幼馴染の忘れ形見
さすがにゆうじの振る舞いが目に余りどうするかと言われ出した頃、ゆうじが手をだした女性が自ら命を絶った。
彼女は少し離れた街から村長の次男であるよしおの元に嫁いできたまつりさん。亡くなった彼女に同情する女性が多かった。更に亡くなった彼女に対するゆうじの仕打ちに今までゆうじを庇ってきていた女性達も庇いきれなくなった。
今まで好き勝手やってきたツケが回ってきたゆうじ。酒浸りになったゆうじはあっけなく死んだ。すでに妻のゆみは子供を置いて居なくなっている。どうやら行商人について村を出たらしい。
そして残されたのはゆうじとゆみの息子のいちた。ゆうじの父親が面倒を見ていたが、年には勝てず音を上げてあかりさんに泣きついてきた。
あかりさんは、少し迷ってたけるに相談してきた。二人して迷ったけど引き取ることにした。あかりさんの義理の娘の子供だし、もともとはこの家の子供だ。引取らない理由はない。
来たばかりのいちたは自分の殻に閉じこもっていた。大人たちを信頼していないようであかりさんともたけるとも必要最低限しか話さない。そんないちたを変えたのは長女のみかだった。
妊娠中の母親と仕事でいっぱいの父親の代わりに甘える相手と認識したようだ。
「にいに、あそぼ!」
いちたの後をついて回る。
心を閉ざしていたいちたも幼いみかを邪険にするのは気が引けたのだろう。いつの間にかみかを可愛がるようになっていた。みかの話をするようになると、たけるやあかりとも普通に話せるようになった。
あれから十数年。いちたは一人前になり、みかも幼さが残るもの大人の仲間入りした。みかはいつの間にかいちたをにいにと呼ばずにいちたさんと呼ぶようになっていた。
そんな二人が揃ってあかりさんとたけるの前に立っている。
「あっ、あの、俺たち……」
言葉に詰まるいちた。
「あのね、私達、結婚したいの。本当の兄妹じゃないから大丈夫でしょ?」
そう、二人の間には血のつながりはない。あかりさんとゆみは義理の親子だったし、もちろんたけるとも血のつながりはない。
「二人が決めたんだろ、決まってるよ、おめでとう、二人とも、しあわせになるんだぞ」
いちたは父親と母親の血を引いてるだけあってもてた。でも幼い頃からみか一筋だったらしい。もちろんみかも。二人の様子を見ていると自分の若い頃を思い出すたける。ようやくどこか引っかかっていた初恋が消えたような気がした。
幼なじみに告白するつもりで幼なじみのおかあさんに告白してしまったのは黒歴史です 山田ジギタリス @x6910bm
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