第19話 炙り出す

大輔くんのお母さんに会ったことは誰にも言っていません。

怖くて怖くて仕方なくて、誰かに言いたい気持ちはありましたけれど、正樹と秘密にしておくことを約束したからです。


だから、ここで初めて言ったんです。

お願いします。

大輔くんのお母さんを助けてあげてください。

そんなことがあった翌日のことです。


私と正樹はまた私の家で待ち合わせをしました。

今度も冷たい飲み物を準備して、部屋も冷やしておきましたけれど、前回みたいな胸のドキドキはありませんでした。


2度目だから慣れたわけではありません。

大輔くんのお母さんのことを思い出すと、自然と暗い気持ちになってしまったからです。

最後に私はリビングのテーブルに自分の成績表を起きました。


それは1年生の頃からもらってきた成績表です。

昨日の大輔くんのお母さんの言葉がどうしても頭から離れなかったので、ちゃんと性s起票を確認してみようということになったんです。


大輔くんのお母さんは最後はあんな風になってしまって怖かったけれど、あれはきっとヒントだったんです。

私と正樹も評価されている。


だとすればそれはやっぱり成績表のことでしょう。

私達小学生は成績表がすべての評価の結果です。

それが数字で表現されているか、『よい』『ふつう』『悪い』の日本語になっているかの違いだけ。


試しに自分の成績表を開いて確認してみましたけれど、やっぱり右側の欄に『人間的評価』なんて文字は見当たりません。

どうしていなくなった子たちだけに現れていたんでしょうか。


しかも評価はみんなマイナス100。

○○小学校の成績表で一番悪い数字は『1』ですから、『マイナス100』なんて数字はもちろんありません。


ひとりで考えてもわからないことだらけです。

そのタイミングで正樹が来てくれたのは本当によかったです。

正樹も自分の成績表を持ってきていて、ふたりしてリビングで成績表とにらめっこの時間が始まりました。


「別に、なにも書かれてないよな?」

「うん。書かれてない」

「だけどあいつらの成績表には書かれてた」


「うん。書かれてた」

そんな、成果のない会話を20分ほど続けたときでしょうか、ふいに夏休みの読書感想文を書くために読んだ本の内容を思い出していました。

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