10「僕の胸で存分に泣くがいいよ」
驚くべきことをサラッと説明して、
そんな……だったらお二人の『体』は今、どういう状態なんだろう。ラノベにありがちな転生の切っ掛けを想像して胸がざわつく。想像し始めればどんどんと悪い方向へ思考してしまい、何を言ったら良いかもわからなくなって不自然な沈黙が落ちかけた、その時。
「えぇぇ、肉っ!? 肉の匂いがする!」
場違いに明るい声が気まずくなりかけた空気を吹き飛ばした。僕と
「銀君! 大丈夫!?」
「うーん、なんかすっげー恐ろしい目に
火明かりを受けてキラキラ輝く真紅の目が、
コミュ障で口下手は僕とはまるで対照的な懐っこさに、お二人は意外に思ったのかびっくりしたのか――顔を見合わせた。ややあって口を開いたのは
「眠りか麻痺系の毒にやられた感じだったから解毒剤を打ったんだけど、効いたみたいで良かったよ。気分はどう? 食欲があるならこっちで一緒に食べようか」
「うわーっ、やっぱりあれヤバい敵性植物だったんすね……。ありがとうございます、助かりました。こーやんのことも助けてくれてマジ感謝です。肉があるのもめっちゃ嬉しいです!」
「ちょっ、
銀君が両手を合わせて拝み出したので
「礼には及ばん。
「いやいや、普通に気持ちは受け取ってあげましょうよ」
そこに
良かった、お二人が仲直りしてくれて、銀君も怪我もなく目を覚ましてくれて。―あ、どうしよう、安心したら泣きそうになってきた。
「わわっ、こーやん大丈夫ー!? ごめんねー僕のこと心配したんでしょ!」
「……うぅ、銀君……良かったぁ」
「よしよし、もう大丈夫だからねー。僕の胸で存分に泣くがいいよ」
ぎゅっと抱きしめられて頭をわしゃわしゃと撫でられればますます涙は止まらなくなり、僕は言われるままに銀君の胸を借りてしばらく泣いてしまったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます