わりかし元気で良かったですわね。

「キョーへー!」


「シバスケ!」



「おおー、ふたりとも~!」



京都遠征から帰り、カルプスとの3連戦も初戦の先発となった勝星君やキョーへー離脱で出番が回ってきたブライアンやロマーノの活躍もあり、勝ち越し。


2度目の交流戦優勝が十分に見えてきたところで、彼の手術が無事終わったという話を聞いたところだったので桃ちゃんとお見舞いに来たわけである。


とはいえ、ベッドで横になり、ガッチガチに固めてある、吊るされた右足はとても痛々しい。



1塁コーチおじさんの予感の通り、彼のアキレス腱は断裂してしまっていた。


全治は8ヶ月から10ヶ月。競技復帰は早くても丸1年。目覚めた俺の面倒も見てくれていた先生の診断であった。


「シバスケ、メロン買って来たから食べてな!」


桃ちゃんが箱入り娘のメロン様を取り出すと、俺もガサッとパンパンになったコンビニ袋を取り出した。



「俺もメロン味のグミを買ってきたから食べてな!」



「グミってなんすか、グミって!」



「いやでも、桃ちゃんのメロン1玉よりも値段高いからね。グミコーナーのありったけ持って来たんだから、イチゴとか梅味とかもあるし!」



「ギャハハハ!なんなんすか、それ~!」



昼過ぎ。どうやら奥様は今日のお世話をやって、帰っていったばかりのようで、男3人で賑やかに話し込んだのだった。




気付けば交流戦も最終カード。


ビクトリーズは途中躓くこともあったりしたが、パープルスのカード3連勝を皮切りに、カルプス、ハードバンクスを連続で撃破。


トントン拍子に順位を上げ、ついに10勝5敗の首位タイで並ぶジャガースとの直接対決となった。


この最終カードを勝ち越した方が交流戦優勝となるであろう1戦。


初戦先発のショー君にしてみれば、因縁めいた古巣との初対決である。



試合開始まで間もなく。


ベンチ裏でシャツを取り替えようとするところで、プルペンでの最終調整を終えたショー君があらわる。



「どうかね、お兄様。おピンクバットの調子の方は?」


「今からマウンドに上がる人間が普通はそうやって声を掛けられる側なんですけどね」


「アハハハ!確かに!」



こんなピッチャーに出会うのは初めてである。


普通これから先発マウンドに上がる野球選手は、俺に触れるなモードに入って極限まで集中力を高めているか、緊張でガチガチになっている2パターンなのに。



「ショー!ショー!キャッチボールは!?」



などと、タッパのある今日はベンチスタートのノッチが彼を探して辺りを彷徨っている状況になっている。



「ふみません!……パリパリ。いまいきまふ!」



そしてその彼はケータリングルームから、ボイルしたてのソーセージをポリポリと鳴らしながら現れるのである。





そしてソーセージをスポドリで流し込み、少しまだモグモグしながらグラウンドに出てノッチとキャッチボールを始める。



3球程投げたところで、おケツのポッケから板ガムを1枚取り出し、またモグモグ。守備に就く味方の選手達が紹介され、最後に自分の名前が呼ばれる頃には、そのガムを早くもごっくんしている。



そんな義弟である。




「さあ、ビクトリーズファンの皆様、お待たせ致しました!!フレンズtoイカルガ自動車。東西交流戦カード6。ゲーム1。北関東ビクトリーズ対大阪ジャガースの試合が間もなく行われます。


解説には初代ビクトリーズ1軍監督の萩山さんです。よろしくお願いします」


「よろしくお願いしまーす!居眠りしないようにがんばります!」


「実況は野木、ベンチリポートは石橋でお送り致します。今日は早朝にも、シャーロットウイングスの試合を私達で担当しまして、少し仮眠を取ってから、ビクトリーズスタジアムの実況席にこのコンビでやって参りました」


「ですから、私達はね、ダブルヘッダーという形ですからね。しかし、千林のいいピッチングをお伝え出来ましたから良かったです」


「そうですね。去年までビクトリーズに在籍した千林が5勝目を挙げた試合というのが早朝。夕方6時からは、今年ビクトリーズにやってきたピッチャーの先発登板です。


萩山さんから勝星に期待するのはどの辺りでしょうか」

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