第34話

☆☆☆


「瑞希、そろそろ起きや」

肩を揺さぶられて薄めを開けると毛むくじゃらの女の子がこちらを見ていて悲鳴を上げそうになってしまいました。


そしてその子がすぐに昨日出会った佳苗ちゃんだと思い出し、ホッと胸をなでおろしました。

「起きて、布団をたたむんや」

私は佳苗ちゃんに言われたとおりせんべい布団を畳んで、重ねておきました。


そうしているとドアがノックされて、見たことのない女の人が入ってきました。

手には銀色のお盆が持たれています。

それは学校の給食に出てくるそれと似たような朝食でした。


ふくよかな体つきをした女性は二人分のお盆を床に直接置くと、なにも言わずに部屋を出ていきました。

「さ、食べよ食べよ」

佳苗ちゃんがお盆にのせられた食パンにかじりつきます。


思えば私は昨日の朝からなにも食べていませんでしたから、すぐに同じようにパンにかぶりつきました。

パンはパサパサしており、なんの味もついていなくて美味しくはありまあせんでしたけれど、あっという間に平らげてしまいました。


パンの他にお盆に乗っているのは牛乳だけです。

朝ごはんがたったこれだけ?

そう思いましたけれど、佳苗ちゃんがちゃんとごちそうさまをしているのを見て、黙っておきました。


それからしばらくするとさっきの女性がお盆を回収して、代わりに服を持ってきました。

広げてみると上から下までがつながった作業服でした。

こういう服を着るのははじめてなのでちょっとだけドキドキしました。


でも着てみるとあちこちほつれていて、穴が開きそうだったり汚れていたり、汗の臭いが染み付いていて顔をしかめてしまいました。

「ははっ。臭いやろ? あの人たち洗濯もせんとお下がりの作業服持ってくるんや」


これはお下がりだったのかと少々落胆していると、すぐに昨日の女性が部屋をノックしてドアを開けてきました。

私達の準備が整っているのを確認して「外へ」と、合図してきます。


まずは佳苗ちゃんが部屋を出て、その後を私が続きます。

部屋の外はふたりが並んで通れるだけの通路になっていて、ここも薄暗い裸電球がぶら下がっているだけでした。

どこからか、換気扇がまわるカラカラという音が聞こえてきます。


部屋は他に5部屋あるようで、中から同じような薄汚れた作業服を着た子たちがゾロゾロと出てきて、合計10人での大移動となりました。

私は密かにその中に穂波がいないか探しましたけれど、いませんでした。


10人で女性の後に続いて階段を下っていくと急に土臭い臭いが鼻を刺激しました。

なにかと持って身を乗り出して見てみると、階段を下りきった廊下の奥が突如土壁になっていたのです。

その洞窟のような通路はまだ奥へと続いているようです。


「これから何をするの?」

「仕事やで。でも今は静かに」

佳苗ちゃんはそう言って人差し指を立ててしーっと合図してきました。


仕方なく黙って歩いていくと洞窟へ入る前に長靴に履き替えさせられました。

それから各自懐中電灯を持たされ、女性は頭にヘッドライトをつけて歩き進みます。


すると奥へ行くほど空間が広くなってきて、カンカンと石を削り出す音が聞こえてきました。

あれが作業班Aの仕事場だったのでしょうか。

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