第37話 旦那と嫁
〇■☆◆
しばらくすると、お
その中には婦警さんもいて、優しくだけどズバリ性行為の有無を聞いてきた、私は「ありません」と答えることが出来たのが、とても嬉しい。
もしも夫が助けに来てくれなかったら、私は今も地獄の責め苦を受けている最中だったんだ、そう考えると今の私はなんて幸せなんだと思う。
「夫が危ないところを助けに来てくれました」
私は婦警さんに、夫のことを最大限弁護しておこう、扉を壊したことを罪に問われないようにしてあげたい、夫は何も悪くないのにおかしいよ。
「頼りになる旦那さんですね」
へへっ、そりゃそうです、私のヒーローですからね、夫が褒められると自分が褒められるよりも楽しくなってしまうのは、なぜ。
「大切な嫁ですから、そりゃ無我夢中でした」
うわぁ、〈大切な嫁って〉私のことなんだ、たまんないよ、お巡りさんも婦警さんもいるのに、今直ぐ抱きしめてほしくなっちゃう。
それから私と夫は、バラバラにされて話を聞かれることになった。
夫と離れるのは嫌だけど、警察には逆らえないな。
婦警さんに私が色々聞かれている側で、夫が掃除のおばさんに、モップでバシバシと叩かれている、私をシーツで拭いてくれたことを責められているみたいだけど、私は助けることが出来なかった。
婦警さんに小声で「下手に止めると
〈クズ〉がお巡りさんに連れて行かれるのは、すっごく
刑務所に一生入っていれば良いんだ。
私はパトカーに乗せられて、まずは病院で診察を受けることになった。
後頭部と頬と肩は、レントゲンの結果でも大した怪我じゃ無かったが、頭を強く打っているため明日もう一度検査をすることとなった。
それから夫がいる警察署に連れてこられて、今日はもうアパートへ帰れるようだ、夫の顔を見られてホッとしたが、すごく疲れた顔をしている。
健康状態が心配だよ。
私は明日から本格的に事情聴取されるらしいけど、もう隠す必要は無いのだから、正直に全てを話すつもりだ。
他人である警察官に話すのだから、夫には
だけど今日はもう疲れたよ、ヘロヘロなんだ。
髪をシャワーで良く洗って、もう寝ましょうよ、〈あなた〉の胸に抱かれて眠ることが出来る幸福を
私を心配してくれているのだろう、夫がすごく早く会社から帰ってきてくれた。
私は意を決して、あったことの全てを話すことが出来た、最初は〈クズ〉に命令されて付き合い出したことも、隠さないで告白した、泣かないで言えたよ。
「〈美幸〉は辛い目に
うぅ、どうして〈あなた〉が謝るの、
だけどね。
許せないことを言ってくれたわ。
嫌々結婚したって、はぁー、どういう意味。
〈好きになって貰える努力〉〈夫婦でいさせてほしい〉、コイツは何をほざいているのかしら。
私は怒って良いはず。
だって、私の気持ちに何にも気づいていないってことよね。
夫婦なら恋人でもあったのだから、伝わるものがあったでしょう。
まさか何も無かったのと言うの。
「ひどい。 〈あなた〉はひどいよ」
私は涙を堪えられなくなってしまう、私の愛が〈あなた〉へ伝わってなかったから。
「そんなに俺はひどいのか。 努力をしてみるから、考えてくれよ」
「うぅ、努力なんていらないわ。 私がこんなに愛しているのに、どうして分からないの、ひどいよ」
私は〈あなた〉に対して本気で怒りを覚えてしまう、〈あなた〉があまりにも残酷な事を言うせいだ。
「えっ、嫌々じゃなかったのか」
「うぅ、最初はそうだったけど。 好きでもない男に口づけをされても、気持ち悪いだけで嬉しくなんかならないよ。 〈あなた〉は私を見てくれていなかったの」
さっきそう打ち明けたよね、聞いていなかったの。
ん-、ついさっきの事だから、さすがにそれはないはず。
この人は、私の口から〈愛している〉〈夫婦でいたい〉と、もしかしたら言わせたいのかしら。
私は〈あなた〉が相当孤独な人だと理解している。
家族とも一線を引いている感じだし、友達との話題を聞かされたこともない、仲の良い友人を持ってはいないのだろう。
仲が良い友人がいない点は、私と似ていると思う、だけど私は〈おばあちゃん〉に一線なんか引いていない、私は心から信頼出来る家族を持っている。
〈あなた〉はとても
なのに、どうして私と結婚したんだろう。
いくら孤独に強い人であっても、一人くらい信頼出来る人がほしかったんだと思う。
孤独とは、知らず知らずのうちに心が
私は〈あなた〉に救ってもらったのだから、かなりイラついたとしても、今度は私が〈あなた〉を救う番じゃないのかな。
決して裏切らない、信頼出来る女だと思ってもらえば良いんだ。
物語には出て来ないけど、ボロボロになったヒーローを、ヒロインが力強く支えていたんだと思う。
私は〈あなた〉を愛しているのだから、とても簡単なことでもある、もっと
自然に〈あなた〉が私の愛を感じとってくれるのを、諦めれば良いだけのこと。
少し寂しい気もするけど、割り切りましょう、そんなに差は無いはず。
「うーん、正直に言うとそんな気もしていたんだけど、自信が無かったんだ」
やっぱり分かっているくせに、聞いているんだわ。
何て疑い深い男なんでしょう、本気で嫌になるわ、だけどそれが〈あなた〉なのね。
「そんなのは女の私が聞くこと。 〈あなた〉は私を強く抱きしめて、口づけをすれば良いのよ」
こう言ったら満足なんでしょう、世話が焼けるよ、嬉しそうに笑うな。
「もぉ、笑いながら口づけをしないでよ。 〈あなた〉はヒーローで、私はヒロインなんだから、誠心誠意で真剣な愛なんだよ」
「えぇ、俺はヒーローなの」
「当たり前です。 私を絶望から救ってくれて、愛してもくれている、かけがえのない私の愛のヒーローよ。 死んでも離さないからね、覚悟しなさい」
もっと露骨に迫ったら良いんでしょう、私は〈あなた〉に色々と変えられてしまうわ。
待っているだけの
それも悪くないかも、私は〈あなた〉に愛されているのだから、もっと自信に溢れて生きて行こう。
これが私達夫婦の形になっていくのね、色々な夫婦がいると良く聞くけど、こう言うことなのかも知れないな。
うふふっ、〈あなた〉の膝に乗ってあげたわ、それで私をどうしてくれるの、今私は色々と不満をため込んでいるのよ、どうやって解消してくれるつもり。
そう思っていたけど、私は〈あなた〉の口づけで満たされていく、もっと強くもっと深くもっといやらしくしてよ、他のことはどうでも良いと感じてしまう。
まだ少し不満はあるけど、
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