第16話 『警察を呼べ!』
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『警察を呼べ!』
頭の中で鐘の音とともに詐欺師っぽい口調でアナウンスがあった!
「おいおい、物騒だな・・・」
「事故ですか、事件ですか・・・ゾイ。」
「はぁ。行ってきます。」
「頑張るゾイ!」
体育が終わって教室に帰ってきて、卯月将が、自分の財布がないと騒ぎ出すと、
クラスメイトの半分くらいが一斉に俺を見た!
心の中は冷汗ダラダラだけど、俺はそのまま悠然と座っていた。
「おい、万引き野郎、お前じゃねえのか?」
舛水三典がニヤニヤしながら俺を指さした。
「知らね。」
やはりニヤニヤした富士谷勇気が俺の席に楽しそうにやってきた。
「おい、調べさせろよ。」
「どうぞ。」
俺が席を外れると、富士谷は俺のカバンを調べた。
次に俺の机の中を見て手を突っ込むと、見たことのない財布が出てきた!
うおぉ~い!事件ですぅ~!警察ぅ~!
「おい、卯月。これ、お前の財布か!」
「俺のだ!」
「やっぱり、錦埜がパクったんじゃね~か!」
「泥棒だ!捕まえろ!」
冨士谷が俺を犯人と決めつけ、舛水が叫ぶと教室中が益々ざわめいた。
妃鞠が、梁多が、俺を心配そうに見つめていた。
千家はクラスメイト達をいつもの冷たい視線で観察していた。
チャイムが鳴って、数学の授業のために担任の西平がやってきた。
「おい、騒がしすぎるぞ!」
「先生、コイツが卯月の財布をパクってたんです!」
俺を指さしながら、富士谷が得意げに叫んだ。
「なに、本当か?」
「俺の財布が錦埜の机の中にあったんです!」
西平の質問に卯月が事実だけ答えた。
西平の俺を見る目は、これまで全く興味無しの目だったのだが、
ここにきて憎悪の色を帯びてきた。
「おい、錦埜、どういうことだ?」
俺に迷惑を掛けんじゃね~!って透けて見える。
「警察を呼んでください。」
「開き直るんじゃない。」
「いや、そうじゃなくって、俺はその財布に絶対に触っていない、絶対に!
だから、警察を呼んで、その財布から指紋を採るとかしてください。」
「お、お前の机の中にあっただろ。」
富士谷が焦った声で割り込んできた。
「うん、だけど絶対に触ってないから。
だれかが俺に対する嫌がらせをしたんじゃないかな?
だけど、俺が犯人だって思うヤツもいるだろ?
それにこれは舛水が言っていたように窃盗だと、犯罪だと思う。
だから、ちゃんと警察に調べてもらうのが一番だと思うんだ。
先生、今すぐ、警察を呼んでください。」
シーン!
教室が静まり返った。
「て、手袋してたら関係ないだろ?」
舛水三典がさかしげに大きな声をだした。
「ああ、そうだね。でも警察なら窃盗事件だから、
そんなことも含めて、ちゃんと調べてくれるだろ。
手袋が捨てられてないかとか、その手袋に俺の指紋がついているかとか。
俺の無実が証明されたら、次はこのクラス全員ちゃんと調べてもらえばいい。
警察なら絶対、真犯人を捕まえてくれるさ!」
また、教室が静まり返った。
「おい、卯月。中身はどうだ?無くなった物はあるか。」
「・・・いえ、何にも無くなっていません。」
「じゃあ、この話は終わりにしよう。」
鼻白んだ西平が有耶無耶に納めようとしてきた。
「先生が警察を呼んでくれないなら、校長先生に相談してきます。」
俺が立ち上がって歩き出すと、西平、富士谷、舛水が明らかに焦りだした。
「い、行くな。行かなくていい!」
「なんでですか。俺は犯人だとみんなから疑われているんですよ!
俺じゃないなら誰が盗んだのか、みんな、気になるでしょ。
万引き犯の子どもは怪しいでしょ?白黒きっちりとつけましょうよ。」
「誰もお前のことを疑ってなんかない!」
焦りまくった西平が大きな声を出した。
「いやいやいや、俺の机の中から出てきたんだけど!
メチャクチャ疑われたんだけど!
なあ、富士谷!なあ、舛水!」
「「・・・」」
「おい、何とか言ってくれよ。富士谷、お前が俺の机の中から見つけたんだろ。
ピンポイントで卯月の財布を見つけて、あんなに得意げだったじゃないか!」
「・・・」
富士谷は蒼白になっていた。
「舛水、俺を捕まえろ!って言ってたじゃないか!」
舛水は顔を真っ赤にして震えていたが、黙り込んだままだった。
誰も何も言わないな・・・
「まあ、いいや。じゃあ、校長先生にお願いに行ってきます。」
「行かないでいいって言ってるんだ!」
怒鳴った西平に対して、俺は叫んだ。
「じゃあ、犯人を見つけてくださいよ。
卯月の財布を盗んで、俺に罪をなすりつけようとしたヤツを!」
「・・・俺は教師だ。」
「そうですね、だから警察を呼びましょう。」
職員室に飛び込んで、校長先生を捕まえて一から説明した。
「ふー。錦埜君のお父さんが万引きして捕まってから、
同級生から嫌がらせを受けているのは聞いています。
今回もその疑いが濃厚ですね。
だけど、警察はやり過ぎだと思います。
もう、誰も君が関係しているとは思ってないでしょう。
もう、この辺で矛を収めてもらえませんか。
もちろん、明朝、臨時全校集会を開いて厳しく警告します。」
「・・・分かりました。でも、絶対に俺じゃないって示したくって・・・」
「ええ、君の気持ちはよく分かります。
この時間はいいですから、教室に戻りなさい。」
昼休みに入ってしばらくしてから教室に戻ると、
いつもどおり、梁多、千家、妃鞠が弁当を食べていたので、加わった。
「今まで何してたの?」
「校長先生に全部お話してきた。」
「うんうん!で、どうなったの?」
「今回は止めとけってさ。」
「ぶ~。」
妃鞠は残念っていう感じだ。
「そうだよ、幸介はやり過ぎだよ。」
梁多は逆に警察反対派だった。
「そうかもな。だけど、絶対に俺じゃないって信じて欲しかったんだ。」
「いや、そんなの信じるでしょ。」
「お前らは話せばちゃんと分かってくれる。
信じて欲しいのは俺に好意を持っていない奴らにだよ。」
3人は顔を見合わせ、ほころばせた。
「まあ、黒から白にかなり変ったよね。」
「そうだな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後になって教室から一歩でると、葵ちゃんが真剣な表情で立っていた。
「ちょっと来て!」
また生徒指導室に引っ張って行かれるとやはり財前先生も待っていた。
「今日は何があったの?」
一から説明すると、2人はため息をついた。
「ひどいね!でも全然かみ合わないわね。」
「そうですね・・・」
「どういうこと?」
「いや、西平先生がね、俺が納めてやったんだって・・・」
「いや、最初は俺を疑いまくっていて、
最後は有耶無耶にしようとしていましたね。」
「西平先生が職員室で大きな声で説明したんだけど、なんか不自然でね・・・」
財前先生が内部事情を暴露してくれた。
「私は幸介くんのことを信じているからね、全面的に!」
葵ちゃんが身を乗り出して俺の右手を両手で握りしめた!
「あ、ありがとう。」
ドキドキがとまらな~い!
「私もピースケくんのことを信じているからね、全面的に!うふふ。」
財前先生が俺の左手を両手で握りしめた。
強い香水の匂いがする。強いけど、良い匂いでクラクラする。
葵ちゃんが俺をジト目で見ていた・・・
お稲荷さま、毎日ありがとうございます。
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