顔を浮かべた妃鞠は
自然に手を繋いでくれた。
うお~、お稲荷さま、流石でございます!
小学校の低学年以来でございます!
喜びの涙が止まりません!
駅まで、手を繋いで歩いた。
緊張しすぎで何を話したらいいか分からず、怖くて妃鞠の表情をチラリと見ることも
出来なかった。
妃鞠からも何も話しかけられなかったけど、繋いだ手は強く握られたままだった。
帰りの電車はやはり満員だったが、つり革を持つことができたが、
その代わり、妃鞠から手を離されてしまった。しょぼーん。
「ありがとうね。あんなごつくて、ド派手な格好の人たち怖くなかったの?
しかも2人も!対馬くんたちはすぐに逃げちゃったのに・・・」
満員電車で、さらに騒がしかったので、耳元で言われた。心地良い!
「怖かったけど、周りに大勢いたから暴れないかなって。」
妃鞠の耳元で話すと、改めてその近さにドキドキした。
「凄いね。勇気あるんだね!」
うお~、勇気あるんだね!頂きました!そんなの初めてです!
駅からでると、妃鞠がちょっと照れくさそうに誘ってきた。
「一緒にちょっとだけファミレス行かない?お礼に奢るから。」
「えっ、いいの?行くよ、行く!」
「ファミレスだよ、そんなに喜ばなくても・・・」
食いつきが凄すぎて、苦笑いされてしまった。
俺はチーズインハンバーグ、妃鞠はカルボナーラとサラダを頼んだ。
「妃鞠、少し味見させてよ。ハンバーグ、代わりにあげるからさ。」
ウキウキしながら提案したら、ニコニコで肯いてくれた。
「うんうん。」
そのあと、急に真顔になった妃鞠が俺をじっと見つめていた。
「・・・ねえ、幸介、変わったね。」
「イイ感じ?ダメな感じ?」
「イイ感じに。」
「やった!認めてくれてありがとう!」
「ふふふ。やたら好戦的だけどね。頑張っているのがよくわかるよ。
なにか、きっかけとかあったの?」
「もちろん、お・・・」
やべえ、つい勢いで『お稲荷さま!』って言っちまいそうだった。
「もちろん、なに?」
妃鞠は可愛らしく、首を傾げた。
「・・・頑張らない自分がかっこ悪いって思ったんだ。
あと、妃鞠や、葵ちゃん、梁多たちが助けてくれたし。」
「うんうん。ホントにイイ感じだよ。
一緒に頑張ろうね!」
うおぉぉぉぉ~!
一緒に頑張ろうね!頂きました~!
お稲荷さま、今日もありがとうございました。
毎日、昨日より楽しい今日が続いております!
もう、ホントに凄いデスネ!
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