第2話・異世界国からの侵攻迫る
円卓に集まった童話国の者たちに、西方の美形魔法使いマー・リンが椅子から立ち上がって言った。
「由々しき事態が発生しつつある……この童話国に異世界国からの、侵攻の兆候が見られる」
「異世界国?」
「西方童話国と似通っだ世界だ、ドラゴンやオーガやゴブリンがいて魔王という者が統治している」
マー・リンの話しを聞いたアラ・ジンが、取り出したランプを撫でながら言った。
「魔王なら、ここにもいるぜ……出てこいランプの精魔王ジン」
アラ・ジンが魔法のランプを高速で擦ると、煙の中から美形の青い男が現れた。
「お呼びでござきますか、ご主人さまが」
「特に用はない、おまえの姿を、みんなに見せたかっただけだから……ランプの中にもどれ」
「左様でございますか……特に用がないのに呼び出さないでください。これから入浴するところでしたから」
ランプの精魔王が煙となってランプの中にもどると、数分待ってアラ・ジンがランプを擦る。
今度は泡だらけのバスタブの中で、全裸のジンが現れた。
ジンが怒鳴る。
「そんなに、男の裸が見たいんですか! あなたたちは!」
集まっていた者たちは、示し合わせたように無言で一斉にうなづく。
ジンがランプの中にもどると、咳払いをしてからマー・リンが話しを続けた。
「異世界国が侵攻を開始するのは、五日後……童話国の各地で一斉に侵攻が開始されると、わたしのタロット占いに出た」
革のクロスベルトを上半身の裸身に装着して、スタッズが付いた肩当てを装着して、革のライダーパンツを穿いたモモ太郎が言った。
「マー・リンの占いは的中するからな……で、オレたちは侵攻がはじまるまでに、どんな準備をすればいい?」
「各地域の者たちに、先に伝えておくのだ、異世界からの侵攻が起こることを」
「戦う準備をするのか?」
「いや、敵と言えども殺傷はいかん。憎しみや殺し合いからは何も生まれない」
「じゃあどうするんだ」
「〝愛し合うんだ、敵味方関係なく暁の大地で〟争いは最小限の防衛だけでいい」
モモ太郎が楽しそうに手の平に拳を打ちつける。
「おもしれぇ! 魔王とやらを抱いてやる、オレの愛で包んでやる」
温羅が苦笑しながら言った。
「モモさんは、博愛主義ですからね……本当ならボクだけを抱いていてもらいたいんですけれど……それはムリみたいですね」
中華童話国の美男子ソン・ゴ・クウが浮かぶ筋斗雲の上で
「でも、以前物知りなお師匠の坊主から聞いた話しだと、異世界にはチートという。卑怯な
マー・リンが言った。
「その点は考えてあります、童話国全体に特殊な結界を張ってチートな力を無効にします……チートな力が使えなければ、異世界の者たちも諦めて抱かれて、童話国からの愛を受けいれるでしょう」
女顔をしたショートパンツのドロ・シーが、指先に小さな竜巻を作りながら言った。
「異世界国の化け物たちはどうするんだ、いくらなんでもスケルトンとかを愛するなんて、オレにはできないぜ」
ドロ・シーの隣に座るイヌ耳少年の『トト』が、空中に黄色いレンガを積み重ねて遊んでいる。
トトは異能力で、どんな場所にも黄色いレンガの道を作り出すコトができる。
ドロ・シーの疑問に、酒仙の女装仙人、藍菜和がヒョウタンに入れた酒を呑みながら言った。
「その問題は、あたしの仙術で解決するわ……化け物やドラゴンを、いい男に変・え・る……ういっ、少し飲みすぎたわ……酔拳の演武をお見せするわ」
そう言うと、藍菜和は、酔拳の動きを披露した。
モモ太郎が拳を上げて言った。
「よーし、作戦は決まった……各自の地域にもどって、愛の準備を進めろ。これが童話国の愛の戦いだ」
◇◇◇◇◇◇
翌日──モモ太郎と温羅はカグヤの竹林にいた。
「カグヤさんって、この竹林で竹の中から裸の成人姿で誕生したんですよね……モモさんみたいに」
モモ太郎も、桃を内側から押し割って裸の成人姿で誕生した。
竹林を歩きながらモモ太郎が言った。
「カグヤはこの竹林の竹から生まれた、ここがカグヤの故郷だ……だから、カグヤは自分の故郷を守るコトしか考えていない」
歩いているモモ太郎の足が、張られたローブに触れる。
次の瞬間、三日月型をした刃物が数枚、竹林の奥から飛んできてモモ太郎と温羅を襲う。
モモ太郎は鋼の肉体で、飛んで来た、三日月手裏剣を弾き返し。
温羅は金棒を振り回して、三日月刃を防いだ。
地面に刺さった三日月刃を見て、モモ太郎が竹林に向って言った。
「ずいぶんと、手荒いい歓迎だな……オレたちが来たコトは、そっちから見えていてわかっているんだろう、出てこいよ竹林の
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