第9話 『万引犯を捕まえろ!』
『万引犯を捕まえろ!』
頭の中で鐘の音とともに詐欺師っぽい口調でアナウンスがあった!
「いや、どの店よ~!誰が、何時ごろするのよ~」!
「珍しく怒っているゾイ?」
「ええまあ。あんまりにも漠然としているので。」
「う~む。これまでの傾向を考え直してみるのもいいゾイ。」
「はい。そうします・・・」
確か、1回目が
『ギャンブル運サイキョー!あるだけ突っ込め!』・・・俺の買った宝くじが
当たった。
『強くなった方がいいんじゃない?』・・・順調に強くなっているところ。
使い道まだなし。
『友を押せ!押せ!押せ!』・・・梁多を押したら千家とカップルになった。
そして、その二人+妃鞠と毎日、お弁当を食べることに。
『お墓参りに行けば?』・・・葵ちゃんと妃鞠とお墓参りで出会って好感度アップ。
『雨具を忘れろ』・・・妃鞠と相合傘
『罠だ!』・・・馬川から嘘告
俺が得するか、俺の立場を守るか・・・
考えろ!
俺の関係者でお店をしている人はいない。
俺が知らない奴の万引を防いで、巡りめぐって、俺が幸せになること・・・
なんてお告げはないよな。
・・・もしかして、家族や妃鞠、葵ちゃんが万引するのか?
うん、妃鞠や葵ちゃんが万引なんてするはずがない。
いや、待て。誰かにハメられて万引犯にされたら・・・
俺が慰めてあげるから問題ないのでわ?うん。ない。
いや、彼女たちに生涯にわたるレッテルが貼りつけられてしまう!
なんとしても防がないと!
妃鞠と葵ちゃんを貶めようとするなんてっ!誰だ!このクソ野郎がっ!
・・・いや、そもそも誰にも嫌われてないわ!
ということは家族か?
父さんもお母さんも莉子も万引なんてするハズがない。
いや、父さんが酔っぱらっていたら可能性が高いか?
いつも前後不覚、ベロベロだもんな。
コイツだ!
お母さんに連絡してみたら、今日は飲まずに早く帰る予定とのことだった。
なんだとう?
じゃあ、莉子か?
アイツなら可愛くて、生意気で、可愛いから、女子に敵はいくらでもいるハズだ。
仲良さげなフリして、一緒にコンビニ入って、莉子のカバンにしょぼいお菓子、
いや、極薄のゴム(Sサイズ)なんかを放り込んで、二重に辱めるつもりだな?
コロス!
「おいおい、何、物騒なこと言ってるの?」
「おお、梁多か。莉子がよく行くコンビニとか知らない?」
「知らねえよ!」
いつも穏やかな梁多の口調が乱暴になってしまった。
「スマン。」
「珍しく二人がもめているね~。」
お昼休みになったので、妃鞠が弁当を持ってやってきた。
「幸介が酷いんだよ!コロス!とか、莉子が行くコンビニはどこか?
とか言うんだよ!」
「・・・幸介、熱でもあるの?」
妃鞠が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「いや。悪い夢を見ていたようだ。」
「さっきは授業中~!」
全ての授業が終わると俺は自転車に飛び乗って、家に向かって全速力で駆けた。
そして、平均40分のところを、32分18秒というレコードを叩き出した。
玄関には帰ってきたばかりの莉子がいた!
「あれ?こーすけ、早いじゃん!」
「お帰り、莉子。何か、なかったか?」
「???何か?何にも無いケド?」
「これからどこから出かけるのか?」
「???今日は家で勉強だけど?いつもはそんなこと訊かないじゃん?」
「いや・・・今からハーゲンのパーティパックを買おうと思っていて、
もし、お前が今日、引きこもるなら2個あげてもいい。」
「ありがと~、こーすけ!」
よしっ!あとは父さんだけだな。
念押しに、莉子から今日だけは飲みに行かないでってラインで連絡したら、
「了解!」
って返事が返ってきた。ほっ。
18時過ぎ、父さんからラインが入った。
『ごめん。上司から誘われて断れなかった。すぐに切り上げるから。ごめん。』
『どこの店で飲むの?』
急いで返信したものの、次に連絡があったのは、
23時に警察からだった。
父さんが万引きして捕まったそうで、引き取りに来いって。
オー・マイ・ガッ!
父さんはベロベロに酔っ払っていて、たくさんの本を抱えてヨタヨタと
店から出ようとした。
当然、店員さんに止められると、「いや、出来た息子が倍、倍、倍、
支払ってくれるから大丈夫!」
って謎理論で店員さんを突破しようとして、通報、逮捕されたらしい。
家に帰って来てからも母親と莉子にこっぴどく叱られていた。
父さん、仕事、首になったりしないかな?
・・・みんなにバレたりしないよな。
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