第12話・悪魔と天使&天狗とカッパ……今は争うよりも愛し合え
【渡りカラスたちの谷】──空から降りてきた伝令の渡りカラスの一羽が谷に着地と同時に、人の姿に変わった。
修験道者のような格好をした、背中に黒い翼を生やして赤い天狗の面をかぶった男の姿……天狗のお面を外すと、日焼けした爽やかや青年の顔が現れる。
「ついに、この渡りカラスの谷にまで、侵攻卵が現れたか」
谷で群れる人間形態の渡りカラスたち、谷にはカラスの他にもカッパ族と鬼族が、異世界国からの侵攻を避けて避難していた。
BL童話国のカッパは、緑色の肌をした裸の成人男性の体に、頭にカッパの皿、背中にカッパの甲羅、指の間には水掻きがある。
鬼族は温羅の配下で
、異世界国の侵攻から家族と一緒に谷に避難している。
渡りカラスのリーダーの視線の先には、岩壁から突き出した。マーブル模様の侵攻卵があった。
侵攻卵に亀裂が走り、割れた卵の中から美形の悪魔と美形の天使が現れた。
悪魔のリーダーらしき人物が言った。
「オレたちは人間との混血種、ハーフ・デビルとハーフ・エンジェルだ」
ハーフ・エンジェルのリーダーが言った。
「わたしたちは、童話国の人たちと争うつもりはありません。侵攻卵を利用して、この世界に来ました……あるコトを伝えるために」
渡りカラスの天狗リーダーが、ハーフ・エンジェルに訊ねる。
「何を伝えるために童話国に?」
「異世界国で人質に取られていた、侵攻軍の家族は解放されました、魔王さまの権限で」
「まさか、それだけを伝えるために」
「はい、それから異世界国の黒い老魔法使いマー・リンは、童話国に来ても太陽の光りの下では活動できないみたいです。月の無い夜とか日の光りが当たらない場所でしか……歪んだ心には、童話国の純粋な太陽光は厳しいのです」
ハーフ・デビルが言った。
「邪悪な黒い魔法使いマー・リンのジイさんを、童話国で迎え撃つ時の手助けにオレたちはなる……異世界国の者と童話国の者が手を結べば必ずできる」
ハーフ・デビルのリーダーが提案する。
「ここにいる者たちで、一対一の真剣に愛する男同士の
渡りカラスの天狗たちは、その申し出を受け入れて。
互いに一目惚れした、一番相性が良い者たちを選出して、カップルになった。
カッパと天使。
天狗と天使。
悪魔とカッパ。
悪魔と天狗。
四組の異種族カップルが誕生した。
鬼族はモモ太郎と愛し合っている温羅を気遣い、ハーフ・デビルの提案は辞退した。
天使とカッパが愛し合う。
カッパ男性の緑色の肌を、天使が色白の手で撫で回して愛撫すると。
カッパの皿と甲羅が薄っすらと濡れて、皮膚も少し湿ってきた。
「あふっ、カッパァ」
小さなルビーの突起に天使のキスが走り、カッパの男のシンボルを天使が
「あふッ……カッパァ……中に出して」
ビクッと
半裸の優しい天使が、しなやかなカッパの体を抱きながら、唇を重ねる。
「んんんッ……んッ」
別の場所では、天狗と天使。悪魔とカッパ。悪魔と天狗が愛し合っていた。
胸をはだけさせられた、天狗男子の首筋からルビーの突起まで、悪魔の舌が往復する。
「おぉぉ……これが、異世界国のハーフ・デビルの……あぁぁぁ」
悪魔の手は、そのまま天狗の下腹部へと伸ばされ、衣服の上から男のシンボルを確認した。
愛の波動が渡りカラスの谷に溢れる。
ハーフ・デビルのリーダーが、愛し合っている者たちを眺めながら言った。
「この童話国にいる若い美形のマー・リンにも気をつけろ……今はこれ以上は言えない」
◆◆◆◆◆◆
【カグヤの竹林】月が雲に隠れた夜──竹林内のトラップに、藍菜和の仙薬でイケメン男性化した、ゴブリンたちは悲鳴を発していた。
竹林で弓で矢をつがえてゴブリンに向けているカグヤが言った。
「それ以上、竹林に入ってくるなと、忠告したはずだ。モモとの約束で死なない程度のトラップをかけてある……さっさと、竹林から出ていけ!」
ニャルタニアンの高速長剣が、ゴブリンイケメンたちの、衣服を切り裂く。
「ニャ、ニャ、ニャ、ニャ」
竹林から逃げていくゴブリンを見ながら、ニャルタニアンが呟く。
「まだ、一度も異世界国の男に抱かれていないニャ……抱かれてみたいニャ、カグヤはモモに抱かれてみたいと思ったコトあるかニャ?」
ニャルタニアンの言葉に、顔を赤らめるカグヤ。
「何をバカなコトを、オレはこの竹林を守りたいだけだ」
「とか、言っちゃって……知っているニャ、モモの写真をペンダントのロケットに入れて持っているニャ」
「あ、アレは魔除けだ桃は古来から魔を退けるから持っているだけだ! 庵に帰るぞ」
歩きはじめたカグヤは、視界の隅に竹林の中を移動して消えた黒い影を見た。
一瞬だったが、それは漆黒のフードで顔を隠した、魔法使いのようにも見えた。
カグヤが、雲の切れ目から差し込む月光に照らされる竹林を見回して呟く。
「気のせいか」
◆◆◆◆◆◆
童話国【足柄の山】──力自慢の『キン太郎』は、何十匹目かのクマを山の向こう側に放り投げていた。
タオルで汗を拭いているキン太郎のところに、温羅とガラガラ・ドンと温羅の肩に座ったティンカー・ヘルを連れたモモ太郎が現れた。
「よっ、キン太郎、今日もクマを山の向こう側に投げ飛ばしたか」
「モモと温羅か、隣のヤギ角を生やしているのと、温羅の肩に乗っている人形はなんだ?」
「紹介しよう、小ガラガラ・ドンとティンカー・ヘルだ」
「オレに何か用があったんじゃないのか?」
キン太郎に近づいたモモ太郎が、キン太郎の筋骨隆々な肉体をポンポンと軽く叩きながら言った。
「あぁ、一言注意しておこうと思ってな……おまえは、異世界国の敵と遭遇しても抱き締めるな。加減を知らないおまえの力で抱かれたら、相手は愛する前に即死する」
「わかった……他に何か言いたいコトは」
「龍に乗った青年の『タ・ツノコ太郎』が、どこにいるか知らないか? アイツのことだから侵攻卵にむやみに攻撃をかける危険がある」
「タ・ツノコなら、ほら、あそこで巨大な卵に攻撃を加えている」
キン太郎が指差した先には、いつの間にか出現していたショッキングピンク色の超巨大侵攻卵に向って、タ・ツノコ太郎の青年がまたがった龍で攻撃を与えていた。
「あのバカ! 良い子でねんねしていればいいものを! 温羅、ガラガラ・ドン! タ・ツノコを止めるぞ」
モモ太郎が走り出して姿が見えなくなると、洞窟の中から現れた下半身がクモで赤い軍服を着た青年と、二足歩行の異世界クマがキン太郎に近づいてきて。
軍服の『アラクネ』がキン太郎に向って言った。
「今のがモモ太郎ですか、なるほど一本芯が通った男のようです、腹筋も鍛えられていて……ゾクゾクします」
キン太郎が竹筒水筒の水を飲みながら、アラクネに訊ねる。
「あんた、まだ童話国の様子を観察調査するつもりか?」
「えぇ、魔王さまがこの世界に来た時のために」
異世界国侵攻軍総司令官の『アラクネ』の傍らに立つ、巨漢の異世界クマが相撲の廻しを腰に巻きながら言った。
「キン太郎どの、少し胸を貸してもらって相撲稽古の相手をしてもらえないだろうか……強くなりたいのだ、お願いする」
異世界クマの横綱『熊ノ海』の言葉に、キン太郎は四股を踏む。
「オレも童話国のクマは練習相手には、物足りないと思っていたところだ……相撲しようぜ」
キン太郎と熊ノ海が、ガッチリ四つに組んだその横を。
ドレス姿で巨大化したア・リスが、地響きをたてて。
「でっかい男、でっかい男……どこ?」
そう言いながら通り過ぎて行った。
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