第15話 『嘘もたまにはいいよね!』

今回のキャラ

対馬宗次郞・・・俺ってイケてるぅ~!女子ども、イケてる俺を見ろ!

富士谷勇気・・・他人をバカにすることで、自分がエラくなったと思う勘違い野郎

船見悠平・・・クラスが盛り上がるにゃ~錦埜幸介を叩いたらいいんじゃね?

花角晃司・・・気配を消せ!なるんだ、空気に!


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


『嘘もたまにはいいよね!』

頭の中で鐘の音とともに詐欺師っぽい口調でアナウンスがあった!

「だから、いつ、どこで、だれに、なにを、するんだよぉ~!」

「相変わらずじゃゾイ。」

「おはようございます。」

「その切り替えも、相変わらずじゃゾイ。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


今日の体育の授業は、男は体育館でバスケットボールをすることになった。

4チームに分かれて、リーグ戦だ。


俺のチームは、対馬宗次郞、富士谷勇気、船見悠平、花角晃司の5人だ。

いや、敵が3名いますけど!


心配していたんだけど、試合ではちゃんと俺にもパスが回ってきたので、

みんなで勝利を目指したのだが、結果3戦3敗だった。


負けた原因は、一番多くシュートを放った対馬が外しまくったからだ。

歌は上手いらしいけど、球技はダメなのね。


「最下位のチームがボール片付けておけ。」

先生がそう言って体育館を出て行くと、

勝ったチームの奴らは騒ぎながらついて行った。


俺はボールを入れるかごをゴロゴロと引っ張って体育館の中央に持って行った。


バン!

「痛い!」

背中にバスケットボールを強くぶつけられた!

「何すんだ!」

対馬がニヤついていた!


バン!バン!

さらに2発、ぶつけられた!メチャクチャ痛い!今度は富士谷と船見だ!


転がったボールを拾った3人は、ニヤニヤしている。


今度は、さっと投げるフリをしやがった!

くそっ!

ビビらせて楽しんでいる!最低だ!


そして3人は一斉に動き出して俺に近づいてくると、こちらに大きく振りかぶった!


バン!バン!バン!

顔だけは防いだものの、腕とか腹に当たってメチャクチャ痛い!


また3人が転がったボールを拾った。

奴らのニヤニヤが止まらない。


「ふふふ、ははは!」

俺が笑うと対馬がせせら笑った。

「どうした、怖くって頭がオカシくなったか?」


「お前らバカか?そこで動画撮っていたのに気づかなかった?

綺麗に写っているお前らの顔に、住所と名前を上手に貼り付けて、

SNSにアップしてやるからな。

どれくらい燃え上がるか、楽しみだな!」


自信満々に言ってのけると、さーっと3人の顔が青ざめた!


「う、嘘だ!お、お前の味方なんかいるもんか!」

富士谷の声はうわずっていた。


「少し金を出したら、喜んでやってくれたよ。金の力は偉大だな!」

「そ、そんなヤツいるか!」

対馬は怒鳴ると、ボールを明後日の方角に投げ捨てて逃げ出した。

慌てて船見と富士谷もボールを投げ捨てて逃げ出した。

ふん!根性無しめ!


ふぅ~。嘘がバッチリ効いたぜ!

ありがとうございます!お稲荷さま!


傍観していた花角だが、片付けるのはちゃんと手伝ってくれた。

「・・・止めなくてゴメンな。」

「別にいいよ。俺に味方して、ヤツらのイジメの対象になったらつまらんからな。」


「・・・ホントに撮ってたのかい?」

「次から頼むことにするよ。」




★★★★★★★★★★★


昼休み、弁当をいつもの4人で食べている時に嘆いてみた。


「ああ、色々ありすぎて、期末試験が不安だよ。

今度こそ、赤点取りそう。特に数学がな・・・」


「そうね、一度、勉強会してみない?

試験範囲とか、大事な所とか、分からない所とかを相談しあおうよ。」

「賢いのは東雲さんだけだけどね。」

千家の提案に対して、梁多が突っ込んだ。

それを言っちゃ~おしまいよ。


千家は国語以外バカなんだ。知的眼鏡ってカンジなのにな。ウケる!

「おい、錦埜、楽しそうなこと考えているじゃないか・・・」

千家の氷の視線を受けて俺は全力で首を左右に振った。


そして、3人で心を合わせ見つめると、妃鞠はやれやれって首を横に振った。

「ああ~、わかったわ。一度だけね。」


さっそく、放課後にファミレスに行くことになって、

4人で教室を出ると、なにかを企んでいるっぽい葵先生が俺を手招きした。


近寄って行くと耳元で囁かれた。くすぐったい!

「勉強会するんでしょ?国語、教えてあげよっか?」

「いや、それ、駄目なヤツ!」

「がーん!」

衝撃を受けて立ち尽くす葵ちゃん。超可愛い!


「じゃあね、葵ちゃん!」

他の生徒に聞こえないように小声で言うと、

「せ・ん・せ・い!」

怒るフリしてから、笑顔を浮かべ手を小さく振ってくれた。超可愛い!


俺をうらやましそうな目で見ていた梁多の耳を千家がつまみ上げた!

「痛い、痛い!」

そして、千家は俺も睨み付ける!

「テレテレしてるんじゃね~よ!」

こ、怖い!


ファミレスに着くと、3人はメニューも見ずにドリンクバーだけを

注文しようとしたが、3人の前にメニューを広げた。


「えっと、今までありがとう。3人がいなかったら、俺、休んでたかも知れん。

お礼をしたいんだ。奢るから何でも食ってくれ。」

「えらく景気いいよね。」

バイトもしていないのに何度も奢っているから、妃鞠が不信感を持ち始めたようだ。


「ま、まあね。」

「まあいいじゃない。せっかくだからご馳走になろうよ。」

すぐに千家と梁多が仲良く選び始めた。


男子はケーキ、女子はパフェ、セットで全員ドリンクバーを注文した。


そして、注文が届くと、千家は初めて見る可愛い笑顔を浮かべて、

パフェを梁多の口元に差し出した!

「健ちゃん、あ~ん!」

にっこにこの梁多は大きく口を開け、美味しそうに食べた!

「美味ちぃ~!」



「じゃあ、優姫ちゃんも、あ~ん!」

今度は梁多がケーキを千家の口元に差し出した~!

千家は顔中を真っ赤にしながらも、子燕のように大きく口を開けた!

「美味ちいぃ~!」

誰、コイツ?


いや、梁多はともかく、マジか!

千家、お前、そんな可愛いところ、あったんだ!

まるで恋する女子高生じゃね~か!


千家と梁多はしばらく、互いに「あ~ん!」を続けていたが、

3分の1ほどが無くなると肯きあって、自分の頼んだものを食べ始めた。


はっと我に返った。まだ、俺と妃鞠の分は全く手が付けられていない!

やっぱり、妃鞠も衝撃的だったんだな・・・


・・・そんなことより、

かすかな期待を持って、妃鞠をチラッと見てみたら、バッチリ視線がぶつかった!

妃鞠はボッと顔が真っ赤になってアワアワしていた。

そして、パフェをスプーンですくうと、じ~っと見てから、

自分の口に少し乱暴に放り込んだ・・・

無念・・・


・・・パフェとケーキを食べ終わり、ドリンクを用意してから勉強を始めた。


千家は国語以外を梁多に教えてもらって、嬉しそうだった。

マジで、可愛いところもあるのね。


妃鞠は俺の隣で、長い髪をかき上げながら身を寄せて丁寧に説明してくれた。

正直、ドキドキしすぎて頭にはあんまり入ってこなかった。


最後に妃鞠先生の勉強の仕方、試験のテクニックを教えてもらった。

当たり前の事も多かったけど、目から鱗のこともいくつかあって、

期末試験がちょっと楽しみになった。


最後に妃鞠が俺をじっと見つめた。


「・・・幸介、嫌がらせはどうなの?」

「えっと、大したことないな。最近の俺、どんな感じに見える?」

「・・・平気みたい。イメージと違う・・・」

妃鞠が困ったように小首をかしげた。


「でも困ったら、ちゃんと相談してね!」

「僕たちにもね。」

「ありがと。」

3人も味方がいることに幸せな気持ちが広がった。


・・・バスケットボールをぶつけられた時は実はショックだったけど、

すぐに船見だけは謝ってくれた。

だから妃鞠、梁多、千家以外でも敵ばっかりじゃないんだって分かって嬉しかった。


一度、自転車がパンクしていたけど、これはイジメなのか、釘を踏んだのか?

パンク修理セットはいつも持っていて、

修理は慣れているから嫌がらせと感じないし・・・


もっと、激烈な嫌がらせがあったら、絶対に妃鞠と葵ちゃんに相談するんだ!

そして妃鞠の胸の中で泣きたい!ぎゅっと抱きしめられたい!

さらに葵ちゃんに慰められたい! よしよしってしてもらいたい!


3人は電車通学、俺だけ自転車通学なのでその店で別れた。

しまった、今日だけでも電車にしとけばよかった。

痛恨のミスだ!

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