第35話

私達は途中で分岐した穴の方へ進んだので、わからずじまいです。

分岐した穴を進んでいくと、今度は斜め上へと穴が続いていました。

足元には線路のようなものが引かれていて、木製の今にも壊れてしまいそうなトロッコもありました。


あれに石や砂を積んで、ここまで運ぶということがわかります。

私達は上へ上へと進んでいき、最終的に外へ出てしまいました。

突然の太陽光にビックリして目がチカチカします。


思わず手を伸ばして佳苗ちゃんの腕を掴みました。

「大丈夫?」

佳苗ちゃんが優しく声をかけてくれて、目もすぐに慣れてひとまずホッとしました。


外だと思っていたそこはまだ地中で、だけど真上の穴から太陽光が差し込んできていることに気が付きました。

「石や砂を外まで運ぶんじゃないの?」


「私達が運び出すのはここまでやよ。その後はまた別の班がやることなんよ」

そう言われて周囲を見回してみると、他にも同じように作業しているグループがあちこちにあることに気が付きました。


私達が通ってきた通路だけでなく、道はあちこちに掘られていたようです。

「こんなに人が地下に暮らしてたら、穴ぼこだらけにならない?」

不安に感じたことをそのまま質問すれば、佳苗ちゃんは肩をすくめて「だから私達が作業してるんよ」と、言ったのでした。


作業内容は事前に聞いていたとおりでした。

今自分たちが登ってきた場所から土を上へ上へと出していく作業が永遠と続きます。


佳苗ちゃんが言っていたとおり滑車がついているのですが、一度の持ち上げる量が何十キロにもなるので、みんなで力をあわせてロープを引っ張らないと、びくともしません。


「ちょっとあんた、ちゃんとやってよ!」

「ご、ごめんなさい」

力仕事をなんてした経験のない私は他の部屋の子たちに散々文句を言われて泣きそうになってしまいました。


それでもどうにか午前中の仕事を終えて、お昼休憩の時間になりました。

鋭いブザー音が穴の中に響くと同時にみんな一斉に手を休めます。

このときに休んで置かないと、後は夜まで休みがないからです。


「ほら、引っ張って」

佳苗ちゃんに言われて縦の穴を確認してみると、下に石や砂ではなくカゴがひっかけられていることに気が付きました。


佳苗ちゃんと一緒に引っ張り上げてみると、そこには大きなおにぎりとお茶の缶が人数分入っていました。

だけどハンカチとかティッシュとか、お尻の下にひくレジャーシートは見当たりません。


ひとりで戸惑っていると、みんな気にする様子もなく地べたに座ってラップで来るんであるおにぎりを食べ始めました。

「どうしたん? 食べへんの?」


「え、いや……」

「ほら、ここ座って」

佳苗ちゃんが隣の地面をポンッと叩くと、砂埃がブワッと舞い上がります。


みんなこんなところでおにぎりを食べたらジャリジャリの砂まみれになるのに。

そう思いながらも佳苗ちゃんの横に座り、そっとおむすびのラップを外しました。

両手が汚れているので、下半分のラップはつけたまま、できるだけ素早くひとくちかじって、すぐにラップをかけなおしました。

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