実況！４割打者の新井さん１１

何回目やねん、こういうの。

カキィ！！

キタ！ネンイチのテゴタエ！！

「ランナースタートで新井が打つ！！左中間にいい角度で上がっている！！友寺が追う、友寺が追う！まだ打球は伸びている！フェンス際、友寺がジャンプ！！……どうだ！？打球は！？入ったか、入っ………入っています！

ホームランです！なんと、この場面で新井時人にホームランが飛び出しました！！」

あ、どーも。元メジャーリーガーです。ワールドチャンピオンです。日本代表です。ワールドシリーズでも、土壇場でホームラン打ってます。

そんなクールな表情でダイヤモンドを軽やかに１周。キスした右手の人差し指を天に掲げながら、俺は大喜びするチームメイトの祝福する列へと向かっていったのだ。

「いやー、１打席目、２打席目もレフト方向へと引っ張っていった打球でしたが、今度は見事オーバーフェンス……ん？ちょっと待って下さい。今、１塁側、アイアンズベンチから金堂監督が出てきまして、リクエストですか」

「今の打球が本当にオーバーフェンスしたのかどうかというところでしょうね。他に何かおかしなところはありませんでしたので……」

ベンチにドカッと座り………。

「誰かピンクのシャンパン持って来て！祝杯だ！」

などと軽口を叩いてしょーもない笑いを取っていましたら、なんだか変な空気になっていて、次のプレーが始まる雰囲気もなかった。

いつの間にかいなくなっていた審判おじさんズ達が戻って来て、その中の代表おじさんが大きく両手を広げてセーフのジェスチャー。

そして審判おじさんは、３塁と２塁を指差しながら、自分のポジションに戻って行こうとしたのだ。

アイアンズファンから大歓声が上がり、ビクトリーズファンからはがっかりしたようなため息と何故だか笑い声も。

え！？嘘でしょ。入ってましたやん、きっと。そんな風に思いながらダラダラとしながらしゃーなしグラウンドに戻ろうとすると、３塁の審判おじさんががやって来て……。

「新井さん、２塁に！早く早く！」

そう急かしてきたので……。

「いやです！」

そう言いながら本当に嫌そうな顔でプイプイとしましたら、ちょうどよ。ちょうどテレビカメラとかいう物を向けられていて、バックスクリーンにその様子が映し出されていた様子。

ですからスタジアム中がワッと沸きましたので、俺としては大満足。審判おじさんに背中を押されながら、２塁に向かっていったそうな。

ちなみに俺の打球はフェンスの上の方に当たり、それが友寺君のどっかに当たってからスタンドに入っていったようだった。

エンタイトルツーベース。まあ、そん気はしてましたわよ。

カンッ！

速いボールを続けられて追い込まれた後、低めの変化球を祭ちゃんがなんとか打ち返す。

レフトの定位置付近に上がったフライ。ナミッキーが３塁ベースに戻り、友寺君が落下点に入る。

「打ちました、レフトへのフライ！風はセンターからホーム方向ですが、ほぼ定位置か！？友寺がやや前に出ながら掴む！ランナースタート！！

友寺から………ノーバウンドで返ってきました！ランナーが回り込む！！アウトだ！！友寺が刺しました！ビクトリーズ、勝ち越しならず！」

友寺君が放った乾坤一擲のバックホーム。ナミッキーのスタートが悪かったわけではないが、まさかノーバウンドで放ってくるとはという印象だった。

構えるキャッチャーの膝元にドンピシャ。体を逃がしながら右手を伸ばすナミッキーの肩にボールを掴んだミットが当たり、キャッチャーもゴロンとひっくり返る。

そのキャッチャーミットからボールがこぼれていないのを確認した球審が右足も振るようにしながらアウトのコール。

やりましたわ！と、ブルーのグラブを掲げるようにしながら、友寺君が大いに喜んでベンチへと戻っていく。

ウラの攻撃。１アウトランナー１塁で、打席には友寺君。

カキィ！！

「打ち返した！！友寺の打球はまた逆方向だ！レフトの新井がバックする、バックする！ジャンプ！！捕れない、捕れない！フェンス際、打球が弾んでいる！！

１塁ランナーは、２塁を蹴って、３塁も回って来るぞ！！ボールは中継の並木からバックホームだ！いいボールを返した！！タッチは…………アウトだ！！アウト！アウトですが。

………１塁側、また金堂監督が出て参りましてリクエストです！！今のホームでの……ではなく打球の方ですか。友寺の打球がフェンスを越えていたのではないかという物言いが入りました！リプレイが出ます！」