そら、完璧にこなせるのはレフトだけではありませんわ。
「そうですね。ちょっと打球の弾み方が不自然には見えましたけど。……あー、フェンスの向こう側で跳ねてから新井のグラブに当たっていますね」
「ええ。フェンスの向こう側。お客さんが落下しないようにポール際に設けられた黒い柵のフチに当たった後で、新井のグラブに当たり、グラウンドに落ちています。ノーバウンドでフェンスの黄色いラバーを超えていますので……。
チェックを終えた審判団が戻って参りまして、ホームランの宣告!2塁に止まっていた友寺はさらに2つの安全進塁権。ホームタッチアウトとなった石上も、もちろんセーフ。アイアンズに勝ち越しの2点が入りました。友寺は今シーズン第3号の2ランホームランとなります!」
運命を司る天秤が大きく傾いた気がした。ここまで一進一退で進んでいたゲーム。かたや2ランホームランと思われたものが無得点に終わり、かたやタッチアウトと思われたものが2ランホームランですから。
ビクトリーズはアイアンズのリリーバーから得点することは出来ずに敗戦。翌日の試合も2点差で落としてしまった。
3戦目は4番芳川君の初回2ランの得点を勝星君が8安打されながらも8回無失点で粘りきり、最後はキッシーが締めてなんとか3タテは阻止したカードとなった。
交流戦2カード目は、愛知ドラゴンスのとのホームゲーム。初戦を5ー4というスコアで勝利をものにしたビクトリーズ。交流戦最初の週末ということもあり、スタジアムは満員御礼となっていた。
愛知ドラゴンスの先発はエース添田。デビューから10年連続2桁勝利を挙げている日本代表右腕の攻略が何よりのポイントであった。
「それではビクトリーズのスターティングメンバーを見ていきましょう。
1番ショート並木。今日はなんと2番ファーストに新井が入っています。そして3番レフト露摩野。
4番DHで芳川。5番サード赤月。6番ライト桃白
7番キャッチャー緑川、8番センター柴崎、9番セカンドルーキーの浅羽は今シーズン初スタメンを飾りました」
「解説は高田キョウゴさんです。ポイントはどの辺りでしょうか」
「やはり3番の祭がスタメンを外れたところですよね。今日は休養日と大原さんはおっしゃっていましたから。後は浅羽選手も入って、右腕添田に対して下位打線にズラッと左バッターを並べましたので、この辺りがどれだけ添田を苦しませられるか注目ですよ」
「そして、たくさんのファンの拍手を受けまして、先発のマウンドに碧山が上がりました。今シーズンは、ここまで先発7試合で2勝3敗、防御率3、46というスタッツ。中8日でのマウンドということになりました」
いつものように出勤前に済ませてきた洗車のおかげで、ピッカピカになった真っ赤の外車で現れた彼。
俺のイカルガを威嚇するようにちょうど向かい側に停めたその車から現れた彼の表情を気合いに満ちていた。
その直後に、鳥のフンがフロントガラスにボトリと落ちてきたことを知らせなかったのは、初回すんなりと3者凡退で立ち上がったのを見るに大いなるファインプレーと言えるでしょう。
そんでナミッキーである。
ビシュッ!
ギュルルル!!
スカァン!!
「強い打球!三遊間、あっという間に抜けていきました!低めのストレートを初球攻撃!レフト前ヒットでキャプテン並木が出塁です!」
「思いきりよくいきましたね。素晴らしいです」
真ん中低めの152キロをいきなりのクリーンヒット。これは俺が上手く繋いだらいきなりのビッグチャンスも有り得ますぞ。
ピッチャーは何度か対戦しているソエソエですよ。彼が初めて代表に選ばれた時は緊張でガッチガチになっていましてねえ。
「ストーライ!」
わざとベンチに帽子を忘れて取りに戻るというボケを繰り出して、その緊張を解きほぐしてあげたりしましたわねえ。
「ストライー!!」
そんな思い出にすら浸らせてくれないストライク先行ぶりですから、俺もゆっくりとしてあげないですよ。
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