第23話・妖刀と聖剣の愛し合い
黒い超巨大卵がある谷の場所への突入前夜──谷の底に降りる階段途中にある、平らな場所でモモ太郎たちは、明日の作戦を練るのと同時に英気を養うために野営した。
谷の途中にある平らなテーブル岩の場所は、広すぎるために湧き水の池ができていて。
ちょっとした草木が茂るオアシス状態になっていた。
平らなオアシスから、見下ろす漆黒の超巨大卵は、平らな場所から飛び移れそうなほどの高さまで巨大化していて、両側に人が通れそうな隙間を残すくらいの大きさにまで膨らみ脈打っている。
鍋に残ったシチューを鍋を手に持って、直接食べながらモモ太郎は、光沢の無い黒い半卵を見下ろす。
「確かに、今までの侵攻卵とは、どこか違う禍々しさを、あの卵からは伝わってくるな」
モモ太郎は、テントの中に戻る。半月の夜──魔王がモモ太郎のテントに訪れた。
魔王がモモ太郎に言った。
「モモさん、ボクを抱いてください……不安で心が押し潰されそうです」
魔王は、自分が今回の侵攻に間接的でも関わっているコトに、罪悪感を抱いて自分自身を責めていた。
「塔に幽閉される前に、ボクが強く侵攻を禁じていたら……ボクは異世界国の魔王失格です。ボクなんて生まれてこない方が良かった」
モモ太郎が、童顔の魔王を抱き締めて言った。
「生まれてきたから、オレと出会うコトができたんじゃないか……そらだけで十分だ……抱いてやるよ、自分を責めるな」
モモ太郎は魔王の赤い服のボタンを、上から外していく。
果物の皮を剥くように、魔王の服を剥いで魔王を全裸にするとキスをした。
どちらかの口から「クチュ」という音が聞こえた。
そのまま、魔王はモモ太郎に押し倒され。ルビーのような乳首をモモ太郎の舌に愛された。
モモ太郎が言った。
「異世界国の男も童話国の男と同じように、男専用のプラグインする箇所があるんだな……排泄孔とは別の箇所が」
「はい、生まれた時から男同士で愛し合う部分が、体にはありました」
その箇所は女性の膣に相当する位置にあった。
モモ太郎は、魔王の全身を……男同士で愛し合う箇所も含めて舌と指先で愛撫してから、魔王の体にプラグインした。
心と体にプラグインされて、体を反らせる魔王。
「あッあッ……そこは、あぁぁぁ」
そして、モモ太郎は魔王を愛した。
◇◇◇◇◇◇
翌朝──テーブルオアシスの野営場に、カグヤとニャルタニアンを残し。
石の階段を下りて谷の底に向かったのは。
モモ太郎、温羅、ガラガラ・ドン、ティンカー・ヘル、アラクネ。
キン太郎、熊ノ海、スサノオ、エロス神の九人だった。
谷の底に到着すると、スサノオが言った。
「じゃあ、オレとキン太郎の第二班は、少し離れた谷の場所にある【
「あぁ、合図を出したら、岩戸隠れの日食を頼む」
◇◇◇◇◇◇
モモ太郎の第一班と、スサノオの第二班が別行動で別れると。
背中に聖剣エクスカリバーを背負ったモモ太郎が、漆黒の巨大卵の切れたような半面側に向って言った。
「そこに居るんだろう、出てこいよ……童話国の美形マー・リン、上から姿は見えていたぞ」
漆黒の超巨大卵の裏側から、若マー・リンと妖刀ムラマサを携えた白馬に乗ったアー・サーが現れた。
若アー・サーが言った。
「この漆黒の卵の存在は、いずれバレると思っていました」
「やっと、わかった……今回の異世界国から童話国への侵攻は、二人のマー・リンが結託して仕組んだ計画だったんだな……その黒い卵は爆弾卵、それを欺いて隠すために侵攻卵を次々と出現させて、童話国の注意を爆弾卵から遠ざけた」
「その通りです、気づかなければ……世界の消滅と共に、苦しみもなく一瞬で消滅できたものを」
「教えてくれ、なぜこんな計画を異世界国の老マー・リンと共謀して実行に移した……老マー・リンは、異世界国で女にも男にも一度も愛されないために、心が荒んで世界の消滅を望んだと……アラクネから聞いてわかったが、童話国の若いマー・リンの動機がわからない」
青空を見上げて若マー・リンが言った。
「『白馬アー・サー』からの、愛が得られないからですよ……わたしの愛が白馬アー・サーに届かない世界を消滅させて、再構築でわたしと白馬アー・サーだけの新たな世界を創造するための計画でした」
「でした? 計画は失敗したのか?」
「いいえ、童話国の住人に生じた負の感情……恐れ、不安、嫉妬、怒り、戦意は爆弾卵に蓄積されていきました。想定していた量よりも少なく……モモ太郎、あなたは予想していた以上に、童話国に愛の波動を広がらせ過ぎた」
モモ太郎は、若マー・リンの言葉に拳を握り締める。
「どういう意味だ、あんたが敵を愛せと言ったんだろうが?」
「異世界国の侵攻を激しくさせないための、ストッパーが愛でした。白馬のアー・サーが愛している草原の自然を侵攻で
漆黒の爆弾卵は、もっと早い段階で負の臨界点に到達して、二つの世界を消滅させる爆発をするはずだったと若マー・リンは告げた。
腕組みをして考えていた、モモ太郎が言った。
「ちょっと待て、一つだけ腑に落ちないコトがある……そこにいる白馬に乗ったアー・サーからの愛を得られないから世界を消滅させるのか?」
「よく、聞いていてください……ここに居るのは、ボケッとしている『白馬に乗ったアー・サー』わたしが言っているのは『白馬のアー・サー』」
「馬の方か! 馬の愛を得られないから世界を消滅させるのか! メチャクチャだ」
「なんとでも言ってください……もう終わりにしましょう、威力は半分でも世界を半分くらいは消滅させるコトはできる……妖刀と聖剣の刃が交わる時、二人の刀と剣は起爆キーとなって卵は爆発する、白馬に乗ったアー・サー一度も鞘から抜いたら大量の血を求める……妖刀マラマサを抜きなさい、ムラマサを止めるには聖剣エクスカリバーの力しかありませんよ」
「やめろうぅ!」
鞘から引き抜かれる妖刀の刀身から、妖気が漂う。
襲いかかってきたアー・サーから、仲間を守るためには、モモ太郎も背中の聖剣エクスカリバーを抜くしかなかった。
ぶつかり合う刀と剣……爆発卵が起爆すると、現場に集まっていた者たちが身構えた瞬間──奇跡が起こった。
妖刀ムラマサから、ピンク色の愛の波動が漂い、エクスカリバーを抱擁するように包み込んでいく。
聖剣エクスカリバーも、ムラマサの愛を受け入れているかのように、ピンク色の淡い光りを放つ。
さらには刀と剣に宿っている魂のようなモノが、揺らいだ二人の男性姿の蜃気楼となって男同士の行為をはじめる。
半裸の露出した脇腹を互いに撫で回し、唇を重ね唾液の架け橋を作る。
刀と剣の愛し合いだった、周囲にほんわかとした愛の波動が広がる。
漆黒の爆弾卵が白い卵に変わり、半透明になって消滅した。
◇◇◇◇◇◇
爆弾卵が消滅したのを見た若マー・リンは、力が抜けたようにその場にしゃがみ込んで呟く。
「なんだ? いったい何が起こった?」
妖刀ムラマサを鞘に収めた、白馬に乗ったアー・サーが
「最初からわかっていましたよ……聖剣が変えられていたコトくらい」
アー・サーが鞘に入ったムラマサを撫でると、ムラマサは愛玩犬が尻尾を振っているかのよのに、嬉しそうにピンク色に輝く。
「わたしは、妖刀にじっくりと愛情を注いで、妖刀から愛刀に変えました……マー・リンあなたの計画は最初から、失敗していたのですよ」
「そんな……」
うなだれている若マー・リンに、白馬に乗ったアー・サーが言った。
「白馬アー・サーの言葉を伝えます『マー・リンのコトは好きです、馬と人間なので愛し合うコトはできないけれど』……と」
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