第30話
☆☆☆
昼間の公園に来るのは初めてで、ちょっと不思議な気分でした。
ブランコや滑り台で遊んでみても昔ほどの楽しさは感じられませんが、それでも乗ってみたいという気持ちになりました。
たぶん、何も知らなかった頃の自分に戻りたかったのかもしれません。
しばらくひとりで遊んでいると、公園の外を人が通り過ぎて行きました。
外は大通りになっていますから、人通りがあるのは普通のことです。
だけどその人の歩みはやけにゆっくりで、そしてこちらを気にしているように見えました。
ベンチに赤いランドセルを置いてあったので、小学生が昼間に公園で遊んでいることを咎められるかもしれないと思いました。
でも、それならそれでいい。
また大人に反発して、問題を起こせばいい。
そう思っていたのですが、その人物はなにも言わずに遠ざかっていったのでした。
そういえば、その人物が男か女か、私にはわかりませんでした。
深く帽子をかぶり、大きなマスクをつけていたからです。
目元だけ見ると女性のようだけれど、身長はとても高かったし、体格もガッシリとしていたから、男だったかもしれません。
そんなことがあった、数時間後のことです。
学校が終わって子どもたちが公園に集まり始めた時間に、私はカバンをもって公園を出ました。
今日はもうこのまま帰ろう。
そう思っていつもの通学路を歩いていたときのことです。
後ろから車が近づいてきたのでできるだけ横へよけたのですが、その車がどんどん歩道へと近づいてきたんです。
おかしいなと思って立ち止まった瞬間、スピードを落とした車の後部座席から誰かが出てきました。
それが公園の外を歩いていた人物だと気がついたときにはもう目の前にいて、声を出すこともできずに車の中へと引きずり込まれていました。
その人の手の中で暴れて抵抗しましたけれど、ほとんど意味はありませんでした。
私は腕になにかを注射されて、その後すぐに深い眠りに落ちてしまったのです。
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