第14話
するとズラリと勇くんについての情報が出てきたので驚きました。
個人情報がこんなにも沢山、しかも簡単に見られるようになっている場所があるなんて、知りませんでした。
「ねぇ、このページはなに? 大丈夫なの?」
「うん。あまり大丈夫じゃないかな。少なくても俺たちが見るようなところじゃない。だけどこういう場所には事件や事故の被害者や加害者の名前やプライベートな情報が乗ってるんだ。爆弾の作り方も、こういうところで調べてる」
その説明になんだか正樹がとても悪い子に見えてきました。
こんな危なそうなサイトを知っているなんて普通じゃありません。
だけど今はそんなことを言っている場合でもありません。
一刻でも早く穂波を見つけ出してあげたいので、こういうサイトも頼るしかなかったんです。
大人なら、わかってくれますよね?
それから危ないサイトで吉岡勇くんの住所を調べてみると、図書館から近いことがわかりました。
私達はみんな〇〇小学校の学区内に住んでいるので、移動が少ないのは救いです。
「よし、じゃあ行くか」
パソコンの使用時間の1時間を十分に残した状態で私達は図書館を後にしました。
☆☆☆
図書館から出ると少し雨が降っていたので私達は大急ぎで自転車をこいで吉岡勇くんの家へと向かいました。
この家は小高い丘の上にあって、上がり切る頃には雨は強くなり、背中は汗だくになっていました。
車が3台置けるカーポートには白い車が1台だけ停まっていて、庭には綺麗な花が咲いていました。
私と正樹はカーポートの中に一旦非難して、雨が小ぶりになるのを待つことにしました。
「すごい雨だね」
さっきまで晴れていた空は灰色に曇り、分厚い雲が頭上を覆っています。
けれど少し遠くへ目をやると晴れ間が覗いているので、きっとすぐに雨はやむはずです。
「昨日の夜も雷すごかったもんなぁ」
正樹が言う通り、昨日の夜は急に雷と雨が降り始めてお風呂やトイレに行くのが怖かったんです。
夏はどうしてこんなにコロコロと天気が変わるのか、もっと小さい頃にお母さんに質問したことがあります。
お母さんは『夏は雲の上にいる天気の神様が元気になる季節なのよ。だから晴れてみたり、雨を振らせてみたり、雷を落としてみたり、忙しいの』と、教えてくれました。
もちろん今ではそんなことはないとわかっていますけれど、まだしょっと信じている部分はあります。
だって、そう考えたほうが愉快になれるから。
このときも私は雲の上にいる神様が喜んでいる様子を思い浮かべていました。
そうすることで少しだけ気分が晴れてきました。
「小ぶりになったな。行ってみるか」
なんと。
私の心が少し晴れた時、空も少し晴れ間が覗いてきたのです。
この偶然を偶然で終わらせることはもったいなくて、私は自分の気持ちが神様に通じたのだと思うことにしました。
それからふたりで玄関へ向かい、まずは表札を確認しました。
日吉大輔くんの家のように荒れた様子はありませんでしたけれど、もし別の人の家になっていたら迷惑をかけてしまうからです。
玄関先の表札にはちゃんと『吉岡』という名前が出ていてひとまず安心です。
雨に濡れながらここまでやってきたかいがありました。
私はハンカチを取り出して服の水滴を拭き取りました。
ツバの大きな帽子のおかげで頭はほとんど濡れていません。
ハンカチと正樹にも貸してあげて、ようやく玄関チャイムを鳴らしました。
あまり待つこともなく、中から「はぁい」と声が聞こえてきて白いエプロンをつけた女性が出てきました。
「はじめまして。俺たち○○小学校の生徒です」
正樹が少し緊張気味に背筋を伸ばして言いました。
それもそのはず、出てきた女性はとても綺麗でスタイルがよく、透き通るような肌をしていました。
「あの、大輔くんのお姉さんですか?」
正樹の後ろからそう聞くと、女性は大きく目を見開いてそれから「いいえ。母親よ」と、優しく答えてくれました。
まさか大輔くんのお母さんだとは思っていなかったので驚きました。
だって、とても若くて綺麗だから、年の離れたお姉さんかと思ったんです。
大輔くんのお母さんは驚いている私達を見てクスクス笑い、それから玄関へとあげてくれました。
「なんの用事か知らないけれどブズ濡れじゃない。タオルを出してあげるから、少し待ってて」
そう言って玄関先で待たされている間、綺麗な女性は奥へと引っ込んで行きました。
「すごく美人だね」
正樹に耳打ちをすると、正樹は耳まで真っ赤になっていました。
きっと、好みのタイプだったんじゃないかなって思います。
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