15「僕の思い過ごしかもしれないけど」
戻ってきた銀君とボルテさんの報告によると、暴走した森の範囲はおおよそ三キロメートル四方、自然公園くらいの広さらしい。森というには小さいけど、これが施設だと思えば頷ける。
中心部には泉があり、そこから湧き出た水が沢になって流れていた。動くものといえば
「何それ、中に何かいるってこと?」
『うむ、その可能性は高いぞ。私が救出した
いまだ目を覚まさない調査員を
もしかしたら他にも囚われた人がいるかもしれない――必然的な予想とはいえ、その想像は気分を重くさせる。森としては小規模でも、異常地点を一つ一つ探し当てて中を確認していくには範囲が広すぎるのだ。それに銀君や調査員の方の様子を思えば、囚われた人が無事でいる可能性はとても低い。
さっきまでとは打って変わって、重苦しい沈黙が張り詰めていた。時々、焚火の爆ぜる音が静かな空気を震わせる。そんな中、銀君が僕の側に来て隣に腰掛けた。
「こーやん、僕の思い過ごしかもしれないけど、この森……あまり邪悪な感じはしないんだよね」
「そうなの?」
まさか被害者の口からそんな考えが飛び出すなんて、思いがけないことだ。銀君は変質した植物に囚われていたと聞いたし、なかなか目を覚まさなくて心配だったけど、怖くなかったのかな。
「うん。なんて言ったらいいのかなー、必死さ? なんか、追い詰められたような意志が、あの蔦には込められていた気がする」
「蔦に、意志が? 何だろう、ここには風樹みたいに意思を持つ木があるのかな」
「可能性はあるよね」
少し前に立ち寄った人里では、里の守り神となった神樹の話を聞いたばかりだった。黒の森は、食料として肉……
もしも、黒の森が意思を持つようになり、
「森の中心部には、泉があったんだっけ」
「そそ、あと小さな
「きっとそこ、だね」
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