ツケツケ、テンツユ~!というのもありますわよ。

「そのアチェンホの打球だ!!左中間の真ん中!柴崎、新井が追っていきますが諦めました!!ホームラン!!左中間スタンドの中段までいきました!今シーズンの9本目は通算249号!パープルスに先制点をもたらしました!」



柴ちゃんと一瞬だけ目を合わせながらがっかりしつつ守備位置に戻ると……。


会心のホームランを放った天かす野郎が大はしゃぎ。



ベンチに並ぶチームメイト達とハイタッチタイムを終えると、横のテレビカメラに向かって………。



「アチアチ、アチェンホ~!!」


と、大絶叫。



それ、俺があげたやつやんけ!という怒りに任せたダイビング。次打者のレフト線の打球を間一髪で好捕してやった。




4回ウラ、先頭バッターは4番タナシー。第1打席の大飛球がありましたから、初球はアウトローの変化球。


タナシーはそれを待ってましたと言わんばかりの流し打ち。無駄な力を抜いたコンパクトなスインながら、鋭い打球がジャンプした芳川君の頭上。



ライト線に打球が落ちた。



あっという間にフェンスに達する打球。ライトは桃ちゃん。


彼の見せ場だ。


フェンスに跳ね返った打球をナイスポジショニングでグラブに収めると2塁へ。凄まじい勢いと弾道。


それを見たタナシーは1、2塁間の真ん中から慌てて引き返した。



ズバアアァンッ!!



ノーバウンドの送球。重たい音を立てながら、2塁ベースに入った並木君のグラブに収まった。



ふーっ、あぶねー!!といった感じでコーチとグータッチを交わすタナシー。続くアチェンホも低めのボールに対し、力みのないスイングでセンター前に運んだのだった。



「バッターは6番サード大木」



コツン。



送りバント。



3塁線に弱く転がったボールをノッチが反応よくダッシュし、雑に素手で掴み、3塁へランニングスロー。



少し前にプレイしたFPSゲームで、敵チームが放ってきた手榴弾を素早い反応で拾って投げ返し、キルを記録した姿を彷彿とさせた。



巨体を揺らしながら滑り込むタナシー。それより早く赤ちゃんのグラブにボールが届きアウト。小さいステップでこちらも強肩、1塁にボールを送ったがこちらはセーフになった。



「パープルス、送りバント失敗!!いやー、コースとしましては3塁線に上手く転がしたように見えましたが……」


「キャッチャーの北野がいいプレーをしましたねえ。ランナーが棚橋だったとはいえ、素手で拾って、そのまま投げましたからね。アウトにするにはこれしかありませんでした」



思田君がキャッチャーマスクを拾い、簡単に土を払うとノッチに手渡した。





カンッ!!



「ボテボテの打球になった、サードの前!赤月がチャージしてまたベアハンド!!ボールが送られますが1塁は………セーフだ!!内野安打になりました!!送りバント失敗の後はサードへの内野安打!満塁になります!」



追い込んだ後に、低めの変化球。打ち損じさせたが、サード前にヨワヨワ打球。バッターランナーの足が速く内野安打。



バントを封じた直後でしたから、2アウトに出来ればというところでしぶとく繋がれてしまった。


奥田ピッチングコーチが走ってマウンドに向かう。ピヨピヨ状態ではないんですけどね。ちょっといやんな打球になってしまったので、焦ってガツンと手痛い長打を食らいたくありませんから。



ですから、8番バッターに対しても低め、低めという配球でしたから、3球目の変化球が逆球になり、ノッチがそれを弾いた。



ミットの変なところに当たって、ポーンと弾んだボールを見て、3塁ランナーのアチェンホがすぐさま突っ込んでいった。



俺はレフトからその姿を見て思ったね。


天ぷらを頂く時に、焦ってはいけませぬよと。



「ワンバウンド、キャッチャー弾いた!アチェンホ突っ込む!……思田が本塁カバー、ボールが戻ってきました!アウトだ!本塁アウト!!得点ならず!!」





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