そら、自分の成績よりチームの前進よ。
つまりは指2本短くバットを握って水戸納豆モードですよ。得意の。
昨日、神戸土産の美味い肉と一緒に2パック食ってやりましたから。
尿酸値が上がるリスクを抱えながらネバネバを食らってやりましたんでね、追い込まれてからのしつこさが今日は違いますよ。
練り辛子と刻んだネギも入れましたし。みのりんに、テーブルに糸引いてる!ああっ!?などと叱られながら。
そんなわけで4球ファウルで粘り、2つのボール球を見極めて9球目。インコースいっぱいのストレートにどん詰まり。
打球は1塁線に弱々しく転がった。これ以上ない具合の弱々しさ。
「打ってフェアグラウンドに転がった!ファーストの前、ピッチャーがマウンドを降りまして掴みました。……走り出そうとした新井と邂逅。突き出されたお尻に添田がタッチしましてアウト。場内から少し笑い声も聞こえました。並木はその間に2塁へ進んでいます」
「新井としてなんとかファウルにしたかったところですけど。まあ、ランナーが進みましたし、2番バッターとしての役割としては素晴らしいですよね。相手チームからすると、本当に嫌ですよ」
「新井の素晴らしいところというのは、まさにこういうところですよね。ヒットにならなくてもチームを前進させる為に、献身的なプレーが出来るという」
「そうですね。これをメジャー帰りのベテランがやっているんですから。あの舞台で210本以上のヒットを打って、見事に打率4割を達成。若手中心、経験のなかったチームを世界一に届かせたバッターが、日本に戻って来てもこれだけ泥臭いバッティングをするんですから。全ての野球選手に見習って欲しいですよね」
「その新井の頑張りもありまして、ランナーが2塁に進んでバッターは今日3番に入っています、ロマノです。フォークボール、ここは空振りでカウント2ー2になりました」
「ストレートに力がありますから、タイミングを早めに取りたいですよね。添田はどんどん高めの真っ直ぐで勝負するケースもありますから。………あっ、いいですね。今のように高めはカットしていきたいですよ」
「真ん中高め、152キロのストレートでした。速いボールを見せて6球目はどうしますか。……変化球、バットに当てて高く弾んだ1、2塁間だ!ファーストが行く!
ピッチャーの添田がベースカバー!ロマノも足は速いぞ!競争になる!……セーフだ!セーフになりました!!」
ロマーノが力強く1塁を駆け抜けた瞬間、セーフを確信した我々は、わっしょーい!と盛り上がる。
本人の中では打てるボールだったのだろうか。ロマーノは首を傾げるようにしながら1塁キャンバスに戻り、フットガードに手を伸ばしたのだった。
初回、1アウト1、3塁。いきなり4番のお仕事チャンス。
去年より3キロ増量して、いよいよ100キロという大台に乗っけてきた芳川君が右打席に入る。
ソエソエから先制出来るチャンスですから、スコーンとクリーンヒットとはならないまでも、キチッとしたバッティングで先取点をもたらして欲しいところである。
やはり怖いのはストレートに差し込まれての三振や内野フライというところですから、真ん中低めから外に曲がるスライダーに思わずバットが出てしまう。
そのボールを打つつもりがないのに、打たされてしまうストレートの意識をすでにこの巨体は植え付けられていた。
ドラゴンスバッテリーからすれば、理想的な打たせ方になった。外の変化球を引っかけさせてサードゴロ。
少し計算外だったのは、その打球が三遊間の真ん中に飛んでしまったこと。サードがダイビングしないと届かない場所に飛んでしまったことだ。
強くない打球が小さくワンバン、ツーバンしたところで、横っ飛びの青竹グラブが追い付く。バックホームは無理。両膝を着いたまま2塁に投げる。ロマーノが勢いよく滑り込むもアウト。
セカンドからボールが1塁へ。色黒の助っ人マンが股割りのように、いっぱいにストレッチしながら腕を伸ばし、それと同時に100キログラムの体が駆け抜けた。
「セーフ、セーフ!!」
審判おじさんの腕が広がる。判定を間の当たりにして、踏ん張っていた助っ人マンががっくりしたように横にゴロンと転がった。
ホームインした並木君が拍手をしながらベンチに戻ってきた。
「ナイバッチ、キャプテン!」
「新井さんもナイス納豆っす!」
「ゲッツー崩れという形ですが、ビクトリーズが1点を添田からしぶとくもぎ取りました!」
「確かに先制点には繋がりましたが、もう少し4番バッターらしいバッティングが欲しかったですよね」
「と、言いますと?」
「大原監督の表情を見ても、満足している顔ではないですよね。まあまあまあ、初回だしこんなもんかという風に見えるんですよ。それは、4番がチャンスの打席で初球のアウトローのスライダーを引っかけてゲッツー崩れですから。ちゃんと考えて打席に入ってるのか?という話になりますよね」
「つまりそれはもっとヒットなり、犠牲フライなりを打てるんじゃないか?ということでしょうか」
「まあ、そういうことですよね。もちろん結果としては悪くないですよ。好投手から先に1点取れましたし、しっかり1塁まで全力で走りきってセーフにしましたから、それは立派なんですけど、4番ですから。
たまたまいいところに飛んでゲッツーは免れましたではいけないと思うんですよ」
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