5「仕留めたから、肉を食えるぞ」
「いやーもう本当びっくりしちゃったよ。妙に規則性ある点滅だから誰かが助けを求めてんのかも、とは思ったけど、まさかモールス信号だなんて。大丈夫? 痛い所はない?」
あのあと僕は、駆けつけてくれた二人と青白い毛並みの狼さんによって迅速に救助された。
まず
その間、五分も掛からなかったと思う。
僕は本体ボルテさんの背に乗せられて地上へ運ばれたんだけど、
驚くほどの運動能力も身軽さも、その名前を聞けば不思議ではない。なんたって彼は
「ありがとうございます。はい、怪我は、してないので。僕より、銀君が心配です」
「あの子も見た感じ、怪我はしてないんだけどねえ。呼吸も安定しているし、もう少し様子見しようか」
「はい」
大丈夫大丈夫、と
もっとも僕も今は色変ありの銀髪と薄い青紫の目だから、ザ・ファンタジーな配色でも現地人ではない可能性はあるんだけど。
なんとなく、
僕のように現代日本から何らかの手段で転移してきたか、少なくとも向こうの知識を持っている可能性が高い。
銀君も動く木の根に襲われたらしく、
こういう場合に不自然を感じさせず話題を変えるって、上級者テクニックだよね。うう、僕にはハードルが高いよ……。
切っ掛けを求めるように視線をさまよわせていたら、枝を踏みしだく音が近づいてきて、折り重なる枯れ木を押しのけ背の高い男性が現れた―
「ボルテと一通り見回って来たが、今のところ問題なさそうだ。ついでに襲って来た妖獣を仕留めたから、肉を食えるぞ」
漆黒の髪に白っぽいコートという出立ちはスタイリッシュな大学生って雰囲気だけど、その下の白装束と勾玉の首飾り、頭の横に装着している白の狐面と
ワイルドな台詞とともに手甲を
「わァ……
「狩ったからには命をいただくのが礼儀だろう。それにこれは『ブラックガルム』といって、龍都の食堂にも
あれ、
わぁ、美人が凄むと迫力がある……。
「何でそんなに生き生きしてんですか! 私ら別にサバイバル体験ツアーでここに来てんじゃないですからね!? さっさと食べてさっさと寝て、早起きして調査! その任務をお忘れなきよう」
「そこに異論はないが、食事、睡眠、鍛錬、いずれかを欠けば万全とは言えず、事故も起こりやすくなる。それは俺だけではなくお前にも、陛下にとっても望ましくないことだが?」
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