三
12「いい所を見せてやりたいのかも」
「僕より深いってことは、結構前から森に囚われてた可能性です?」
「そうだね。龍都の軍務長官によれば、異常が生じている報告が上がったのは一週間前。派遣された調査員が行方不明になったってんで、私らに相談が来てねえ。彼がここに来てすぐ事故ったとすれば、少なくとも三日は経ってるしちょっと心配かな」
銀君と
今は白く枯れ切った森だけど、ここは国家施設『黒の森』で間違いない。タイトル欄に記されたエリア名にそう書いてあるからだ。
スクロールし、いつものように説明文の文字化け具合を確かめようとして――初めて見る異常に僕は思わずフリーズしてしまった。
何これ、テキストボックスが開けない。編集機能にロックが掛かった読み取り専用状態なんだろうけど、どうやってアンロックできるのかもわからない。
「ご馳走様でした! じゃボルテ
『ぱいせん……とは何だ? 私はパイでも煎餅でもないぞ。畏敬の念を込めてボルテ様と呼ぶがいい』
すぐ耳元で聞こえるやり取りに、はっと我に返る。隣の銀君は貰った肉をとっくに食べ終えたらしく、いつの間にかボルテさんも近くに来ていて銀君と意気投合したようだ。
何かに気を取られると音も声も聞こえなくなるの、僕の悪い癖だよ……。
「うぃっす、それじゃボルテ様って呼びまっす」
『うむ。魔狼の
「はいはーい。ありがと、正直すごい助かる。ボルテも銀くんも気をつけてね」
ボルテさん、さっきまであんなに不満そうにしてたのに、
藍白と赤紫という対照的な色味のふたりが白く枯れた木々の向こうへ消えてゆくのを見送ってから、
「銀くんが魔狼だっていうのも驚いたけど、ああいうボルテも珍しいんだよ。相手が狼種の子供だからいい所を見せてやりたいのかもねえ」
「……調子に乗って、やり過ぎなければいいがな」
「そこは心配ないですよ。子供がいるからこそ無茶しないで退くでしょ、ボルテなら」
お二人はそう言葉を交わして目配せし合う。それから、
「……さて、洗いざらい吐いて貰おう」
「だーからっ、この後に及んで言い方ァ! もう
今さらお二人を怖いとは思わないけど、やっぱり緊張はする。
無表情で迫ろうとした
「お肉も美味しく食べて満足したし、そろそろお互い腹を割って話そうぜ、ってこと」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます