第41話

その上にいる人達はみんな痩せこけていて、目だけが大きくギョロギョロとしています。

ここにいる人たちはみんな病気なんだと、すぐにわかりました。


顔色が悪かったり、苦しそうにうめいているのがその証拠です。

考えたくないことでしたが、もしかしたらここに穂波がいるかもしれないという考えがぬぐいきれませんでした。


ただの腹痛とかケガではなく、もう治る見込みのない病気やケガを抱えた子たちが、ここに押し込められているんじゃないかと思ったからです。

穂波は治療すればちゃんと動けますが、それでもあの過酷な仕事ができるとは思えません。


この場所で穂波はやくたたずだったのかも。

地上にいたとき『人間的評価』で悪い点数を取ってここへ送られてきた穂波が、ここでもまた役たたずと認定されたらどうなるのか……。


そんなことを考えながら部屋に足を踏み入れました。

臭いが更にきつくなりましたが、鼻をつまむのは我慢しました。

そんなことをするのはこの人たちに失礼だからです。


人と人の隙間を縫うようにしてそっと部屋の奥へと向かいます。

どこからか換気扇の回る音が聞こえてきますけれど、それでもこの淀んだ空気は奥へ行くほどに強くなっていくようです。


とうとう一番奥へとたどり着いたとき、誰かに足首を掴まれました。

とても冷たくて枝のように細い手に驚いて思わず振り払います。

見ると細い息を繰り返している男の子だということがわかりました。


年齢はきっと私よりも下。

細くて骨と皮だけになった体なので、本当の年齢はわかりません。

「水……」

男の子が呻くように言います。


部屋の中を見回してみても水はどこにもありません。

「ごめんね。ここにはないみたい」

私はそう返事をするとすぐにその場を後にしました。

可愛そうな気もしましたけれど、かまっている時間もありません。


いつ、先生の意識が戻るかわからないからです。

私はまた穂波を探し始めました。

今度は小さな声で「穂波、いるの? 返事をして」と声をかけながら探します。


すると部屋の中央付近でひとりの女の子が上半身を起こしました。

髪の毛はボサボサで痩せ細り、電球の光を真上から浴びているので顔は陰で見えません。


「穂波?」

近づいていくとその子の目に光が宿ったのがわかりました。

「その声……瑞希?」

「穂波!!」


そうです。

私達はこの地下施設で奇跡的に再開することが叶ったんです。

私は普段よりも細くなった穂波の体を抱きしめました。

折れそうに細いし、何週間もお風呂に入っていないせいか臭いもキツイです。


だけど穂波で間違いありませんでした。

穂波がボロボロと涙を流すと頬の汚れが流れて肌色が見えてきました。


透き通るように綺麗だった穂波の肌はガサガサに乾燥して、まるでおばあちゃんのようです。


それを見て私も泣いてしまいました。

「でもどうしてここに? 瑞希が来るような場所じゃないのに」


ふたりでひとしきり泣いた後、穂波がそう聞いてきたので私はこの夏休み中の出来事を説明しました。

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