第45話
驚いて足を止めてしまったとき、バンッと大きな音がして続いて足音が聞こえてきました。
光を背にしてこちらへ向かってくる人の手にはなにか四角いものが持たれています。
「正樹?」
光のせいで顔は見えないけれど、あれだけ毎日顔を突き合わせていた相手なので、すぐに正樹だと気が付きました。
さっきのバンッという音は、車のドアの開閉音で、光は車のヘッドライトだったのです。
「少し遠ざかって!」
正樹に言われて私はすぐに穂波を連れて後方へと走ります。
正樹が持っているアレがなんなのか、すぐにわかりました。
正樹はついに完成させていたのです。
本物の爆弾を。
「おい、お前ら!!」
その時です。
私達の右手から3人の男たちがやってきました。
私と穂波を捕まえに来た人たちです。
私は穂波の体を抱き寄せてその場にしゃがみこみました。
大きな衝撃に備えてフェンスから目をそむけ、両耳を塞ぎます。
もちろん、穂波にもそう言いました。
そして男たちが私に手を伸ばした瞬間でした。
ドォン!!
今まで聞いたことのない激しい爆発音と、目がくらむような眩しさを感じました。
爆発の光を直視してしまった男たちがその場にうずくまり「うぅ」と苦しそうに呻きます。
もしかしたら失明しているかもしれません。
それくらいの光でしたから。
まだ煙がモクモクと上がっている中に私と穂波は走りました。
フェンスの下には大きな穴が開いていて、そこに見を滑り込ませてフェンスの外へと逃げ出します。
「早く乗って!」
運転席にいたのは正樹のお父さんでした。
私と穂波は後部座席に。
正樹は助手席に乗り込んですぐに車は出発しました。
はぁはぁと荒い呼吸を繰り返している間に、施設はどんどん遠ざかっていきます。
途中まで追いかけてきていた関係者たちも途中で諦めたのか、姿が見えなくなりました。
「どうして場所がわかったの?」
後部座席から正樹へ質問すると「キッズスマホ。ギリギリまで持ってただろ? 位置情報がこのあたりで止まってたから調べてみたら、この先には鉱山があるってわかったんだ。きっと、そこにいると思ってた」
鉱山。
私達が働いていたのは、そう呼ばれる場所だったそうです。
まだまだ聞きたいこと、話したいことは沢山ありましたけれど、もう体力の限界でした。
私はそのまま眠ってしまったのです。
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