年越し

「準備終わったぞ、あとは鐘を待つだけだ。」

かまどの掃除をしていたたけるから呼ばれる。台所に行くときれいになったかまどの中に新しい薪が用意されてた。

「お疲れさまでした。今年も終わりですね。」


 この辺りでは、年末にはかまどの日を落とし男衆がきれいにする。新年の鐘の音を聞いて新しい火をおこしてかまどの神様を迎える。


 一番下の娘が嫁に行って久しぶりで二人きりの年末、いや、結婚して最初の年末はもう子供が居たな。


 あの頃、私は前の夫に先立たれ義理の娘も村を出ていき一人になってしまった。そんな私を気にかけ支えてくれたのが隣の家のたけるだった。最初は義理の娘の幼馴染で息子みたい見ていたけど、寂しさにも負けて体を許しそのまま流されるように結ばれた。周りの後押しもあった。年が離れた姉さん女房をたけるは大切にしてくれた。そして、3人も子供を授かった。その子供たちも嫁に行き家には二人きり。


「さぁ、火がついたぞ。」

かまどの新しい火がつくのをじっとみてるとたけるがぽんぽんっとお尻を叩いて立ち上がる。

壺に火種を入れて寝室に持っていく。外の雪は止んだけど今夜も冷えそうだ。


「あいつら、どうしてるかなぁ。」

 去年嫁いだ末の娘は春には母親になる。上の娘たちの子も含めると、もう、4人目の孫だ。


「ことしもよ……」

 最後まで言わせてもらう前にくちずけをされる。もう、待ちきれないようだ。

「もう、おとうちゃん、もう少し落ち着いて。子供みたいよ」

 ちょっと怒ってもたけるは気にもしない。そのまま手を胸元に差し込んでくる。

「わかったから、準備したらおふとん行きましょ」


寝室はいい具合に温まっていた。

贅沢にも部屋中を暖めるのは、この後の準備のため。

たけるにはあきれたように言ったけど、期待しているのは私も同じ。

たけるは、末娘が嫁いで二人きりになるとすぐに私を母から女にもどそうとした、いや、もどした。

若いころのようにはいかないけれど、休みの前など腰が立たなくなるまでかわいがられた。


布団の上で互いに向き合い正座する。

「「今年もよろしくお願いします」」

おじぎをして起きあがると待ちきれないたけるが口づけをしてくる。


 私の方ががまんできなくなってたけるのくびに手をまわしキスをする。


 たけるはびっくりして目を見開いてる。そうね、いつも私が受け入れる方だったからわたしからこんなことすることはなかった。

たけるはおとなしく私にされるがまま。


 一戦終わると次はたけるの番。

そのままいつものようにせめられてなんども許してって言っても許してくれなくて、正月早々起きれなかった。


 新年のあいさつに来た娘達が私の惨状を見てたけるを床に正座させてお説教してくれた。そのそばで心配そうにしている娘の旦那たち。


 あとで娘の旦那たちがたけるに、

「仲がいいのはいいけど、ほどほどにしてくださいね、今夜とばっちりが来るから」

とぐちってるのを聞いて心の中で、

『ごめん、がんばれ!』

ってあやまった。


今年も良い年になりますように。

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