異世界国の人々・童話国の人々

第11話・追っ払い隊一番隊隊長ウルフィン……女の骨格が入った男を初めて抱く

  ◆◆◆◆◆◆


 黒い森の中にある、異世界国からの侵攻者は【追っ払え隊】の本部となっている小屋──小屋の中に、ブレードクロー刃爪を両手に装着した一番隊隊長ウルフィンは、腕を交差させた格好で椅子に座り。

 目の前の椅子に座っている、異世界国の男性兵士の話しを聞き終わったウルフィンが言った。

「つまり、こういうコトか……スケルトン兵士から、肉づけされて人間の姿になって童話国の者と愛し合ってから。童話国を少しさまよって黒の森に迷い込んできて……たまたま、森の中にこの小屋を発見したから、入ったと」


 スケルトンから男性に変わった兵士は、小屋の中のテーブルの上に置いてあった、木製の三枚の皿に入っていたシチューを空腹からすべて食べてしまった。


「そして、オレたちが小屋を留守にしていた間に、シチューを食べて空腹が満たされたら、眠くなってオレのベットで眠っていたと……」

「はい、シチューを食べてしまって、すみません」

 どことなく、女性っぽい顔をした元スケルトン兵士の男は、すまなそうな顔で頭を下げた。


 二番隊隊長レッド・フードが、銃火器の銃口を侵入者に向ける。

「ドロボウの、異世界人に鉛の弾丸をぶち込んじゃう? ウルフィン」

 三番隊隊長のマッチ売りの少年も、魔法のマッチを点火させる。

「敵を燃やしちゃう、ウルフィン」


 ウルフィンが二人を制する。

「まぁ、待て……渡りカラスから。いろいろと伝わってくる戦況を聞くたびに、オレの考えも少し変わってきた」


 両腕のブレードクローを外して、ウルフィンが言った。

「最初は異世界国からの侵攻者は、すべて追い払ってしまえと考えていたが。彼らの中にも侵攻を望んでいない者もいると知った」


 椅子から立ち上がった兵士男性が、ウルフィンにヒップを向けて言った。

「あたしの、お尻を見てください……何か気づきませんか」

「妙に女っぽい尻だな」

「あたし、女性のスケルトン兵士なのに男性の肉づけされちゃったんです」

「なにぃぃ? おまえの体の中に入っているのは女の骨格なのか?」

「はい、だからそれを承知の上での愛され方をされたいんです……あたしを女性骨格が入った男性として愛してくれますか? オオカミの人」

「オレも別人に変装するから、その感覚はどことなく理解できる」


 ウルフィンが、レッド・フードとマッチ売りの少年に言った。

「おまえたち、森の奥にある【注文が多すぎる西洋料理店】に行ってメシ喰ってこい、今なら三匹の子ブタの丸焼きが食べられるはずだ」

「連結で串刺しされた三匹の子ブタが、食べられるのなら……シチュー食べ損ねたから行ってみる」


 レッド・フードとマッチ売りの少年が小屋から出て行くと、ウルフィンは女の骨格が入った男をプリンセス《お姫さま》だっこして寝室へと運んでベットの上に男を降ろす。


「オレの愛し方は激しくて、優しいぞ……たっぷりと愛してやるからな」

「きゃん♫」


 ◆◆◆◆◆◆


 人魚王子の島では着々と異世界国から来る、男たちのためのリゾート化が進んでいた。

 海賊ブックの空飛ぶ海賊船は、島へ男たちを送迎する乗り物と同時に、遊覧飛行船として利用され。

 ウラ・シマの大ウミガメも、岸からの送迎と遊覧観光船に利用されるコトになっていた。

 島の砂浜を全裸可能ビーチに変えて、ヤシの葉のバンガローを作っている二本足のビキニ水着姿で砂の上で立っている、人魚王子の姿をブックは海賊船の甲板から眺めていた。


 海賊ブックの傍らに立つ、ワニの着ぐるみの口から顔を覗かせているワニが言った。

「チックタック、チックタック、いいんですか? 人魚王子が他の男に抱かれるコトを認めてしまっても……チックタック、チックタック」

「陸の王子が承諾したんだから、しかたがないだろう……それに、オレも人魚王子を抱く権利がこれで生まれたんだからな。オレも異世界国の男を抱いたり、抱かれるコトになるが……ワニ男、おまえも男に抱かれるんだぞ」

「ひぇぇぇっ、男に抱かれて種づけされて、産卵しちゃったらどうしょう……チックタック、チックタック」


 海上に浮かぶカメの背中で、観光用の古式なウラシマ太郎の格好をした、ウラ・シマが空に浮かぶ海賊船のブックに向って言った。

「人魚王子、楽しそうだな」

「なんでも、島を訪れた男性たちが愛を育むリゾート男の楽園【愛ランド】にするのが、昔からの夢だったらしい……オレたちも、人魚王子の夢に強力して後押ししてやらないとな」


 海賊ブックが、そう呟いた時──砂浜の浅瀬に、空間から押し出されるように灰色の侵攻卵が半分だけ現れた。

「なんだよ直接、島にお客さんかよ……これじゃあ、空飛ぶ海賊船で陸地から送迎する必要ないな」

「どんな侵攻軍が現れるのか、ワクワクします」


 灰色の巨大卵に亀裂が走り、割れた卵の中から現れたのは全長十メートルほどの岩石ゴーレムたちだった。

 ガッカリする、海賊ブックとウラ・シマ。

「岩のゴーレムかよ、硬すぎて抱けねぇぞ……その前に言葉通じるのか?」

 上陸したゴーレムたちは、人魚王子が作っているバンガローに接近する。

「これは、ヤバい!」

「バンガローを守れ」

 海賊船から島へと飛び降りる海賊ブックとワニ男、海カメの背中から浜へと飛び移るウラ・シマ。

 口をすぼめたウラ・シマが言った。

「生き物相手なら、オレの老化ガスが通じるが……相手が無生物となると」

 ウラ・シマは、相手を老化させる玉手箱ガスと、相手の体内から老化ガスを吸い込んで、若返らせる能力を持っていた。


 人魚王子も、ブックとウラ・シマの後方で三叉槍トライデントを構えているが、陸上では海洋生物の力を借りた能力は使えない。


 ウラ・シマと人魚王子が、出現した岩石ゴーレムに困惑していると、海賊ブックがアイパッチを持ち上げてズラして、普段は隠されている片方の目で岩のゴーレム内部を観察する。

「彫刻はその岩の中に、掘り出すべき対象物が隠されている……見えた」


 海賊ブックが?状の片手で岩石ゴーレムから隠されていたモノを掘り出す。

 砕けたゴーレムの中から、数人の男が出てきた。

 ゴーレムの中から救出された男の一人が言った。

「助かった……邪悪な黒い老魔法使いの力で、ゴーレムの中に封じられて、動力源にさせられていた」

 他のゴーレムもブックが?状の腕で掘り出すと、今度は中から裸の男たちが転がり出てきた。

 ワニ男が男たちに質問する。

「あんたたちは、何者なんだ? チックタック」

「わたしたちは、童話国のへの侵攻に反対していたレジスタンスです……邪悪な黒い老魔法使いのマー・リンに捕まって、岩の中に入れられていました」


「そちらの裸の人たちは? チックタック」

「わたしたちのレジスタンスグループは、入浴施設で風呂に入りながら密談していた時に、マー・リンの配下に捕まって……わたしたちに、童話国の人たちと争う気持ちはありません」

 海賊ブックが、普段は格好つけのために片手にかぶせてある。

 ?かぎの義手アームを外す、外したアームの下から普通の腕が現れる。


 ブックが言った。

「その、黒いジジイ魔法使いのマー・リンってのは酷いことをするな……この童話国にいる限りは安心しろ、童話国の者たちがレジスタンスを黒い魔法使いから守ってやる……まずは、休憩して体を休めてから。親交の深い愛し合いだな……島には温泉もあるぞ」


 異世界国のレジスタンスと、童話国の者たちは肉体を重ねて愛し合った。

「あぁぁぁ、愛し合うって素晴らしい」

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