ミステリー倶楽部

@kasterdcream

生ける屍の謎

さて

私たちミステリー倶楽部へようこそ

あなたには出題者が出す問題を推理してもらいます

なーに難しく考える必要はありません

だってよっぽど現実世界の方が複雑怪奇なものですから


俺は学学(がくまなぶ)。今思っただろ、なんか勉強できそうだなーって。まぁ実際はそんなことないんだが。とんだ名前にしてくれたもんだよ親も。この名前のせいで中学ではガクガクって呼ばれたっけ。まぁそんなこと高校の俺にはどうでもいいことだな。俺は今ミステリー倶楽部っていう部活に入ってる。うちの部は普通よくある文学部じゃなくて。ミステリーを考えてそれに対して部員が本気で推理をして相手を打ち負かすんだ。自分で言うのも何だがこの倶楽部は結構面白い。自分が出題者側になった時の緊張感は半端ないけど、逃げ切った時の優越感っと言ったらもう。

今日は自分が出題者だ。

ならあの話をしよう。


まだ自分がガクガクって呼ばれてたある日のこと。ある事件が学校で起こったんだ。詳細を話そう。俺は中学の頃は陸上部に所属していた。足が早かったって?とんでもない。まぁなんだ、運動部最強神話が中学の頃まで存在していたからな。その中でも足が早い奴ってのはクラスでも花形だったんだよ。まぁそうゆうわけでその波に飲まれた無惨な犠牲者ってことで属していたんだが、きついこともあったけどまぁ楽しかったよ。でも。顧問が女教師だったから、女子は大変だったらしいぜ。

それで事件だな。

ある日のこと。それは暑い夏だった。セミが鳴いているってより泣いているって表現が正しいくらいホットな夏だったよ。

俺の友達に田中大嬉(たなかだいき)ってやつがいてな。俺はダイキって呼んでたよ。あだ名のつけようがないからな。

あっそうそう。もうこの際、登場人物をまとめておこう。まずさっき言った陸上部長距離一年のダイキ、次に陸上部三年短距離の綾瀬虜香(あやせりょうか)それに陸上部一年の俺マナブ。主要な人物は三人だ。

で、陸上部では練習メニューがあって、毎日それをこなすんだ。ランニング校庭5周から始まり、持久走のやつなら20分走ったり、短距離のやつなら何度も100mとか200mとかの距離を全速力で走りきるって具合にね。

「そこ、田中。スピード上げて、ラストスパート!」

「はいっっっ。」

ダイキがもう燃え尽き寸前じゃねえか。まだまだだなと思いながらも

「はぁはぁ。あれ、なんか身体が重いぞ。めちゃしんどい。まぁほどほどの速さで走り切るか。」

それで、俺はやっとのことで午前の練習メニューを終えたのだった。

そして、部室に戻ると、部員が大勢集まっていた。

「いやーきつい。キツすぎる。なんて、暑さだ。やっぱり夏だねー。」

俺が部室の窓を全開に開けながらボソッと言った。

部室には練習を終えた運動部員がたくさん集まっていた。

「ほんとそうだよねー。暑くて溶けちゃいそうだよ。」

「こんな時はやっぱりこれでしょう。」

おもむろに、飲み物がたくさん入ったクーラーボックスの中からスポーツドリンクを取り出して言った。

「お前大丈夫かよ。今日でそれ3本目だぞ。」

「いいだろ。スポーツで失われた水分を最も的確に補給できるのがこのスポーツドリンクという飲み物だからな。」

「これ。お願い。」

マネージャーに頼んで、コップに氷を入れて注いでもらいながら、言った。

「まぁいいけどさー。」

俺たちはペットボトルし症候群が怖いからっと言って、マネージャーにコップに氷を入れて、水を注いでもらって飲んだ。

「で、どうする。午後?」

「私は午後も全力でやるかな。大会も近いしねー。」

「じゃあやるかー」と三人は一気に飲み干して、練習に参加しようとした。その時だ。

急にダイキとリョウカが部室で倒れたんだよ。しかも、同時にね。

で、俺ら部員は先生を呼ぶことになったかはら、一旦全員が部室から出たんだ。

そこで、事件は起こった。その約5分後に戻ってきたら死体が一つしかないんだよ。それで聞いてみたんだ。すると、

「マナブ?俺めっちゃしんどいんだけど。これってやばいやつか?助けてよ。えっ死体が無くなったって。そんなのしらないよ。俺もうだめ、なんだからさ。」


ここまでが俺が出す問題編だ。

「どうだ。消失死体。まぁ正確には死体とは言えないが。なんとも、ミステリーっぽい事件だろ?」

俺が意気揚々と問題を提示する。

「ふーん。そんな、三流六番煎じミステリーを持ってきたわけ?学くん?」

佐原美香(さはらみか)が悪戯っぽい笑みを浮かべて批評する。ただ、眼は俺を一点に突き刺しているのだ。めちゃ怖い。怖すぎる。

佐原は同じく高校一年でミステリー倶楽部の一員だ。佐原は黒髪のツインテールでぱっと見は誰もが認める美人であるのだが…

でも近づいた時の目が怖ろしい。瞳が黒いというより深い。目を見て話せば自分が吸い込まれるような、俺の思い浮かべていることが全部筒抜けになっているかのような錯覚に陥るんだ。いつも。まぁ気のせいだろう。そう思うことにする。

「で、何だって。何処が不満なんだよ。死体が消えるなんてミステリーの王道中の王道。アイスはバニラぐらい王道だろ。」

「ふーん。この私。佐原美香に解けない謎はないのよ。じゃあもう回答。仕事の早い探偵はいいね。出題者のほくそ笑む顔を見なくて済むから。では探偵佐原美香の鮮やかな回答といきましょう。

この問題の肝は殺害手段。ここで大事なのが死体が動いたという事実。ということは、首を切り落とすなどの検死を必要としない絶対的殺害方法ではないということ。ということは毒殺よね。後は簡単。問題文にスポーツドリンクと水2種類の飲み物がある。スポーツドリンクに毒が入っていた。それを貴方かリョウカか、第三者かが混入させてダイキを殺害した。まぁリョウカが殺害が本筋ね。どう?」

佐原が自信満々に人差し指を俺に近づけて、事件の解決宣言を出す。

だが、

「おっと。確かに飲み物に毒が入っていないとはいっていない。ただ、俺らの他に部活に来てるやつは何人もいた。そいつらの目を盗んで毒を入れることなんて可能か?あと、倒れたのはダイキとリョウカの二人だけ。他のやつは倒れてないんだぜ。死んだやつが飲み物を選んだんだよ。だとしたら、スポーツドリンク全部に毒が入ってたってことになる。でも、他のやつは倒れてない。これは圧倒的な矛盾だよ」

俺は勝ち誇ったかのように佐原に宣言してやった。お前の推理は

間違っていると。

「ふーん。じゃあ氷ね。氷に毒が入っていた。これならどうおかしくないでしょう。貴方方三人は氷を入れていたそうですから。」

「おっ。じゃあ俺はこう返すね。ダイキとリョウカは俺が見た限りほぼ同時に飲み物を飲んだ。飲み終わる時もね。だとしたら、氷に毒が入ってたとしたら二人とも毒で死んでしまうはずだよな。それはおかしいんじゃないの?」

俺は渾身の煽り顔を佐原に決めてやった。いいぞいいぞ。この勝負勝った。

「じゃあこんなのはどう? ペットボトルと氷は全てミスリード。ダイキは病死で、リョウカが窓から出ただけ。」

「ふむ。陸上部はそれまで激しいトレーニングをしていた。しかし、陸上部にとってはそれは普通のこと。しかも、俺が喋った時に特段、普段と違う様子はなかった。それでいて急に倒れるのは、問題として変だとは思わないか?」 

「じゃあじゃあ、やっぱり毒ね。マネージャーがあらかじめコップに毒を塗っておいたと推理するわ。」

「おっとそれは説明不足だな。コップは俺らがマネージャーが注ぐまで持っていた。つまり、マネージャーがこの事件の前に毒を塗ることは不可能だよ。」

「ふーん。学くんのくせに...」

「いや、それほどでも…あるかもな。」

俺は残り時間を示すタイマーが15分のことを確かめて、また一歩調子づいてこう言ってやった。

「いい探偵は負けを認めるのも早いんじゃないのか?投了してしまえよ、佐原?」

「まだまだっ。学くんなんかに負けてられないわ。でも、毒殺じゃないとしたらどうやって…

あっーもう。推理に熱くなってしまったわ。休憩がてらにアイスクリーム買ってきてよ。何でもいいからさ。」

「えぇー。めんどくせぇー。大体この学校にアイスなんて売ってたか? 流石に買いにはいかんぞ。」

「使えないわねぇ。全く。じゃあ作ってよ。いまから。牛乳とバニラエッセンスと卵とあと氷と塩さえあればできるでしょう。

「すいません。一刻も早くコンビニで買ってきます」

そうやって立ち去ろうとした時、佐原が何か目を輝かせながらこう言った。

「あっ。そいうことか。学くんのトリック、分かっちゃった。もう、アイスはいいわよ。」

それを聞いた時、俺の圧倒的自信が氷解していくのを感じていた。

「この問題はよくある氷トリックよ。でも、それだけじゃあ解けない。

そこで使うのが塩よ。ダイキが飲んだのがスポーツドリンク。これには、汗と同じような成分。つまり、塩が入っている。塩が入っているということは氷がよく溶けるのよね。融解熱ってやつよ。アイスクリームを作る時に氷に塩をするのと一緒ね。あれも、氷が溶けるのを早めて、より温度を下げている。で、推理に戻ると氷に毒が入っていてスポーツドリンクの効果で早く溶けた。つまり、毒が早く飲み物に溶け出した。一方でリョウカはただの水だったから氷がよく溶けずに、毒が溶け出さなかったってわけ。その後、このトリックで誤魔化したリョウカが窓とかから逃げ出した。これで、歩く死体の完成。

どう?あってるでしょう。」


「トリックは正解だ。ただ…」




今日のニュースの時間です。二年前の夏に起こった中学生毒殺事件の犯人が捕まりました。この事件では死体が消失したということで、世間では多くの注目を集めていましたが未解決のままでした。それが今回警察官の取り調べで犯行が発覚し、当時女子中学生だった田中大嬉氏が逮捕されたとのことです。

では、次のニュースです。

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