通知の呪縛
カフェで仕事をしているヒトがいた。
周囲には、ノートパソコンを開いて作業をする若者たちがたくさんいる。
しかし、そのヒトの視線は何度も小さな画面に奪われていた。
新しいメッセージが届いたかもしれない、誰かが自分の投稿に反応してくれたかもしれない。
そんな期待と不安が心を掻き立てる。
通知音が鳴るたびに、心臓がドキドキする。
仕事に集中できないのは分かっていた。
それでも、画面から目を離せない。
まるで、画面に吸い寄せられているようだ。
最近、同僚との会話が減ったことに気づいていた。
以前は、ランチタイムに一緒に食事をしたり、仕事終わりに飲みに行ったりするのが楽しみだった。
しかし、今は画面ばかり見ていて、会話が続かない。
「君、いつも画面を見てるね」
同僚の言葉が、心に突き刺さった。
うつむき加減に「ごめん」と呟いた。
その夜、ベッドに横になり、天井を見上げた。
画面の輝きが目に焼き付いて離れない。
通知音が、耳元で鳴り響いているような気がした。
「もう、こんな生活、嫌だ」
決意を固め、画面の電源を切った。
しばらくの間、静寂が部屋に広がった。
最初は落ち着かなかった。
しかし、時間とともに、心の余裕が生まれてきた。
次の日、会社に行くと、同僚たちが笑顔で話しかけてきた。
久しぶりに心から会話を楽しむことができた。
画面を手放すことで、失っていた大切なものを取り戻した気がした。
それは、人間関係であったり、現実世界で起こっている出来事への関心であったり、そして、自分自身との対話であったりする。
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