大チャンスですわ。
後20センチ、30センチでまたホームランという打球でしたから、ベンチは落胆と歓喜が同時に訪れるという幸せなやつ。
しかし、赤ちゃんがセカンドフライ。ノッチが前進守備のショート正面のゴロに倒れて2アウトになってしまった。
そして、ナミッキーがここはフォアボールを選ぶ。
2アウト1、3塁となって俺が打席に入る。ナミッキーはグリーンライトを許されている選手ですので、いつでも盗塁出来ますから、今シーズンもここまで11個の盗塁を決めている。
とはいえ、2アウトですし、わたくしは自分のバッティングをやっていくだけの中で、1ー1からの3球目にナミッキーが走った。
キャッチャーが2塁に投げる。それが高く浮く。若干ジャンプしながら体を真正面にしてやっとボールを掴むショート。
これは決まった。
柴ちゃんはスタートを切っている。ショートからボールが返るが、今度は豪快に頭から滑り込み、タッチを許さず。
見事生還し、ガッツポーズ。俺と回転しながらのハイタッチを決めると、真っ白な石灰の粉が辺りに舞う。
さらにタイムリーでもう1点という腹づもりであったが、当たりが良すぎたセンターライナーで3アウトチェンジとなった。
2点リードとした6回裏。先発の道島君は1アウト2、3塁というピンチを迎えるが三振とファーストゴロに打ち取り、6回1失点、100球到達というところでマウンドを下りたのだった。
7回裏、ビクトリーズのマウンドのポニテちゃんの旦那様。酒屋の息子。
左のアンダースローという希少種である。
最速135キロというところだが、だいたい120キロ後半の浮き上がる真っ直ぐと90キロのスローカーブ、そしてシンカーという持ち球。
先頭は左。初球インハイのストレート、ボール球を振らせると2球目は真ん中高めでファウルを打たせ、3球勝負。アウトローのスローカーブで泳がせるとサードへのファウルフライで1アウト。
2人目にも初球はインコースのストレート。タイミングを合わされスイングされたがやや真っスラ気味なボールで詰まらせ、柴ちゃんがゆっくりと前進しながら掴むセンターフライ。
3人目にはカーブで見逃し、2球目のストレートはど真ん中にいってしまったが振り遅れてファウル。3球目はアウトローのシンカー。ついついバットの先で追いかけてしまう中途半端なスイングを引き出し空振り三振。
見事なピッチングを今日も披露し、8試合連続無失点で防御率は1点台に突入してきた。
8回は新加入の豪腕、カラセオ。ゴリゴリタトゥーの入ったドミニカン右腕は1アウトから連続フォアボールを出すも、お次は連続三振で事なきを得て、こちらも0で抑えた。
「9回表、ビクトリーズの攻撃は、7番センター柴崎」
「「ドワアアァァァーッ!!」」
普段はあんまりそんなことないのに、アナウンスされた瞬間に、ビクトリーズファンからものすごい歓声である。
今日の3得点は全て彼だし、何より、ホームラン、ツーベース、スリーベースと来ているわけですから……。
「「シングル・シングル、シバサキ!」」
「「シングル・シングル、シバサキ!」」
レフトスタンドの応援団からは、シングルヒットを懇願する大声援が飛んでいる。
それ故に。インコースのボールを強く引っ張り、ライン際へ長打コースになりそうなファウルを打つと……。
「「おお~ッ………!!」」
という何故だかビクトリーズファンから、ファウルになって安堵するような声が上がったりしていた。
いくら3打席で長打3本を打っていたとしても、シングルとはいえ4本目を打つというのはなかなか難しい。気付けばもう1球ファウルを打って追い込まれ、決め球の変化球になんとか食らいつくような展開になっていた。
2ー2というカウントになり、変化球を3球ファウルにしましたから、一転してインコースに構えたパープルスのキャッチャー。
それがインハイの際どいところに飛び、ガキッ!っと柴ちゃんは詰まらされた。
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