第6話
☆☆☆
穂波がいなくなってから一週間が経っていました。
私と正樹は午前中にコンビニで待ち合わせをして、もう1度穂波を探すことにしたのです。
この日の天気は曇りで、時々雨が降る予報だったので少しだけ涼しかったのです。
「私5時が門限になっちゃったの」
自転車で穂波と行ったことのある場所をめぐりながら私は前を走る正樹へ向けて言いました。
「そっか。まぁ、そうなってもおかしくないよなぁ」
「でもさ、あんまりこの話題を聞かないよね」
街からひとりの女の子がいなくなったらもっと沢山の人が話題にすると思っていましたが、実際はそんなことはありませんでした。
近所の大人たちはいつも通りの日常を送っているし、ゴミ捨て場に集まっている女の人たちは気温の話をしていました。
もしかしたら穂波がいなくなったことをみんな知らないんじゃないかと思いましたが、親たちも知っていることだから、きっともうみんなも知っているはずです。
そういえば、私のお父さんお母さんも穂波のことはなにも言わなくなりました。
最初に話題に出たきりです。
そんなものなのかな? という気持ちと、なんだかおかしくないかな? という気持ちと半々を持っていました。
大人たちが真剣に穂波を探しているのかどうかもわからないので、こうして正樹と一緒に穂波を探す続きをしているのです。
だけど、穂波はもともとそんなに外出する子じゃなかったので、近所の公園、本屋、コンビニを回ったらもう思いつく場所はありませんでした。
もちろん、そのどこにも穂波はいません。
「どうする?」
公園のベンチに座ってすぐに溶けてしまうアイスを一生懸命食べながら、私達は考えました。
他に穂波がよく行く場所はどこだろうと。
思いつく場所と言えばもう学校くらいしかありません。
でも学校に穂波が入れば先生が気がついて、家に戻っているはずです。
学校へ行っても穂波はいない。
だけどもう探す場所もない。
「とりあえず、学校にも行ってみようよ」
このまま収穫なしで帰るのがあまりに辛くて、私はそう提案しました。
穂波はもしかしたら旧校舎のつかわれなくなったトイレにいるかもしれない。
それか、普段は鍵かかかっている屋上とか。
先生が立ち入らない場所にいれば、見つかることもないかもしれないと思ったのです。
正樹は小さく頷いてドロドロに溶けてしまったアイスを一口で口に入れて「つめてー」と顔をしかめました。
それからまた自転車にまたがって、今度は学校へ向かったのです。
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