第8話・異世界から来た女戦士たち逆TSで男になって……抱いて抱かれて童話国の愛を体で確かめろ

 ピノッ・キオは、クジラハウスの入り口近くに吊り下げた【男娼の館】の、看板を眺めた。

 看板を眺めているピノッ・キオに、青い鳥が言った。

「わたしは、お客の相手はしませんからね」

 ピノッ・キオが答える。

「男娼になるのは、ボクだけでいい……ボクだけで」


 そう言って、ピノッ・キオは森の向こう側に少しだけ見える、ウグイス色をした異世界国の侵攻卵に目を向ける。

 出現した卵に亀裂が走ってから半日……ピノッ・キオは、卵からどんな異世界国の者が出てくるのかと期待していた。

(異世界国の者を抱くか、抱かれたら、ボクも何かが変われるかも知れない)


 木製の仮面を外した、ピノッ・キオの素顔は美形青年だった。

「男娼の館で得た、お金は全部君にあげるよ……今まで、ボクの世話をしてもらってくれた。お礼の気持ちだ」

 そう言って、ピノッ・キオは木製の仮面で素顔を隠す。

「ボクが童話国のためにできるのは、モモさんが言うように敵を愛して、抱いて抱かれるコト……それが、ボクが求めていた、童話国での存在理由のような気がする」

 ふたたび、森の向こうに半分が見えるウグイス色のヒビ割れた巨大卵。


 ピノッ・キオは、森からどんな異世界国の者が現れるのか期待に胸を膨らませた。

 モモ太郎の話しから、異世界国からの侵攻軍で醜い怪物が現れても。酒仙の藍菜和が全員人間の色男に変えてくれると聞いていた。

 オーガでも、ゴブリンでも、トロールでも。


 ワクワクしながら、待ち続けるピノッ・キオ……しかし、半日が過ぎた今も、森からはまったく異世界国からの侵攻者は現れなかった──実はこの時、すでに半日前の卵に亀裂が走った段階で、童話国の愛を武器にした戦いは、はじまっていた。


  ◆◆◆◆◆◆


 半日前──酒仙の藍菜和は、小高い丘の上でソン・ゴ・クウと一緒に割れたウグイス色の侵攻卵を見ていた。

 卵から出てきたのは、女戦士、女勇者、女騎士の【女性軍団】だった。

 武器を持った女たちを見て顔をしかめる、藍菜和。

「いやだぁ……女ばっかり、童話国の男の士気が下がる……ゴ・クウちゃん、例のアレやっちゃって」

「任せろ!」


 そう言うと、ソン・ゴ・クウは、栓を抜いたヒョウタンを地面に置いて巨大化させた。

 ゴ・クウがヒョウタンに向って言った。

「異世界の女どもを吸い込め」

 巨大化したヒョウタンは、女たちを全員吸い込んだ。

 ヒョウタンに栓をしたソン・ゴ・クウが軽くヒョウタンを、一回転させると、中から女たちの悲鳴と、チャポンチャポンという水音が聞こえた。

 腕組みをして、うなづくソン・ゴ・クウ。

「半日くらい漬け込んでおけば、女体から男体に変わっているだろう」


  ◆◆◆◆◆◆


 ヒョウタンが女たちを吸い込んで半日後──ソン・ゴ・クウが栓を開けると、液体と一緒に女から男逆TSに肉体が変化した。

 元、女たちがヒョウタンの中から流れ出てきた。

「男……体が男の体に?」

「なんだコレ……自分の体じゃないような、この変な感覚? なに?」

 男になった自分の体の変化に、驚愕する者、放心する者、恐怖に泣きわめく者など、反応はさまざまだった。

 藍菜和が新しい体に戸惑っている、男勇者や男戦士や男騎士に言った。

「最初は初めての男体に戸惑うかも知れないけれど……早く男の体に慣れてねぇ。あなたたちは、これからは男の体で生きていくのよぅ……ゴ・クウちゃん、彼らを愛してあげて。男同士で愛し合うのよ」

「任せろ」


 ソン・ゴ・クウが引き抜いた髪をプウゥと息で飛ばすと、多数の分身が現れた。

 ソン・ゴ・クウが分身に命令する。

「おまえたち、男になった女たちを抱いて、男の体の素晴らしさを教えてやれ」

「「「任せろ!」」」

 分身ゴ・クウたちは、自慢の如意棒を使って男になった女たちを愛した。

「ああぁぁぁぁ⁉」


  ◇◇◇◇◇◇

 

 クジラハウスの二階の丸窓から、森を見ていたピノッ・キオは、ふらつく足取りで森から出てきた男を見た。

 その男は、ビキニアーマーのような防具を身に着けていた。

 ピノッ・キオは、【男娼の館】の看板を困惑した表情で、見ている異世界の男を丸窓から眺めて呟く。

「最初のお客さんだ」


 ビキニアーマーの男性は、しきりに自分の胸を触ったり、股間を撫でたりしている。

 木製の仮面を外したピノッ・キオが、ドアを開けて髪が肩まである、男性に声をかける。

「よかったら、中に入って紅茶でも飲みませんか? 焼き菓子くらいなら用意できますよ……お腹が空いている様子なので、まずは空腹を満たしてから」

 ビキニアーマー防具の男性は、ピノッ・キオの誘いに応じてクジラハウスの中に入った。

 出された紅茶を飲んで、焼き菓子を食べて落ち着いた戦士の男性が語りはじめた。

「実は……半日前までは女性でした、不思議なヒョウタンに吸い込まれて男の姿に……」

 ヒョウタンから出てきたら、サルのような男性の髪から生まれた分身が、男に変わったばかりの女性たちと激しい愛し合いをはじめてしまったらしい。

「あたしは、なんとか森へ逃れましたけれど。男になった女たちは、どうしたらいいのかわからないまま……男に抱かれて、男性の歓びを体に刻まれて」


 男になった女性は、自分は異世界国の引退した元女戦士だと、ピノッ・キオに告げた。

「異世界のパーティーと数々の冒険をして、結婚を機会に戦士を引退して田舎で牧場暮らしをしていました」

「それが、どうして侵攻軍団の一人に?」


「強制的に掻き集められたんです、女性の侵攻軍団を結成するために」

「断るコトは?」

「できませんでした、異世界国を陰から牛耳っている『邪悪な黒い老魔法使い』に、家族を人質に取られて……命令に従うしかなかった」

 男の股間を撫でながら、元女性戦士は嘆きの顔を手で隠した。

「男になってしまって、異世界国の主人になんて言ったらいいのか? この先、どうやって生きていけばいいのか……わからない」


 気持ちが沈んでいるビキニ男性に、ピノッ・キオが言った。

「とりあえず、男の体に慣れるために、ボクと寝てみませんか? 初めてのお客さんなのでサービスで料金はいただきません」

「寝る? あぁ、ここは男娼の館でした」


 少し考えてから、元女性戦士が言った。

「お願いします、一日でも早く、この体に慣れたいので」

 ピノッ・キオは、元女性に柔らかいリングシリコンを渡して言った。


受動的受けなら左足首に、能動的攻めなら、右足首につけてください」

 元女性は、右足首に柔らかい言うあおリングを装着した。

 ピノッ・キオが言った。

「愛し合っている途中に、リングの位置を変えてもいいですからね……ボクはどちらの対応もできますからね」


 寝室に移動した二人は、衣服を脱ぎ防具を外した。

 ベッドの上に仰向けになった、ピノッ・キオを抱き締めてキスをする彼。

 元女性だった戦士が言った。

「夫に抱かれ愛されていた時を思い出しながら、男性を抱いてみますが。不慣れな体で上手くいくかどうか」

「完璧にやろうと思わないでください、その体に慣れるのが目的ですから」

 そう言って外した仮面をベッドの横に置いた、ピノッ・キオは元女性の男性シンボルに優しく触れた。

「ボクがリードしますから、ボクの言う通りにしてみてください」

 そう言うと、ピノッ・キオは四つ這いの姿勢になり。

 半日前まで女性だった戦士は、ぎこちない動きで、引きこもりのピノッ・キオを愛した。

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