第14話・ケンタウロス&サキュロス……小人のイケメンと愛し合う

 次の夜──老マー・リンは、また夢の中で童話国の美形マー・リンと会った。

 だが、今夜の夢の若マー・リンは違っていた。

「やっと、心が通じて会話ができるようになりました」

「どういうコトだ? なぜ急に話しができる?」

「それは、あなたとわたしに〝世界を消してしまいたい〟という共通の意識が繋がったからです」

 若マー・リンの言葉に目を細める、老マー・リン。

「ほぅ、おまえも自分の世界を消し去りたいのか……詳しく聞かせてくれないか」


 夢の中での密談で、それぞれの世界を消したい理由を伝え合う。

「『白馬のアー・サー』が、わたしを愛してくれない世界などいらない……童話国を消滅させて、二人だけの新たな世界を作る」


「面白い、儂もこのいまいましい異世界国を、消し去りたいと思っていたところだ……二つの世界を同時に消滅させる計画を練ろうか」

 二人の魔法使いは、夢の中での世界消滅の計画を立てた。


「儂の方から侵攻卵を童話国へ送り込む、そちらでの侵攻対処は任せる」

「わかりました、本格的な侵攻攻撃は、童話国の自然を破壊してしまいます……わたしが愛する白馬のアー・サーの草原が荒れて悲しむ涙は見たくないので、侵攻を少し抑える方法を、童話国の者たちにさせましょう」

「ふんっ、そちらにもいろいろと事情があるみたいだな」


  ◇◇◇◇◇◇


 次の日──老マー・リンは、魔王城に各種族の代表を緊急議会召集をして。

 童話国の存在を伝えて、異世界国が置かれている現状を打開するために、童話国への侵攻を提案をした。


「童話国? そんな世界が、この異世界国の裏側に存在していたとは」

 集まった各種族の代表者たちは、童話国の存在に驚きはしたが。

 ほとんどの者が侵攻には難色を示したり、反対の意思表示をした。

 老マーリンが言った。

「我が異世界国の現状を考えれば、他国への侵攻はやむ無しと儂は強く提案する、備蓄していた食料も底が見えてきた」


 度重たびかさなる、天候不順や天災からの凶作の影響は数年間に渡り続き、こればかりは魔法使いでもどうにもならなかった。

「今こそ、童話国への侵攻決断を魔王さま」


 傍らに側近の『アラクネ』が控える、玉座に座った赤い服で頭に角を生やした魔王が穏やかな口調で言った。

「他国への侵攻は、決して許されるコトではない……わたしは、マー・リンの童話国への侵攻提案は却下する」

 魔王の言葉に、老マー・リンは苦々しい表情をした。


  ◇◇◇◇◇◇


 魔王が童話国への侵攻を却下してから一週間──突如、老マー・リンの口から病で倒れた魔王の言葉として。

 童話国侵攻の決断を下したと国民に伝えた。


「魔王さまは、病に倒れた……儂にすべて任せると言って、童話国への侵攻を宣言された」

 国民が動揺する中、童話国への侵攻準備は着々と進められ、水滴の流れが新たな川の流れを作り小石を押し流すように、異世界国は童話国への侵攻に突入した。


  ◆◆◆◆◆◆


 童話国草原の小人村──侵攻卵から現れた『ケンタウロス&サキュロス軍団』は、策で囲まれた【小人村】の入り口から入った、村の広場でイケメンの小人たちと対峙していた。

 上半身が裸身で、下半身が馬体のケンタウロスと、下半身が毛深いヤギの二足歩行をしたサキュロスは全員がイケメン顔で。


 対峙している小人の村人たちも、イケメン顔をしていた。

 耳の下からグルっと顔の側面から繋がる、ダンディなヒゲを生やしたケンタウロスのリーダーが、手にした槍の先を小人たちに向けて言った。

「我らケンタウロス・サキュロス軍団は、争いを好まない……童話国の美味い酒が飲めて、愛し合えるコトに興味がある」


 イケメンで小人体型等身の、村のリーダーが言った。

「わたしたちも、異世界国の方々との戦争は望んでいません……愛し合いたいのです」

 顔のサイズが普通で、三等身の小人たちは、どこか滑稽こっけいで、不気味だった。

 ケンタウロスのリーダーが槍を大地に刺して、腕組みをして少し考えてから言った。

「我らは、どうやって愛し合えばいいんだ?」


 村の広場の少し離れた場所では、モモ太郎たちが成り行きを見守っていた。

 温羅がモモ太郎に訊ねる。

「今回は、何もしないで見ているだけですか?」

「あの体型差が、ありすぎる種族同士が、どうやって愛し合う方法を発見するのか……それも、新たな交流だからな」


 相方が思案していると、小人の一人がリーダー小人に耳打ちした。

「うちのジィジィから聞いた話しですが……小人には数少ない使える魔法があって、狩りをする時にその魔法を数人で……」


「昔、草原で狩りをする時に祖父らはそんな魔法を……孫の我々でも可能かも知れないな……やってみよう」

 小人たちの三人が肩車をして、普通の成人男性と同じ目線になった。

 グラグラと左右前後に揺れる小人タワーの、一番上に乗ったリーダーが叫ぶ。

「小人魔法【合体】」

 三人タワーの小人たちが淡い光りに包まれ、一人の成人男性の姿になった。

 小人リーダー顔の成人男性が、自分の体を触りながら呟く。

「本当に合体できた……他の二人はどこに?」


 小人リーダーが首をかしげていると、今度はケンタウロスとサキュロスのリーダーが言った。

「その等身なら愛し合える」

「あとは我々の体格差を無くすだけだ」


 そう言うと、ケンタウロスは下半身の馬身を。サキュロスはヤギの下半身を脱いだ。

 ケモノの体と皮の下から、人間の下半身が現れる。

 サキュロスの下半身にある、男のメインシンボルは見事だった。


 人間の姿になったケンタウロスが、首なし胴体の馬体の尻を叩いて言った。

「草原を走り回って遊んでこい」


 首なし馬体たちが走り出し、草原にいた白馬と一緒に疾走する。

 スッポンポンになった、ケンタウロスが小人青年に言った。

「愛し合う場所を用意してくれ」

「では、小人の家は狭いので野外で……太陽の下で思いっきり」

 小人たちが次々と合体して成人男性等身に変わると、愛し合う寝具が野外に用意された。

 ケンタウロスと小人が、抱き合ってキスをする。

「ん゙ぁ゙ぁぁぁ」

「はぁはぁ……愛し合うって素晴らしい」

 問題が解決して、互いの胸を撫で回してキスをして、男のシンボルを愛し合うコトができた。

 小人の村をモモ太郎たちは出て、次の目的地に向かった。

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