第13話 『家を借りてみよう!』

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※主人公たちは中くらいの県の中で、2番目に大きい市の、

市街地から少し離れた所に住んでいます。


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『家を借りてみよう!』

頭の中で鐘の音とともに詐欺師っぽい口調でアナウンスがあった!

「おおっ!いいね!でも、家族がうんって言ってくれるかな?」

「相談が吉じゃゾイ。」

「だよね。ありがとう。じゃあ、また明日。」


土曜日、お告げを聞いて、昼ご飯を食べているときに家族みんなに相談した。

「家を借りて一人暮らししてみたいんだけど・・・」

「いいんじゃない。」

最高権力者であらせられる母親が即答してくれた!


「えっ?マジ?」

「ええ。マジもマジ、大マジよ。

一人暮らししてみれば、家事の大変さ、家族の有難さが分かるし、

家主としての責任とかも感じるだろうし。」


「いいな!いいな!」

俺が一人暮らしをするための家を借りるのに何故かはしゃぐ莉子。


「いや、お母さん、それは勿体ないんじゃ・・・」

そして、無駄な抵抗を試みる父さん。


ちなみに、父さんは宝くじが当たった直後、

お母さんから長年の夢、レクサスを買ってもいいよって言われて、

さっそく販売店に行って試乗させてもらっていた。


家ではパンフレットを並べてどれを買おうか悩み、

悩むことをニヤニヤしながら楽しんでいた。

そして、突然の喜劇!

哀れ、お父さんはずーっと今の車に乗り続けることとなりましたとさ!


「この家も20年ほど経つでしょう。そろそろ、リフォームの時期なのよ。

アンタのお陰で、悪い所をこの際、一気に直すつもりなの。

だから、アンタは3LDK以上の所を借りなさい。

その代わりリフォームの間は家族で住むからね。」

「・・・3LDKに一人暮らしって、メチャクチャ、オーバースペックじゃん!」


受験生のくせについてきたがる莉子を振り切れず、

二人で最寄り駅前の不動産屋さんに行ってみた。

対応してくれたのは20代前半のチャラ男だった。


「凄くお若いお二人ですね?今日はどんな物件をお探しですか?」

「3LDK以上で、この駅から徒歩5分以内。家賃は相談で。」


「そうですね~。3LDKですと、駅から3分以内で2件、

10分以内で5件をすぐお見せできますが・・・」

「じゃあ、駅から3分以内の2件を見せてもらいたいのですが・・・」

「かしこまりました!申し訳ありませんが、徒歩が一番早いので・・・」

「徒歩で結構です。案内、お願いします。」


店員さんが歩き始めると、莉子が腕を組んできた!

「おい。」

「いいじゃん!若夫婦って感じで楽しもうよ~!」

珍しく莉子が俺といるのにご機嫌だ!


「1軒目は駅北にある築15年、10階建てのマンションの5階です。

ここはオートロック無しですね。

ちなみに、この辺りの3LDKの家賃の相場は、月額10万円くらいです。

町内会も盛んで、参加していただくことになるかもしれません・・・」


店員さんは何も見ずに、この辺りの不動産情報を流ちょうに説明し続けた。

凄い!チャラ男ってレッテル貼って、すいません・・・


歩きだして3分で着き、エレベーターに乗ると、店員さんが話しかけてきた。

「お二人は恋人ですか?若夫婦ですか?」

いやいやいや、17歳と15歳だぞ!夫婦はねえだろ!


「親が中々認めてくれなくて、こうなったら駆け落ちしようかなって!」

莉子がいけしゃあしゃあと出鱈目をブッコんだ!


「やあ、困りましたね。未成年の場合、保護者の同意が必要なんですよ~。」

「大丈夫です!いざとなったら親にハンコ押させますんで!」

「そうですか!ちなみに、収入は大丈夫ですか?」

「大丈夫です!カレ、結構、稼ぐんですよ~!」

ぶほぁ~。おいおい、言いたい放題のメチャクチャだな・・・


「おお、凄いですね~。

はい、こちらです!

3LDK61㎡、家賃9万円、共益費1万円となります。

オール電化ではなく、都市ガスです。

駐車場は1万円ですが、空きは無いですね。」


莉子は組んでいた腕を放して、各部屋やお風呂、トイレを、たくさん写真を撮って、

楽しそうに、入念にチェックし始めた。


俺はゆっくりと殺風景なLDKを見渡した。

蛍光灯無し、カーテン無し、家電・家具無し、ガスコンロ無し。

ベランダは西向きか・・・


10分ほどで俺は飽きてしまったのだが、莉子はまだまだ楽しそうにチェック

していた。

「お~い、莉子!次の家の方がいいかもだから、次に行こうぜ~!」

「次の方がいいんだ~。じゃあ、行く~!」


物件の外に出ると、笑顔の莉子はまた俺と腕を組んできた。

「家を選ぶって楽しいね!」

「そうだな。」


「次の物件は駅南の築7年8階建ての3階です。」

「こーすけ!ここの方が綺麗だよ!こっちが正解かも!」

外観を見ただけで、益々テンションが上がる莉子。


「こーすけ!オートロックだよ!」

「こーすけ!エレベーターが広くて綺麗!」

莉子って外面はこんな感じなんだ。愛い奴だ。


「はい、こちらです!

3LDK69㎡、家賃12万円、共益費1万円となっていて、

オール電化です。

駐車場は1万円ですが、空きはやっぱり無いですね。」


「こーすけ、こっちの方が広くて綺麗!」

莉子は組んでいた腕を放して、またまた各部屋やお風呂、トイレを、

たくさん写真を撮って、楽しそうに、入念にチェックし始めた。


月額合計13万円!高い!

俺はゆっくりとLDKを見渡した。

蛍光灯無し、カーテン無し、家電・家具無し、電気コンロ無し。

ベランダは南向きか、やっぱり後出しのこっちの方がいい物件だな。

高いけど。


ここから歩いて、駅まで2分、実家まで10分、お稲荷さままで3分か。

学校には電車に乗って30分で着くから10分だけ短縮される。

せっかくなら都会である高校近くの方がいいけど、

お稲荷さまから遠くなるのがな・・・


まあ、妃鞠と葵ちゃんも電車で通っているから、この駅近くがベストだよな・・・

たった10分しか学校まで近くならないケド・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


晩ご飯を食べながら内覧した物件の報告と本当に借りていいか相談した。

もう、莉子が2軒目の物件を借りる気マンマンで、精一杯アピールしていて、

可愛かった。


お母さんは莉子のプレゼンを楽しそうに聞いて、うんうんって肯いていた。

父さんは「莉子、お前は一人暮らしダメだよ。」って何度も口にしたのだが、

誰にも相手にされていなかった。可哀そうだった。


最高権力者サマが冬休みから借りたらっていうのでそうすることにした。


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