6「距離感おかしいですよ」
正論と正論がぶつかり合い、火花が散る。このお二人、どういう関係性なのかな。
任務の内容も携帯食の品目も知らない僕が口を挟むことではないし、そもそもそんなコミュ力はないので、息を潜めて見ない振りをするのが良さそう。
『携帯食など固いばかりで腹の足しにならんではないか。何、お前たちが食わぬのなら私が全部貰ってやろう。この
何かを言おうと口を開いた
さっき乗せてもらった時には子牛ほどの大きさだったのに、いつの間にかサイズダウンして今は大きめの猫くらいだ。それでも、胸を張って堂々と宣言する姿には威厳が漂っていて、狼らしい風格がある。
獲物を解体し調理の準備をして火をおこし焼いて……って手間が掛かるよね。任務だと言っていたし、他にすべきことや気に掛かっていることもあるんだろう。
「はいはい、わかりましたよ! もう、いつも
「あっ、僕も手伝います! 動物の捌き方は知らないですけどっ」
せめて助けられたお礼に何かできればと声を上げたら、
僕のケイオスワールドに関する知識はほとんど、プレイヤーとして持っていたものだ。
こちら側の記憶を夢に見ることがあっても特定の出来事に限られていて、『四十路の古書店主だった
話しているうちに少し思い出したのだけど、
販売履歴で良く名前を見たし、イーシィとも仲が良かった覚えがあるし、もしかしたら以前の僕とは直接交流があったかもしれない。
多少のランダム要素はあるにしても上位はほぼ固定のメンバーで、その中でも
そんな強い人ならあの大崩壊を生き延びていても不思議はない。ただ
枯れ木の固まりに引っ掛かっていた僕の姿は遠目からだとかなり痛々しく見えたようで、裾や袖を
不安な中で触れる人の優しさはとてもありがたい。とはいえ僕は一般人なので、世界級の著名人に助けられて気遣われ、食事の世話までされるのは
「顔色が優れないな、
「いえっ、それは、だ、大丈夫なんです! ちょっと、緊張してるだけで」
「ちょっと
隣に来た
なんかすみません、決してそういう心配をしていたわけではないんですけど、凄い美形が迫ってくるって一般人には刺激が強すぎますよね。
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