14「お前の親父殿わかっているな」


 怒られるか呆れられるかもしれない、とも覚悟を決めて、僕は自分のことをはじめから話すことにした。


 CWFけいふぁんがサービス終了したのは昨年九月末、その約半年後になる今年の四月に、悪魔を名乗る竜の神様と出会ったこと。彼に、ケイオスワールドが異世界として存在しており、ゆるやかに滅びへ向かっていると聞いて、ここへ来るのを決めたこと。

 目的は大きく二つ。こちら側の大切な家族に再会し、新たな神様をさがしながら壊れた世界を修復するというものだ。

 今はまだ世界の修復も神様さがしも手探りで、家族とも再会できていない。それでも僕は自分で選んでここに来たのだし、父もこのことを知っていて理解を示してくれている。お二人と比べればとてもぬるい状況だと思う。


 木花このはさんはメモを取りつつ真剣に聴いてくれて、時々質問もされた。

 鐘馗しょうきさんはその間ずっと刀の手入れをしていたけど、眉間のしわが深くなったり浅くなったりしていたので、僕の話にいろいろと思うところがあったんだろう。


「その神様……むしろ悪魔? 話だけ聞くとさんくさい気もするけど、現状見ると信じざるを得ないかぁ。事実は小説より奇なりって言うけど、まさかだねえ」

「僕も全然聞いたことのない神様なんですけど、力は確かなんです。ここに来る間にも、幾つか修復が成功した施設があって」


 そうだ、お二人ならこの画面に懐かしさを感じるかもしれない。スマートフォンを開いてホーム画面を開き、少し傾けて差し出すと、木花このはさんは目を見開いて歓声をあげた。


「うわめっちゃ懐かしい! そうそうスマホだとこんなUIだった。下のほうはその悪魔様オリジナルってこと? なるほどねえ。しかもこうくんのスマホ最新型だし!」

「父が……春から高校生だから新調しようって、僕はあまり詳しくないんです」

「ほう、お前の親父殿わかっているな。……最新型はいいぞ。音質も解像度も最高で、読み込みのラグもなく、何より操作性が快適だからスコアを稼ぎやすい」

「わかってる、ん、でしょうか?」


 お二人、特に鐘馗しょうきさんは、他のゲームでもやり込み系プレイヤーなのかな。どちらもすごく目を輝かせていて嬉しそうだ。

 想定外の現実に面して辛いことも大変なこともあるだろうに、それでも気持ちを腐らせたりせず精力的な活動をしているお二人は、とても眩しい。僕もそんなふうに前向きに頑張っていきたいと思う。


 そうしてボルテさんと銀君が戻るまで少しの間、僕ら三人は日本の懐かしい話題で盛り上がったのだった。

 



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