そりゃあ負けられませんわね。
「ジャガース1番は平です。現在打率3割1分2厘。ホームラン5本を放っています。初球、インローいっぱいに決まりました、127キロのストレート」
「2巡目に入りますし、平、吉岡、グッドウィン。この3人全員が打率3割を越えている上位打線ですからね」
「そうですよね。今年のジャガースはとにかくこの3人が常に塁上を賑わせています。4番小山は48打点は2位に10打点以上の差をつけています。そして打点2位というのが5番の壱垣ですから。
チーム打率、チーム得点数トップの攻撃力を誇る西日本リーグ2位のジャガースがビクトリーズ交流戦優勝へ最後の砦です。この変化球は低め外れてフルカウント」
コースの際、際のところにツーシームやらカットボールやらカーブやらフォークやらを投げ分けながらも、しっかり見るところは見極められた。
サインを出した緑川君はすっと内に寄る。ショー君の投げたボールはそのコースにいったが、ちょっと抜け球。
平君は高いと判断して、バットを止めながら1塁側に体を逃がした。
そのインハイの高めからすっと落ちるボール。フォークボール。緑川君のミットは構えより上に動いて、平君のベルトのちょい高いところだった。
「ストライク!バッターアウト!!」
いつもよりほんのちょっとだけタメが出来てからのコール。フォアボールだと1塁に歩きかけた平君は、いやいやいや!と抗議にいったが、球審はマスクを外しながら、ギリギリ入っているよと、聞く耳持たず。
2番も足の速い好打者。右打席に入ると、ホームベースからかなり離れた位置でバットを構える個性派。
それに対して緑川君は外のカットボールで勝負。しっかり踏み込まれ、腕が伸びたところで当たったボールはライト線に上がった。
「打って右方向!!……ももしろだー!捕球しています、ナイスプレー!!」
外からさらに曲がるカッターですから、ややポジションをライン際に変えていたみたい。
まずい!ファウルになれ!という打球に一直線で突っ込んでいくと、そのまま飛び付いた。
長い茶色のグラブの先にしっかりと白球が収まっており、ビクトリーズファンからは大拍手。
続くグッドウィンの打球はセカンド右への痛烈な当たり。バウンドを合わせる余裕などないくらいの打球速度だった。
それを足から滑り込みつつ、左腕を引くようにしながら、ボールを叩き落とした祭ちゃん。目の前に落ちたボールを冷静に拾い上げて1塁にポイッと投げてアウトにした。
4回も1番からの打順を3人斬り。
続く5回は同期入団である4番小山との対決となった。
ショー君が育成の6巡目指名なら、相対するジャガースの4番は3球団競合の1位だ。
小山の方が年齢は4つ上であるが1軍に定着したのはショー君の方が早かった。
それでも、先日通算1000打点を記録し、今年も2度目の打点王と22年ぶりのリーグ優勝に向けて邁進するチームの4番ですから、見ごたえのある勝負になりそうだ。
ビシュッ!!
フッ……。
「ストライーク!!」
初球、90キロにも満たないスローカーブ。バッターの小山は虚を突かれたようにタイミングを崩し、バットが出てくることはなかった。
2球目。
ビシュッ!!
フッ……ググッ!
次もスローカーブ。さっきよりもさらに大きな弧を描いたボールに、小山もバットを出す。
力強いスイングが地面にバウンドしそうなくらいの低さまで曲がったボールを捉える。
思い切り引っ張られた打球。上空に上がり、俺も追いかけていったが、あっという間にスタンドへ。
僅かにポールの左であった。
なんとも言えないどよめきは、特大ファウルに対して、舐めてすらいるような態度の連続スローカーブか。
しかしそれは同じスローカーブではない。初球は手を出せないだろうとど真ん中に投げ、次は間違いなくスイングしてくることを見込んで曲がり幅を大きくして、ボールゾーンの低めに投げ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます