第36話

そうすることで砂おにぎりができるのを少しでも妨げたんです。

だけどそんなことをしている私を見てひとりが大きな声で笑いました。


「あんた。砂や土がつくのを気にしてるの? こんなところでそんなこと気にしても、意味ないよ」

そうやって佳苗ちゃん以外の全員が笑い出したのでさすがに腹が立って、黙り込みました。


「ここではね、顔を洗ったりお風呂に入ったりすることも稀なんやで。やから、みんなこんなに汚れて、日焼けしても、なにもでけへんねん。それが普通やねん」


こんなに汗だくなのにお風呂に入れないとわかり頭の中が真っ白になってしまいました。

だって、そんなのひどすきです。


作業服が臭いと思っていたけれど、これからは自分自身が臭くなっていく番なんですから。

呆然としていると今度は仕事開始のブザーがなり始めました。


私は慌てて缶のお茶を飲み干して、佳苗ちゃんと共に仕事に戻りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る