第12話 空き家
『人間的評価』がマイナス100になった男子生徒の名前は日吉大輔くん。
いなくなった当時は小学4年生で、生きていれば小学5年生になっている男の子です。
日吉くんは小学校3年生のころから徐々に学校に来なくなり、4年生に上がってからはほとんど登校していなかったようです。
原因は……まぁ、ここでは話すのをやめておきます。
日吉くん本人から許可を取って話をしているわけでもないですし。
だけど日吉くんはテストのときだけは保健室登校をしてきていたようで、その度に毎回100点近い点数を取っていたそうです。
保健室の先生とは仲が良くて、両親が家庭教師を雇ってくれた。
という話も聞いていたみたいです。
それで毎回100点を叩き出せるなんて聞いたら、私も学校に行かずに家庭教師に勉強を習いたいと思いますけれど、きっと私の場合は成績が落ちていくと思います。
日吉くんは真面目だから家の勉強だけてやっていけていたんです。
そんな真面目が日吉くんがどうしていなくなってしまったのか調べるために、また後日私と正樹は合流しました。
この日の最高気温は33度と、少しマシな日でした。
こういう日を狙わないと、とても外を動き回ることはできません。
それでも私達は唾の大きな帽子をかぶり、自転車のカゴに氷りの飲み物を準備していました。
「この辺だよな?」
前回神田くんから聞いた日吉くんの家は、学校から自転車で5分ほどの場所にあるはずです。
だけどその付近にはあまり民家がなく田んぼが広がっています。
「あれじゃないかな?」
田んぼの中にポツンと建っている平屋を見つけて私は指差しました。
そこくらいしか家らしいものは見当たりませんでした。
私と正樹は細い道をふらつきながら自転車を走らせてその家に近づきました。
玄関前にある小さな庭は草が映え放題で、足を踏み入れるとヘビでも出てきそうな雰囲気があります。
門の前で自転車を置いて表札を確認してみても、そこにはなにも出ていませんでした。
それでも以前は誰かが暮らしていたようで、表札がかかっていた名残だけはありました。
「さすがに誰も住んでなさそうだね」
庭には踏み入らずに家の雰囲気でそう言いました。
窓の奥にはカーテンがかけられていましたが、誰かが暮らしていればこの庭の草は放置されていないはずです。
日吉くんの両親がいれば話を聞くことができると思っていたから、落胆は大きかったです。
ぼーっと空き家の前に佇んでいるわけにもいかないので帰ろうとした、その時でした。
「どうかしたの?」
田んぼに出てきた60代くらいの女性がそう声をかけてくれました。
いかにも農作業ができそうな格好をしたその人が近づいてきたので「あの、この家の人を知りませんか?」と、正樹が質問しました。
すると女性は目を細めて「前は日吉さんって家族が3人で暮らしていたよ。だけど1年くらい前に引っ越して空き家になってるの」と、教えてくれた。
神田くんの情報は正しかったんです。
「その人達が今どこにいるのか知りませんか?」
私が質問すると女性は左右に首を振って「わからないわ。ご近所に挨拶もなく出ていったみたいで……」そういった女性が不意に視線を下げました。
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