21「空元気に決まってるでしょう」
彼女の執念が宿ったこの森の中心は、水際で枝を広げて立ち枯れている
お二人がまとう空気の変化を感じたのか森がざわめき始め、
わかってはいても、敵として認識されるのは心にくるものがある。それでも僕はこの現実をしっかり見届けて、記録しなければ。怯えてなどいられない。
そう決意したものの、全く鍛えていない動体視力で起きたことを正確に捉えることはできなかった。
至近距離で繰り広げられた戦いは息が止まりそうなほどの迫力で、時間にすればあっという間。なぜか執拗に僕を襲おうとする白い木の根を見事な連携で弾きながら、魔法で強化された
「二人とも大丈夫!? 怪我とかしてない?」
銀君も隣で銃をホルスターから抜いていざという時に備えてくれていたけど、出番なんてなかった。
「ありがとうございます、大丈夫です」
「良かった」
僕らの無事を確認したあと
迷い続け、心を失った魂がどうか解放されて、安らげますように。
そう心で祈ってはみたものの、僕はちゃんとした作法を知らないし、この世界で魂がどうなるのかも知らないでいる。だから……この祈りがどこへ届くのか、本当のことは何ひとつわからない。
きっと
僕ら四人ともしばらくの間そうしていたけど、やがて周囲に異変が起き始めたことに気づく。白く変質しながらも
彼女の魂と執念が維持し続けていた森は、核となる遺志が浄化されてもはや形を保つことができないのだろう。
急いでスマートフォンを取り出してエディターボードを開く。思った通り、編集画面に掛けられていたロックは解除されていた。これなら僕にもできることがありそうだ。
「さ、帰ろっか。っと、その前に、他にも囚われてる人がいないか確認したほうが良さそうだね。いったん引き返してボルテと合流したら、森のあった範囲を一巡して、遭難者がいれば保護。これでいいですかね、
「……お前は、元気だな。俺は今、身も心も空虚に満たされ、この世の諸行無常を噛み締めている」
「何言ってんですか、
まだぼんやりしている
本当なら僕らも龍都まで同行するのが、協力になるとは思う。銀君も魔狼になれるから、誰かを運ぶことはできるだろう……けど。僕にはすべきことが残っている。
隣の銀君に視線をやれば、彼も頷いてくれた。だから思い切って
「僕はここに残って、この『黒の森』を修復できるか試したいと思います。お二人は被害に遭われた方の救助を優先し、龍都に戻られてください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます