異世界国……侵攻間近
第6話・女装をした男の娘姫たち……敵の胸に抱かれて愛の夢を見ながら熱くなれ
◆◆◆◆◆◆
童話国平原──北にガラスの尖塔西洋城【シンディ・レラ城】
南には雪の【スノー・プリンス城】
中央にはイバラに包まれた【眠り城】があった。
シンディ・レラ城のガラスの靴を履いた女装男の
スノー・プリンス城の女装姫王子『白雪王子』の二人は仲が悪かった。
その二人が対話をするためにドロ・シーが用意したのは、中立のイバラの眠り城だった。
眠り城の眠り女装王子『ター・リア』は、パジャマ姿で抱き枕を抱えた格好で、対峙している二人の女装姫王子を、ボーッとした眠り顔で眺めていた。
睨み合うガラスと雪の女装王子。
シンディ・レラの背後には鋭いガラスの結晶と、背中にゼンマイがついたオモチャの兵隊たち。
白雪王子の背後には、雪の山と
ガラスの靴を履いたシンディ・レラが、言った。
「やっぱり、気に入らない……雪ばかり降らせやがって、冷気が城にまで流れてきて寒いんだよ」
白雪王子も、負けじと言い返す。
「そっちこそ、ガラス城が朝日と夕日を反射して、眩しくて迷惑なんですけれどぅ」
「やるか!」
「望むところ!」
ガラスの結晶と氷の塊がぶつかり合う、ガラスの結晶は光りの粒子化して消滅して。
氷の塊も砕けて溶けた。
いがみ合う二人の女装姫を眺めているのは『ドロ・シー』『トト』それと、円筒形のバケツを逆さにしたような金属仮面をかぶった『ブリキマン』
鼻から上にライオンの半面マスクをかぶった『ライオンマン』
ラクガキされた布製の袋を頭からかぶった『かかしマン』だった。
腰に革の薬小箱を提げたア・リスの近くには『時ウサギ青年』と『マッド帽子屋』もいる。
背中側から風を吹かせながら、ドロ・シーが多少呆れた顔で言った。
「異世界からの侵攻が迫っている、非常事態なんだ……いがみ合いを、一時やめて童話国の【敵を抱いて、敵に抱かれて、愛し愛され】に協力してくれないか……女装姫たちの力が必要なんだ」
シンディ・レラが、ガラスのような冷たい口調で言った。
「どうして、敵に抱かれて愛されなければならない……第一、相手が愛してくれなければ、こちらも愛するコトはできない……人の心は虚像を映す鏡」
白雪王子も、少し冷ややかな口調で言った。
「人の心は淡雪のように、すぐ溶けて水に変わってしまう……愛し愛されの関係が相手の心変わりで、終わる場合もある……永遠の愛なんて、おとぎ話の中だけだ」
ドロ・シーが言った。
「それでも、敵を愛して、敵に愛されなければならない……これは童話国での存亡をかけた戦いの損失を、最小限に抑えるためにマー・リンとモモさんが選択した方法だ……
シンディ・レラと白雪王子が同時に言った。
「「そんなの、知ったこっちゃない」」
ドロ・シーが困り顔をしていると、ア・リスが腰の薬小箱から巨大化する薬が入ったビンを取り出そうとするのを、ドロ・シーは止める。
「巨大化して、虫けらみたいに姫たちを踏み潰しても、何も解決しない……やれやれ、どうしたものか」
少し考えて、ドロ・シーは手招きで布袋をかぶった青年の『かかしマン』を、近くに呼び寄せて耳打ちする。
「例のアレ、お願い」
かかしマンは、自分の額をドロ・シーの額に接触させた。
かかしマンの頭の中に詰まっている、ほぼ悪知恵の『知恵のプレゼント』が、ドロ・シーの頭の中に流れ込んできた。
悪知恵が閃いた笑みを浮かべたドロ・シーが、女装姫たちに向って言った。
「本当は、おまえら男に抱かれたコトなんて無いだろう」
ドロ・シーの言葉に激しく動揺する、シンディ・レラ城の姫王子と、スノー・プリンス城の姫王子。
「そ、そ、そ、そんなコト」
「あ、あ、あ、あるわけない」
「わかりやすい反応だな……経験があるなら、じゃあこうしょう。三人の女装姫王子の誰が、一番敵に愛されたか競って、勝利した者が最高の女装姫を名乗るというのはどうだ」
ブリキマンの胸に、円グラフのようなモノが現れる、三等分された円の中には三人の姫の顔イラストがあった。
自分の寝ぼけ顔のイラストを見て、眠そうな声で、眠り女装王子ター・リアが呟く。
「ボクも参加するの? まっいっか……眠っている間に、抱いて愛してもらえれば」
シンディ・レラは、足が痛くなってきたので、ガラスのハイヒールから銀リスの毛皮靴に履き替えながら、ター・リアに質問した。
「ター・リア、まるで男との経験があるような言い方じゃないか」
「んーっ、あるよ抱かれたり、眠りながら男を抱いたコトあるよ……眠っている時のボクのお尻って結構、魅力的だから」
シンディ・レラと白雪王子が同時に驚く。
「「あるのか⁉ いつも寝てばかりいるくせに!」」
◆◆◆◆◆◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます