第10話・ドロ・シーとア・リス……最凶の異世界国侵攻者も許してエロスの愛の矢で……愛に満ち溢れた蛮族オーガ男たちに抱かれて抱け

  ◇◇◇◇◇◇


 眠りのイバラ城で愛の行為を満喫した、ター・リアとスケルトンから人間に戻った王子は、寝室のベットの上で心地いい余韻よいんを味わっていた。


 仰向けになったスケルトン王子の腕マクラに体を委ね、スケルトン王子の胸に横顔を接触させたター・リアは潤んだ目で王子の顔を見て呟く。

「王子さま……」

「君も王子だろう」

 互いに笑みを浮かべる二人の王子。

 スケルトン王子が、少し悲しそうに言った。

「異世界国に住む者の多くは、今回の童話国への侵攻は望んでいない……魔王さまも最初は他世界への侵攻は反対していた。それが急に侵攻宣言をしてしまった──なぜ、温和な魔王さまが、そんな過激な決断を下したのかわからない」


「そうですか……ボクたち童話国の者も争いは基本的に望んでいません……だから、童話国の愛で侵攻者を包み込んであげるのです」

 スケルトン王子が、ター・リアの頭を撫でながら言った。


「愛が異世界国の侵攻に対抗するために考え出された、最適の方法……素晴らしく平和的な武器です。童話国の愛をもう一度、わたしの体に注いでください」

 ベットの上で唇を重ねる二人……ター・リアの方は、スケルトン王子がター・リアを自由にできるように、すぐに眠りに落ちた。

 スケルトン王子がキスをしながら眠ったター・リアの体を弄んでいると。

 寝室の入り口の方から声が聞こえてきた。


「さあ、ここが眠り王子の寝室ですよ……眠っている王子を自由に……おっと、先客がいた。こりゃ失礼」

 そう言ってプラカードを持って、人間になったスケルトン兵士たちを案内してきた。

 ソン・ゴ・クウは、キスを続けているスケルトン王子を見て軽く笑った。


  ◆◆◆◆◆◆


 小高い岩山──ドロ・シーとア・リスたちは苦戦していた。

 空色の卵から現れたのは、凶暴な蛮族オーガたちだった。

 牙が生えた野生ブタのような顔をした、オーガは筋斗雲に乗って飛んできた藍菜和が仙薬でオーガたちを人間の、高校生年齢のたくましい男子に変えると忙しそうに去っていった。

 人間に変わっても、オーガ男子たちの粗雑な心には愛は芽生えなかった。

「愛とか恋とか、そんなモノは関係ねぇ! オレたちは略奪するだけだ!」


 愛を知らないオーガ男子に、どう接したらいいのか困惑しているドロ・シーとア・リスたちは。

 オーガ男子の手加減なしの攻撃を受けながら、手加減して傷つけないように反撃するしか無かった。

「愛? それ喰ったら美味いのか? 美味かったらオレたちにも喰わせろ」


 戦斧を振り回して襲ってくるオーガ男子に対して、トトが空中に積み上げた黄色いレンガの塔の上に立って。

微風の竜巻を起こしながら言った。

「吹き抜けろ、愛の竜巻! ライオンマン、ブリキマン!」


 半面マスクのライオンマンの威力を弱めた一声『勇気の咆哮ほうこう』を浴びて、一瞬だけ恐怖に動きの止まったオーガ男子だったが。

 すぐに動き出して、戦斧でドロ・シーが立っているレンガの塔を攻撃して崩すオーガ男子。


 ブリキマンが、片腕を斧のような角度に曲げて力加減をした『心が無いアックスエルボー』で、オーガ男子たちをぶっ飛ばす。

 威力が無い攻撃に、すぐに立ち上がったオーガ男子は、笑いながらドロ・シーたちを襲おうとする。

「そんな攻撃、効かんなぁ。攻撃ってのはこうやるんだ!」


 戦斧を振り上げた、オーガ男子が、かかしマンに向って戦斧を振り下ろした瞬間。

 いきなり、鋼鉄のトランプカードの盾が現れ、かかしマンを守った。

「???」

 ジャックカードの盾が瞬間で消える。


 別のオーガ男子が、ア・リスのマッド帽子屋を戦斧で襲うと、今度はキングのカードが現れ、帽子屋を守って瞬きした瞬間に消える。


「なんだ、コレはいったい? 急に鋼鉄トランプの盾が現れて消えるぞ?」

「おい、あのウサギ耳の男が持っている、でっかい時計の針を見ろ。盾が現れたり消えたりするたびに、針の位置が変化しているぞ! あのウサギ男、時間を自由に止める能力を持っている」


 イケメンのオーガ男子の言葉に、女装したドレスの胸元からハートのトランプカードを取り出して言った。

「本当の愛はどこにある?」


 時ウサギ青年は、数分間だけ時間をチートに止めるコトができる──停止した時間の中で動けるのは主人のア・リスだけだった。


 ア・リスが腰の小型薬箱から取り出した、小ビンの液体を飲み干す、ア・リスの体が服を着たまま巨大化して、オーガ男子に向って足を踏み鳴らしはじめた。

「虫けらが……この、この、この…」

 

 悲鳴を発して逃げ惑うオーガ男子たち、それを見て頭を抱えて慌てるドロ・シー。

「誰かこの状況を打破してくれ! このままだと巨大化した怒りのア・リスがイケメンのオーガ男子を全員殺しちまう」


 ドロ・シーの声に応じるように、空の雲の中から青年の声が聞こえてきた。

「パートナーのスサノオに言われて、わたしが来ました……野蛮で粗雑なオーガの心を愛で満たして差し上げましょう」

 黄金色に輝く雲の中から、背中に白い翼を生やしたエロスが現れても、弓に黄金の矢をつがえて微笑む。

「痛くない、痛くない、痛いのは最初だけ……さあ愛を受け入れましょう」


 エロス神がオーガ男子に向って放った黄金の金の矢は分裂して、オーガ男子一人一人の胸に突き刺さる。

「痛てぇ」

「血が出ている、血が出ている」

「心臓に矢がぁ、矢がぁ」

 黄金の強制愛の矢は、回転しながらオーガたちの体に沈み消えて、痛みが消えたりオーガ男子の顔に愛に満ちた喜びが浮かぶ。


「なんだ、こんな気持ちは初めてだ……これが愛という感情⁉」

「愛し合いたい、オレたちに必要だったのは略奪するコトじゃない……互いを愛し合い、愛を共有して、愛を分け与えるコトだったんだぁぁ」


 空から降りてきたエロスが平らな岩の上で脱衣して、ギリシャ彫刻のような裸体を晒して言った。

「さあ、敵味方関係なく愛し合いましょう。恋人同士で愛し合うのも愛、グループで愛し合うのも愛」


 イケメンのオーガ男子たちも、脱衣して仲間内や童話国の者たちと愛を確かめ合った。

 ただ、巨人化したまま脱衣して裸になった男のア・リスだけは、相手が見つからずに。

 どうしたらいいのか、わからずに男体の全裸でウロウロと岩山で困惑していた。

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