第28話

☆☆☆


時々、悪い自分に疲れてくると公園に向かいます。

もう誰もいない5時を過ぎた時間に行って、ひとりでベンチに座って風にあたります。


そうするとだんだん、本来の自分に戻っていくような気がします。

でも時々怖くなることもあります。

悪い自分を演じているはずなのに、それが本当の自分の姿なのではないかと思う瞬間があるからです。


誰かに意地悪をしたとき、誰かを怒鳴った時、心の中にスッとしている部分が確かにあることです。

ある時それがたまらなく怖くなりました。


「ねぇ、私って本当に悪い子になっちゃったのかな?」

公園のベンチで震えながら正樹に質問しました。

正樹はこの日も爆弾を持ってきていて、せっせと爆発の準備をしています。


最近、爆弾を作る頻度、実験する頻度が上がってきているようです。

「誰だって悪い部分はあるよ。だから別に悪い子になったわけじゃないと思うけど?」


「そうかな?」

それでも怖くて、ボロボロと涙が出てきてしまいました。

傷つけてきた友達の顔。


困らせてきた先生やお父さんお母さんの顔が離れません。

「そうやって泣けるってことは、瑞希はまだいいやつってことだな」

正樹がベンチに戻ってきてそう言いました。


今回の爆弾はどうやら不発に終わったみたいです。

正樹にありがとうと言いたかったけれど、言えませんでした。

涙が次々に出てきて、しゃくりあげることしかできなかったからです。


☆☆☆


どれだけ胸が痛くても続けなければいけません。

中途半端でやめてしまえば穂波に会えないどころか、私は友達も信用もすべてを失ったままになってしまいます。


ただひとりだけ、正樹という理解者がいてくれたおかげで頑張れました。

「キッズスマホを絶対に手放すなよ?」


ある日、珍しく教室で話しかけてきた正樹が、不意にそんなことを言いました。

「え?」

「なんだか、胸騒ぎがするから」


そう言われて私は素直に頷きました。

キッズスマホはもちろん肌見放さず持っています。


最近は友達と連絡を取り合うことがなくなってきたので、あまり活躍の場はありませんが、正樹がそう言うのであればちゃんと持ち歩こうと思いました。

そして正樹の胸騒ぎはそれから一週間ほどしたとき、的中しました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る